時事・コラム

日本人がセックスレスになりやすい理由は? 1年で約140回のギリシャ夫婦との違い

なぜ日本人はセックスレスになりがちなのか? その深層には、現代人の働き方や伝統的な価値観など、諸問題が複雑に絡み合っているのかもしれない。アドラー心理学のプロである熊野英一氏が、セックスレスという事象を通して感じる違和感とは?(後編)

本シリーズでは、アドラー心理学にもとづいた「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナルであり、多くの企業で講演も行う熊野英一氏に、実際の夫婦の悩みを読み解いてもらった。熊野氏がひたすら優しく、柔らかく、時にユーモラスに対処法を提案する!

前回のセックスレスのお悩みでは、夫婦の対話の大切さが改めて浮き彫りになった。多くの夫婦が慢性的なコミュニケーション不足に陥っているが、その原因は夫婦間だけにあるのではない、と熊野氏は語る。期せずして、現代の日本の働き方や子育て事情への問題提起となった。

世界から見ても驚くほど
少ない日本人のセックス頻度

熊野氏:アドラー心理学とは少し離れますが、ちょっと見てもらいたいものがあって。「世界のセックス頻度と性生活満足度」のデータです。2005年度の調査なので、やや古いんですが。

●世界各国のセックス頻度と性生活満足度

出典:Durex社 “2005 global sex survey report”




編集部:あ、日本、すごく少ないですね!

熊野氏:日本だけダントツでしょ。頻度だけじゃなく、満足度も25%と低いし。このグラフみると、東欧グループが頻度も満足度も高い。アジアも南の方はまあまあ満足度が高い。で、なぜか東アジアは全体的に低いよね。

編集部:ホントだ。あ、中国は頻度がそこそこあるのに、満足度が低いという……。これもある意味大変ですね(笑)。それにしてもギリシャすごいですね!

熊野氏:ギリシャすごいでしょ。性のコミュニケーションというか、セックスを通して夫婦の関係をよくすることを大事にしているんだろうね。だってセックスってすごくわかりやすいコミュニケーションじゃないですか。それを大切にして、お互いに愛を感じあっていい状態でいるということは、とても理想的な夫婦の関係かな、と僕は思う。もちろんこの価値観を押し付けるつもりはないですけど、このグラフを見ると、どうしてもこの状況でいいとは思えないんです。

編集部:日本人は国民性として、性の問題に関して抵抗感が強い気がします。自分たちの親も、性に関する話は避けてましたよね。

熊野氏:うん、でも一方では、浮世絵の春画や、吉原といった性を楽しむような文化があって、それが芸術的なものになったりもする。現代でも、日本のセックス産業は独自の進化を遂げていて、ジャンルの細かさやマニアックさは、他の国では見られないことだよね。

パートナーとはセックスしないが、ほかのところで性欲を処理しているということ。この間も男友達何人かと話してたのが、性風俗とか性メディアが発達し過ぎているがゆえに、妻に「セックスしよう」って提案をしなくなっちゃうんじゃないかって。断られて、傷つくくらいなら、あえてリスクを侵さず、もうビデオでいいやって諦めてしまうんだと思います(苦笑)。

日本人のQOLとセックスレス
その切り離せない関連性とは?

編集部:あと、日本では子供が小さいうちは、寝室は親と一緒ですよね。わが家も、夫と私の間に挟まれて子供が一緒に寝てるんですが、あんまりそういう気分にならないというか……。

熊野氏:うん、そういう住環境とか、子供との接し方とかっていうのも日本がこうなっちゃう大きな理由ですよね。家族3人で川の字になって、子どもがパーティション代わりにされている(笑)。

それにお互い仕事が忙しくて疲れ切っちゃってて、夜そんなことする体力も気力もないよって思ってたり。若いうちは体力があり余ってるから、時間がなくてもプライオリティ高くできるけど、歳をとったらそうはいかない。「また今度」ってやっているうちに、気付いたら「もう3年やってないよね」ってことになっちゃう。



つまり、日本人の働き方って大丈夫なのか、さらに言うと、日本という国のQOL(Quality of Life)が果たして高いのだろうかっていう話にまでつながってくる。

僕は、QOLや人が幸せであるということにすごく興味があって、そういった意味でも、セックスのことって避けて通れない課題で、もっと深掘りして考える必要があるととらえています。

編集部:なるほど、前回の夫婦のコミュニケーション不足も、仕事が忙しい、勤務時間が長いということに絡んできますね。欧米諸国に比べて、日本人は夫婦で話をする時間が少なそうですよね。

熊野氏:そう、仕事以外にも、日本人は子育てのために多くの時間を割く傾向にあります。どういうことかというと、日本では、子供は親が世話するものだという価値観が、ほかの国に比べて圧倒的に強い。周囲からのプレッシャーもあって、子供をベビーシッターに預けて、夫婦でデートに行くなんてことはほとんどしないでしょ。

編集部:保育園も、仕事をするママだから子供を預けられるのであって、自分たちのリフレッシュのために預けるなんてもってのほか、という雰囲気を感じます。

知り合いの保育士が、以前はママが子供のお迎えの時に髪型が変わっていたら、「あのママは、仕事じゃないのに子供を預けて美容院に行くなんて!」って思っていたそうなんです。でも自分に子供が産まれたら、ようやくママの大変さが理解できて「ママも時間欲しいよね、どんどん行ってきて」って思えるようになったって。

熊野氏:すごく象徴的な話だよね。今の社会には、寛容さがなくなっている。子育て以外にも言えることだけど、相手の立場に立ってみてわかることって本当に多い。「共感」の大切さを改めて感じます。



罪悪感なく子供を預けられて、たまには夫婦の時間を楽しむ。それを批判するのではなく、支援する環境が整っている。そういう社会になってくれるといいよね!

僕は保育所の運営もしているので、この問題は真剣に取り組みたい。今後、夫婦でデートを楽しむためのパッケージなど、プライベートで利用できるプランも考えていきたいですね。

プロフィール

熊野英一(くまの・えいいち)

アドラー心理学にもとづく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。株式会社子育て支援代表取締役。1972年、フランス パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学し、MBA取得。製薬大手企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事する。2007年、株式会社子育て支援を創業。日本アドラー心理学会正会員。著書多数。最新刊は『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館)
※熊野氏が携わるベビーシッターサービスの詳細はコチラ



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