帰省のトラブルにご用心!
2014/12/02
基本ルールは「郷に入っては郷に従え」
「僕はアメリカ人だから」と、日本人の家に土足で上がるバカはいないだろう。異文化圏に足を踏み入れるときの基本ルールは「郷に入っては郷に従え」である。その家の文化に合わせるのが原則だ。自分の価値観に立脚したまま相手を批難しても憎悪以外生まれない。せいぜい数日の帰省。異文化を受け入れることも必要だ。たとえそれが個人的な信条とは相容れなくても。
もうひとつ気をつけたいことがある。たとえば夫が自分の実家に妻を連れていくのなら、夫は自分が生まれ育った文化圏に、異邦人を招いているというくらいの気持ちにならなければいけない。外国人を日本に招いて、箸の使い方やら、風呂の入り方などを教えるようなものだ。妻が戸惑っているようなら、実家の文化を説明したり、さりげなくフォローしたりしてあげなければいけない。海外旅行におけるツアーガイドのような役割だ。
同時に、自分の両親に対しても、妻は異文化から来た異邦人であることを上手に理解してもらうようにしなければならない。帰省中の実家でのことなら「郷に入っては郷に従え」でいいけれど、普段の夫婦の生活にまで自分たちの価値観を押し付け、口出ししようとするならば、「それは僕たちの家庭の問題だから」などといって、毅然としてシャットアウトしなければならない。
たとえば些細なことから夫の両親が妻に対して「どうしてあの娘は気が利かないんだろう」なんてことをこぼした場合、夫は機転を利かせて「あ、ごめん。オレがゆっくりしててと言っちゃったんだ」などと言って、妻をかばうことも必要だ。
自分の実家に招いているほうが、異文化交流のコーディネーターとして、意識的に両者の間に入って緩衝材としての役割を果たさなければならないということ。
そもそも「私たち同じだよね」という前提で始めるからおかしなことになる。最初から「私たち違うよね」という前提で始めれば、違和感を楽しむことができる。それこそダイバーシティ時代のコミュニケーション。それが帰省でストレスをためないコツである。そしてまた、2つの異文化を股にかけて育った子供(孫)はハイブリッドに育つはず。
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おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
おおたとしまさの著書一覧
(2014.12.2up)