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「家族を作れても中身はスカスカ。少子化対策をいくらやってもムダ」大人になってクズを脱するのは難しい。

幼少期に仲間と共通体験をしていなければ取り返しのつかないことになる。感情的劣化と神経症化を被った親が子を抱えれば終わりです。社会学者の宮台真司氏は、クズな大人を増やさない方法をそう指南する。

共同身体性を失い
個人主体化した大人

森で仲間と遊ぶ営みが与える体験(の相当物)がないと、共同身体性が消え、そのせいで共通感覚が消え、さらにそのせいで言語的共通前提が消えるので、人がクズに育ちます。クズとは、言葉の自動機械・法の奴隷・損得マシンのこと。日本の多くの大人たちが陥った状態です。ワークショップをした経験では、大人になってクズから脱するのは難しい。これらは全て、精神分析学者フロイトがいう神経症の症状、即ち、不安を埋め合わるための無意味な反復です。こうした親の不安は、子に感染するので、クズを再生産します。

不安の背景は、地域を頼ってきたのが、地域空洞化で家族(主婦)を頼り、家族空洞化で市場化&行政化を頼った挙句、今や市場化&行政化の将来がないと予感されるからです。親にできることは限られます。感情的劣化と神経症化を被った親が子を抱えれば終わりです。だから言外・法外・損得外を教える「ウンコのおじさん」に委ねる必要があります。

感情的劣化と神経症化を免れた親ならば、子と一緒に森に入り、言外・法外・損得外でシンクロする享楽を教えられます。要は「社会の外」に出ることの享楽を学ばせられます。この処方箋は一口で「社会から世界へ」です。社会とはコミュニケーション可能なものの全体。世界とはあらゆる全体。社会は規定可能性(言葉・法・損得)から成り立ちます。


性愛と社会性

社会に閉じ込められれば、規定可能性に拘束された「選択する個人主体」になります。「社会から世界へ」とは、「規定性から未規定性へ」「選択から感染へ」「不安から委ねへ」です。社会に閉じ込められているかどうかは、性愛を見れば分かります。感情的に劣化した不安な人は、コントロールに固執し、ダイヴによるフュージョンができず、性交が下手です。

震災後の性愛ワークショップを観察すると、AVなどで見たイメージを達成目標にしてコントロールに勤しむだけで、相手の心身への「なりきり」becomingができない人だらけ。性愛は「社会の中にある社会の外」です。そこでは「規定性から未規定性へ」「選択から感染へ」「不安から委ねへ」が全て。それができないと、性愛で相手を幸せにできません。昨今はそういう人だらけですが、そんな人と一緒にいても絆は作れません。だから家族を作れず、作れたように見えて中身はスカスカ。少子化対策をいくらやってもムダです。


「考えるな、感じろ」
激しい競技はうってつけ

共通感覚の基盤になる共同身体性を養うには、少年期にラグビーのような激しい球技や武術をするといい。相手の行動を観察してから動くのでは負けるという共通性があります。「考えるな、感じろ」と言いますが、相手に生じている感覚がダイレクトに自分の中にも生じる状態が必須です。相手が攻撃しようと「思った」瞬間それが自分に伝わる状態です。

言外・法外・損得外へと開かれる能力は幼少期に養う以外ないとされています。でも僕のゼミやワークショップではそうした「開かれ」が20歳代でも生じることがあります。そうした男女の共通性を探ると、激しい球技や武術の経験が見つかります。「言外・法外・損得外でのシンクロ」という言葉が何を意味するかを、経験の中に見出せるからでしょう。子供と一緒に森に入った大人が、子供以上に優れた身体性や感覚を示せれば、それに感染した子供がその大人をリスペクトするようになります。それが大きなヒントです。

僕のワークショップでは、小さい頃に言外・法外・損得外に開かれた感受性を獲得したのに、それを忘れてしまった大人に、感受性を回復させることが、目的の一つになります。

回復できた大人は「ウンコのおじさん」になればいい。回復させるべき「社会の外」に開かれた感覚を持たない大人は、子を抱えずに「ウンコのおじさん」に委ねてください。


PROFILE

宮台真司 SHINJI MIYADAI


1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など著作多数。


Text >> 大根田康介

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