時事・コラム

“令和パパ”に求められる理想の父親像とは? 男性の育児はもはや常識に

男性の育児は平成に大きく変わった。これから求められる育児とは一体どんなものなのか。NPO法人ファザーリング・ジャパン代表の安藤哲也さんにお話を伺った。

女性の社会進出をきっかけに
男性の育児意識が変化



平成元年は1989年ですからバブル経済の絶頂期。この1989年は、1966年の丙午(ひのうえうま)を下回る戦後最低の合計特殊出生率1.57を記録した年です。少子化の一途を辿る日本を象徴する年として記憶されています。

その少し前の1986年には男女雇用機会均等法が施行され、女性が働くための法整備がなされました。女性の社会進出が進む一方で、バブル崩壊とともに景気は悪化。会社に勤めていればいずれ出世して収入が増える、定年まで安泰、という日本型雇用の神話が崩壊したことも、女性が社会に進出する一つの原動力になったといえます。

また平成は価値感の多様化が進んだ時代でもあります。結婚しないという選択をする人が増え、晩婚化が進みました。社会人になったら、異性と結婚して、子供を育てて、という定型とは違う生き方を、徐々に社会が受け入れるようになったのです。

そんな平成の時代に変化したのが、男性の育児参加への意識です。昭和の男は「飯・風呂・寝る」だけではなかったでしょうか(笑)。また、「24時間働けますか?」というCMに象徴される人生観が一般的でした。ところが女性社会進出には、男性の育児参加が不可欠です。そのため平成になって、日本の男性に育児参加が求められるようになりました。

2006年に日本初の男性育児雑誌『FQ JAPAN』が創刊され、ちょうどその頃、私のライフワークの1つであるファザーリング・ジャパン(FJ)の活動も活発化。そして2009年には『イクメン』が流行語大賞に選ばれました。男性の育児参加が市民権を得ていったのです。

イクメンという言葉が生まれた当初は、家事や育児を手伝うといった補佐役でしかなく、「仕方ないから手伝う」という空気感でした。それが年を経るごとに男性にも主体性が芽生え、今では男性が育児をするのが当たり前、むしろ楽しんでしまおう、という雰囲気に変わってきています。日本における男性育児は、平成に生まれ、そして育ってきたのです。



育児を後押しする法律
新たな課題とは?



一方で、平成の時代を通じて、男性を取り巻く職場環境は大きく変わりました。2016年には女性活躍推進法が施行。これは働く女性の活躍=社会に出て仕事をすることを後押しする法律です。少子化が進む日本では、労働力確保という狙いもあり、女性の活躍を後押しする流れが更に一歩進みました。依然として賃金や昇進における男女格差は残るものの、法整備のフェーズは終盤を迎えています。

また、2019年春には働き方改革法案が施行されました。残業時間が規制され、有給休暇取得の義務化が法律に明記されたのです。今は施行直後ということで現場にしわ寄せが行っている状態ですが、育児をしたい男性にとっては追い風となることでしょう。

男性の育児が一般化する一方で、新しい課題が浮かび上がりました。男性の育児推進には、職場を仕切る管理職の理解が必要だという課題です。そしてその課題を解決すべく『イクボス』というプロジェクトが立ち上がりました。FJの『イクボス』では企業の理解を深める活動を続けています。そして今では名だたる大企業が賛同し、率先して育児しやすい会社、社会を作ろうとしています。男性の育休取得100%を掲げる企業も現れました。平成初期には考えられなかった職場環境が実現しつつあるのです。

現在、新卒で入社する男性社員の8割が育休を取得したいと希望しているという調査結果もあります。より良い職場環境を整えることは、より良い人材の確保にも繋がるわけですから、こうした流れは続いていくでしょう。

課題として残るのは中小企業です。読者の皆さんにとって身近な保育の現場も疲弊しています。賃金に対して責任が重く、休暇を取得しにくく、持ち帰り残業が多い……これでは、保育士のなり手が少なくても仕方ありません。ところが、そんな保育の現場でもFJ会員のパパが奮闘しています。FJ会員の”保育ボス”=保育園経営者が職場環境を整えたことで、有休休暇取得率が約90%(おへそ保育園)や100%(洗心保育園)を達成。保育士さんの確保にも困らず、経営も安定させています。



都市部と地方における
育児の違い

大企業や大都市での男性育児の環境は整いつつありますが、地方では様子が少し異なります。

地方でも親世代との同居は減少傾向にありますが、それでも近居が多くみられます。週末に三世代揃ってご飯を食べるなど、時間を共にする家庭が少なくありません。近居であれば、子供が急に病気になったとき、両親に代わって祖父母が保育園に迎えに行くといったように、助けてもらうことができます。これがセーフティネットとして機能しており、地方における育児の良さの1つとなっています。

地方には中小企業が多いことも、地方での男性育児を都市部とは違ったものにしています。中小企業には働き方改革が行き届いていないため(法律は来年から施行)、未だに長時間残業やサービス残業が横行しており、男性の育休取得どころか有給休暇すら取得しにくい風潮が残されています。

地方は都市部と比較して賃金水準が低いことも、男性育児にとっては逆風です。妻からも両親からも、育児参加ではなく、収入増が求められるのです。「早く帰って来なくて良いから、残業して稼いで来て!」というわけです。古い慣習から抜け出せない地域では、別の問題も見られます。せっかく男性が意を決して育休を取得したのに「男が家事なんてみっともない!」、「あそこの嫁は何をしているのか!」と周囲から圧力を受けて、止むを得ず育休を返上して職場に戻った、という残念な例さえあります。

こうした逆風こそあるものの、都市部とは違った良さがあるのが地方での子育て。自然環境には恵まれているし、過疎化と少子化の影響もあり、待機児童ゼロという地方自治体も多いです。

平成の終わり頃から”人生100年時代”が到来する、と盛んに言われるようになりました。100年の人生をデザインするとき、UターンやIターン、それに子育て期から地方移住する人が出てきています。多くの選択肢から自分らしい育児をデザインする、令和はそんな時代になるのではないでしょうか?



PROFILE

安藤哲也 TETSUYA ANDO

1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザー リング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)


Text >> REGGY KAWASHIMA

FQ JAPAN VOL.51より転載

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