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子供のテレビ教育とは?大人ができることは「テレビを信じないようにさせる」

ありふれた情報の中で正しい情報を選択できる子供に育てたいなら。大人は、まともな科学者を見極め情報を得てから、テレビを信じないようにさせること。実際にコロナウィルスの一件で、どれだけ正しい情報を得られているのか?社会学者の宮台真司氏が解説する。

事実の共有がなくなった

人は成長の過程で、様々なメディアから、様々な情報を得ます。これを無自覚に受け入れてしまえば、意見が一つの方向に偏る大人や、誰かが大きな声で騒いだらそれにつられてしまう大人になります。現にそうなっています。

具体的には何があったのでしょう。アメリカでは1980年代後半にケーブルテレビを通じたマルチチャンネル化が生じ、90年代のインターネット普及でそれが加速しました。一方で、スポンサーシップの総量は一定ですから、チャンネル間でお金を奪い合う競争が激化していきます。

昔はABC、NBC、CBSの三大ネットワークはイデオロギーが違っても、通信社からもらったネタを共有して中庸でした。それが、競争激化で特定クラスターに狙いを定めて中庸からは外れた極端なニュースをピンポイントで提供するチャンネルが出てきました。

CNNのようなリベラルに凝り固まったチャンネルや、ウヨブタ(右翼)に傾倒したFOXのようなチャンネルが生まれて、事実報道の共有さえなくなりました。かつて「対立は、生きる世界の統合の証」でしたが、「対立は、生きる世界の分断の証」になります。ベトナム戦争(北爆1965年〜和平協定1975年)では、多くのアメリカ人家庭で父親と子供の意見が対立しました。



ベトナム戦争の事実情報が、中庸なメディアを通じて父子に共有されていたからこそ生まれた対立です。同じ事実に関心を持った上での対立です。それが、先に話したようにマルチチャンネル化が加速化した挙句、今は事実情報の共有すらありません

日頃に触れるメディア次第で、世界で起こっていることの事実認識のレベルで、分断が進んで、複数の事実世界が並存するパラレルワールドみたいになります。それが、現在のポストトゥルース化(感情的アピールが重視されて客観的事実がないがしろにされる傾向)をもたらしました。

競争が激しくなる中、メディアの経営陣は、事実であるか否かより、他社に出し抜かれないことを、専ら配慮するようになりました。視聴者を不安にし、不安ならこのチャンネルを見ろ、と「感情の釣り針」を仕掛けることで、歩留まりを上げるようになります。不必要に不安を煽り、敵を名指し、テレビに釘付けにさせる手法が、専らになります。そして視聴者の大半がそれにつられるわけです。

昔とは代わった科学者の役割

現在、新型コロナウイルスが世間を騒がせています。疫学的には、重症になるのは持病がある高齢者が大半で、発症しない人が多く、潜伏期間も長く、マーカーテストでも感染者の4割が反応しません。無症状者がウイルスをばらまいているところがポイントです。

ところが、日本政府はクルーズ船に乗客を監禁する行動に出た上、マーカーテストで陰性になった無症状者を先日解放してしまった。諸外国は、陰性の無症状者であっても上陸後14日間隔離して経過観察をしていますが、日本は即日解放。世界中から批判の的です。

飛沫感染空気感染の中間エアロゾル感染があり、当初はその可能性は考えられていませんでしたが、政府がグリーンゾーンとレッドゾーンを分けずに放置したクルーズ船でそれが起こった可能性があり、各国から「ウイルス増幅装置」と笑い者にされています。

日本ではマスクの買い占めが起こって品切れ店が続出です。でもマスクには、感染者の飛沫放散を防ぐ力はあっても、健常者にはウィルスを遮断してくれず、粘膜保湿の機能があるだけ。だから「外出しない」「街を歩かない」ことが一番大切になります。

ウヨブタが、日本のクズ政権を擁護して中国人を攻撃していたところが、クルーズ船の稚拙な対策で、各国が日本の安倍政権とケツナメ官僚機構を「クズ認定」し始めています。各国当局が日本への渡航自粛要請をし、JALが韓国・台湾便などを減便しています。



1954年の映画『ゴジラ』の「先生は科学者として恥ずかしくないんですか」というセリフが思い出されます。科学者は白衣を着た権威の象徴でした。『ウルトラQ』シリーズの一ノ谷博士も、一般人がパニックになりがちなのを冷静に掣肘していましたよね。

今は頓馬な自称科学者が、不安を煽って視聴率を稼ぎたいテレビの思惑に沿って不安をあおります。科学者の役割が昔とは変わりました。僕は1960年代コンテンツを見て育ったので、当時の白衣の博士ならどんな反応をするのかな?と無意識に考えます。

だから誰かが騒ぎ始めると「ちょっと待て」と自動的になります。今やメディアの分断化と科学者のパンピー化が重なって不安増幅装置が止まらず。人々は無用な不安で騒ぎます。大人の役割は、まともな科学者を見極め、テレビを信じないようにさせることです。

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PROFILE

宮台真司 SHINJI MIYADAI

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など著作多数。


FQ JAPAN VOL.54より転載

 



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