時事・コラム

「セックスレスの何がいけないの……!?」妻が夫に言い出せなかった悩みとは?

ここ十数年、セックスレスの夫婦が増加傾向にある日本。それに付随した夫婦トラブルがメディアでも取り上げられている。アドラー心理学のプロとして、多くの夫婦の悩みに寄り添ってきた熊野英一氏は、この問題についてどう考えているのか? ある女性の悩みを通して話を聞いた。(前編)



本シリーズでは、アドラー心理学にもとづいた「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナルであり、多くの企業で講演も行う熊野英一氏に、実際の夫婦の悩みを読み解いてもらった。熊野氏がひたすら優しく、柔らかく、時にユーモラスに対処法を提案する!

前回の記事はコチラ

一般社団法人・日本家族計画協会の2016年の調査によると、1ヶ月間にセックスをしていない、いわゆるセックスレスの夫婦が、47.2%にも上った。およそ半数の夫婦が夫婦の営みから遠ざかっているわけだが、その状態になんとなく違和感を覚えている人も少なくないようだ。今回、ある妻から寄せられたお悩みもその1つ。

<今回のお悩み>

「セックスレスの状況がなんとなく不安……。そのままでいいの?」

出産後、セックスレスになっている。子供が産まれた4年前から一度もないのだが、それに関して特に不都合は感じておらず、淡々と毎日生活している。

が、世の中が「セックスレスはヤバい!」みたいな風潮で、それがさすがに4年も続いている状況に、なんとなく焦りを感じ始めている。

夫は私に対して大きな不満はない様子で、夫婦仲も悪くない。夫に求められなくても「まあ、いいか」と思いつつ、その反面、女として見られていない状態なのかとも思い、この頃は複雑な心境に。夫に突っ込んで聞く勇気もなく、モヤッとしている。妻/30代(夫/30代、子供1人)

夫婦でも言い出しにくい言葉の
代表格が“セックスレス”の件

編集部:今回は、夫婦の悩みの定番ともいえる、セックスレスの話です。すごく悩んでいるというほどではないようですが……。

熊野氏:このようなケースは多いですよ。男性も女性も、鬱になるほど大きな悩みというほどではないけど、お互いを男として、女として見てないんじゃないかって、なんとなくモヤッとしている状況ですね。

夫婦のいろんな問題の中で、セックスレスの話は一番腹を割って話しにくいテーマではある。だから、少なからず悩んでいる夫婦が多いのはわかります。

編集部:どうすればいいですかね?

熊野氏:モヤモヤするのなら話し合うもよし、あまり悩んでないなら放置するもよし。それを決めるのは自分です。世間の風潮に流される必要は全くありません。自分にとって心地いいほうを選べばいい。

ただ、相手がいる話だから、自分には心地いいけど、相手にはよくないかもしれない。相手の立場に立って考えてみる、そういった配慮は、夫婦だから、やっぱり必要だと思います。

編集部:なるほど、配慮ですか。

熊野氏:うん、つまりアドラー的にいえば「共感」ですよね。それと、気持ちだけじゃなく、お互いの体の仕組みを理解することも大切です。ホルモンの影響とか、出産後の女性の体の変化とか、男性の性欲についてとか、本やwebで知識を得たり、お互いに話を聞いてみる。授乳期間中の女性の体には、母乳を出すため次の妊娠をしないように、セックスしたくない気持ちにさせるホルモンが出ているとかね。好き嫌いじゃなくて、体の仕組みでそうなっているんだって知れば、男性も嫌われたわけじゃないって安心できるし、それなら我慢しなきゃって考えられるだろうし。

でもね、正直、このテーマって、一番切り出すのが難しいテーマだよね。もっと手前の、例えば子供の教育のこと、実家の両親のこと、来月の家計のこと、もっと簡単な今日の晩ごはん何食べるかとか、そんな話ができる土台すらできてない夫婦もいるかもしれない。

根本的な原因は
コミュニケーション不足?!

編集部:もしかしたら、普段からコミュニケーションをあまりとってないかもってことですか?

熊野氏:たぶんセックスレスの人たちって、その手前の普通のことを話し合う時間や、環境をつくってないんじゃないかなって思うんですよ。だからもし、セックスを再開したい、もっとスキンシップしたいってなったら、その前の段階から、もう1度丁寧にやり直さないと難しい。

だって恋人時代を思い起こしてください。最初は電話とかメールから始まり、お茶する、映画に行くとかちょっとずつ間合いをつめ、この人とならいいかなって思って、やっとそこまでたどり着くわけでしょ。そうやって少しずつ築いた信頼関係だったのに、夫婦になった途端、それを省いちゃう。そうすると、今まで一番近いはずだった相手が、遠い存在になったように感じてしまうのは当然ですよね。

でも、多くのご夫婦がこんな感じなんだと思う。本当はみんなスキンシップを求めていたり、ありのままの自分を受け入れてもらいたがっている。誰かを愛し愛されるって、とても自然なことだし本当に素敵なこと。なのに、なぜかセックスは汚らしい、いやらしいという負の側面で見てしまう人って多いんです。僕、これはあまりよくない傾向だと思っていて、もっとセックスをフラットにとらえてもらいたいと考えています。

<セックスレスについて熊野氏の見解>
○セックスレス自体が問題なのではない。大切なのは夫婦でコミュニケーションがとれているか。
○セックスを再開したいなら、些細なコミュニケーションも端折らない。
○相手の心に「共感」して、お互いの体について学んで、夫婦にとって最も心地よい状況を考える。

プロフィール

熊野英一(くまの・えいいち)

アドラー心理学にもとづく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。株式会社子育て支援代表取締役。1972年、フランス パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学し、MBA取得。製薬大手企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事する。2007年、株式会社子育て支援を創業。日本アドラー心理学会正会員。著書多数。最新刊は『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館)



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