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第8回 子育て支援、ここがポイント! 統一地方選

統一地方選のシーズンです。街のポスターや郵便箱に投げ込まれる候補者チラシの多くに「子育て支援の充実」が謳われています。

統一地方選のシーズンだ。街のポスターや郵便箱に投げ込まれる候補者チラシの多くに「子育て支援の充実」が謳われており、大体のものには、こんなフレーズが書かれている。

「安心して子育てできる環境整備を進めます! 安心して出産、子育てができるよう経済的な支援や待機児童の解消を行います!」
「女性活躍推進を応援します! すべての女性がいきいきと仕事や生活ができる社会の実現に尽力します」

しかし、「父親の育児を支援します!」「長時間労働を是正し、夫婦でゆったり育児ができる環境を整備します!」という文言はあまり見かけられない。ファザーリングジャパンでは、「女性が活躍する社会の実現と、男性の育児参画は表裏一体だ」と言っており、父親の育児支援するこそが、最大の母親支援、子育て環境の整備になると考えている。

2010年の育児休業改正法で、専業主婦の夫でも育休を取得できるようになった。また、昨年4月には育休の給付金支給率がアップするなど、父親の育児を支援する制度もかなり改善されてきた。ところが相変わらずの長時間労働のせいで、男性の家事育児時間は増えていない。これでは母親たちの負担は減らず、子育てが大変な状況は変わらないのではないだろうか。好ましくない孤立した育児状況や少子化問題を考えると、日本は残業のない社会の実現を急がねばならない。問題は制度ではなく、長時間労働をまだ美徳と考える企業の風土なのだ。

職場の風土を変えるには、行政も自らがワークライフバランスのロールモデルを示していくことが有効だ。男性知事が育休を取得した広島県ではその後、民間企業でも男性の育休取得率が上がった。三重県でも同じような状況になりつつある。リーダーが率先して声を上げ実践していき、自治体職員や民間を啓発していってほしいし、選挙で立候補する男性候補者で子供が生まれる予定の人などは、マニフェストに「育休取ります!」と書いて欲しいものだ。

また地方自治体の施策として、「父親への育児指導」も大切だ。ファザーリングジャパンではこれまで100を超える自治体と一緒に「父親学級」を開いてきた。既存の「両親学級」では、沐浴体験などほんの初歩的な育児しか男性は学べない。そこで、じっくり時間をかけて、男性に育児に関わる意味や喜びを伝え、ママと手を取り合って育児をしていく方法や、大変さを共有し合う仲間を作ってもらうことを学級の目的にしてしている。これまで8年間で多くの父親たちに受講してもらったが、「参加してよかった」という声をたくさんもらっている。

しかし、父親学級を主催する自治体は全国的にはほんの少ししかない。「育児は母親」が大前提になっている現行の母子保健法の問題もあるが、核家族化や共働き家庭が増える中、そうは言っていられない状況の家庭が多いのが原因だろう。

「子育て支援」というと「保育所の増設」だけを掲げる首長、議員は以依然多いです。もちろん地域によっては、それが必要なのかもしれないが、中長期的に見れば少子化で子供の数自体も減ってくるわけだから、求められているのは政策それだけではないことに気づいてほしい。

母親と父親の両方が幸福感を持ちながら、安心して子育てができる家庭や地域社会を作っていくには、場当たり的な政策だけではなく、40年、50年先の子育ての姿を想像しながら地方政治を見極めていく必要がある。今回の統一地方選ではそういう視点で誰に投票するかを決めたいし、当選した議員の皆様にも、そういった展望を持って仕事をしてもらいたいと強く思う。

<FJ代表・安藤哲也の男の育児“ファザーリング”最前線>
第1回 「パタニティー・ブルー」をどう乗り越えるか!?
第2回 新しい時代の、新しい父親像とは?
第3回 社会を変える父親を目指そう
第4回 発進! イクボス企業同盟
第5回 パパ本、いまが隆盛期!
第6回 父親にとって、「残業代ゼロ法」はどういう意味を持つか?
第7回 未来のパパ・ママからの提案

<イクボス集中講座>
第1回 イクボスって何?
第2回 イクボス実践パパの実例を紹介します!
第3回 管理職も多数参加! イクボスイベントを詳細レポート
第4回 イクボス事情、最新動向 そして「イクボスアワード2014」開催!

ikuboss02NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表
安藤 哲也(TETSUYA ANDO)
1962年生まれ。2男1女の父親。出版企業やIT系企業を経て、2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ、5年間代表を務める。一時期は副代表であったが、2014年に再度代表に就任。NPO法人タイガーマスク基金代表。「パパ’s絵本プロジェクト」メンバー、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員、子育て応援とうきょう会議実行委員、にっぽん子育て応援団団長、ラジオパーソナリティなどその活動は多岐に渡る。最新著書に『父親を嫌っていた僕が「笑顔のパパ」になれた理由』(廣済堂新書)がある。

(2015.04.15up)

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