第6回 働く父は「残業代ゼロ法」をどう受け取るか?
2015/02/13
恐らく、多くの働く母親は育児にウェイトを置く両立意識を持ちながら働くでしょうが、問題は父親たちです。
WCEがあるアメリカやドイツは「家族主義」が定着しており、夕方早い時間に父親も帰宅するのであまり問題は起きないと思いますが、日本の場合は拝金主義に始まり「男性は仕事、女性が家庭」という役割分担意識や、滅私奉公的な長時間労働がまだ蔓延しており(それを評価する企業風土も)、WCEによって規制がなくなることで、家庭生活に問題が発生するほど働き過ぎてしまう男性を増やすことに繋がらないか。
そして、過労死や過労うつ病をまた増やしはしないか(過労死防止団体も反対を表明)、という懸念は払拭できません。
いまのところ法案改正に併せて、年次休暇の取得促進のため企業が年5日間の有給休暇を取らせることを義務化される見通しですが、これについても努力目標だけではダメで、守らなかった企業にはペナルティを与えるなどの逆規制が必要かと思いますし、今回は見送られたようですが、欧州のように勤務と勤務の間の休憩時間を義務化する「インターバル規制」の導入も再考してもらいたいと考えます。
「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入。これ自体は多様化する人材を生かすダイバーシティの観点からはポジティブに捉えることができます。しかし、私はファザーリング・ジャパンの活動で接してきた、「働き過ぎで育児や夫婦関係の問題を抱えた父親たち」を見るにつけ、やはり心配なのです。
仮に法律改正が決まったとしても、条件に適合する「父親」はそれに流されてはいけません。乳幼児のいる家庭に「ラクな子育て」はないのです。ママが外で仕事をしていようがいまいが、家事育児を独りでやっていると次第に追い込まれていき、家庭のリスクは高まっていきます。
パパにとっても「仕事と育児の両立」は永遠のテーマでしょう。でも、これだと言える「解」はありません。忙しさは日々変化しますが、フレキシブルに、優先順位を間違えず、「一番大事なものは何か」を常に考えながら、自分にとって、家族にとっての「仕事と育児のハッピーバランス」の中で楽しく期間限定の子育てをして欲しいですね。
<FJ代表・安藤哲也の男の育児“ファザーリング”最前線>
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安藤 哲也(TETSUYA ANDO)
1962年生まれ。2男1女の父親。出版企業やIT系企業を経て、2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ、5年間代表を務める。一時期は副代表であったが、2014年に再度代表に就任。NPO法人タイガーマスク基金代表。「パパ’s絵本プロジェクト」メンバー、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員、子育て応援とうきょう会議実行委員、にっぽん子育て応援団団長、ラジオパーソナリティなどその活動は多岐に渡る。最新著書に『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由』(廣済堂新書)がある。
(2015.02.13up)