時事・コラム

学校の授業だけじゃ足りない! 子供の将来のために親が教えるべきこと

現在の日本の教育=授業だけで、子供の創造力や行動力、コミュニケーション力を育てるのは難しい。今の子供に本当に必要なのは「自然の中での経験」と「英会話力」だ。『里山資本主義』の著者、藻谷浩介氏によるコラム。

実社会で役立つことは
授業だけでは教えきれない

この連載の前の回で、「セルフリスペクトのある人間」の育成のため、ひたすら自然と触れ合う体験を積ませる幼稚園を紹介した。そういう必要性は、幼稚園どまりの話なのだろうか。

筆者はさらに進んで、小中高での日本の教育カリキュラム自体に、人間の思考能力や行動力を育てるような中身が備わっていないと考えている。不登校で自習した人と、いわゆる「エリート校」の卒業者の間にまったく実力差の生じていないのが、この日本だ。

そもそも日本の学校教育には、実社会で役立つ内容を教えないという大問題がある。象徴は英語教育だ。正確な発音の訓練を一切しないので(そもそも英語教師自身が発音できない)、大学入試の共通テストで満点を取った生徒が英語を話せるというようなことは、帰国子女を除けばまずもってない。

日本人の学歴エリートのほぼ全員が、英語で道を聞かれたときに教えることさえ満足にできない。難しい外交官試験を突破した外務省のキャリアが実に変な英語を話すということを、筆者は何度も目撃してきた。

ちなみにTOEFLやTOEICといった外国製のテストでも同じことで、ペーパーテストでは英語での最低限のコミュニケーション能力も測ることはできない。むしろ中卒で海外に飛び込んだ日本人の中にこそ、国際的な場で外国人と丁々発止とやりあえる人間が存在する。

商業高校に行けば会計の基礎を、農業高校では作物の育て方、工業高校では工具の使い方を学ぶが、いわゆる「普通高校」ではひたすら微分積分だの欧州の〇〇王朝だの、人生でまったく使うことのない知識を詰め込んで、そして受験後に忘れる。

しかし卒業後に企業で働くのなら減価償却など会計の基本は知っておいた方がいいし、退職後には農業や日曜大工の素養があることが何よりも役立つ。「普通高校」に行かない子供は人生の敗北者であるというように感じるとすれば、余りに愚かしいことだ。

「進学をしない」という
選択肢もある

そんな日本の学校教育に見切りをつけ、進学を選択しない子が徐々に現れ始めている。筆者の知り合いにも、超有名大学に推薦で合格したにも関わらず、一流料理人になるための修行の道を選んだ子がいた。一流銀行の管理職である父親は無念だったようだが、自らの意思で手に職をつける選択をした彼こそ、正しいのではないか。

平成の間に劇的に進んだ産業用ロボットの普及は、工場の単純労働者の数を驚くほど減らした。そして平成の次の時代に間違いなく進むAIの普及は、「一流大学卒」の多くが従事するペーパーワークを大きく減らす。お受験で問われる暗記とパターン思考は、AIの方が得意である。創造的な工夫をできる人間だけが、AIに負けずに生き残る。

今後の仕事で特に有望なのは農業だ。日本の農業の出荷額は、2007〜17年の最近10年間に12%も伸び、農家の所得は何と25%も増えた。自分で工夫してブランド農産品を作る若い農家の増加が理由だ。

他方でこの間に、製造業の出荷額は10%も減り、公務員の給料も年々削られ、金融機関の多くは低金利で消滅の道をたどっている。若い世代ほどそういう現実を感じているがゆえに、大学の農学部の人気はうなぎのぼりだ。

以上を読んで「何をいっているのかわからない」と思ったあなたは、もう平成も終わったというのに、まだ頭の中身が昭和のままである。昭和の評価軸で、平成の次の世界を生きる子供の人生を決めようとしている。

余計なことはやめよう。子供には自然の中での経験と、そしてできれば英会話力をつけさせよう。塾は無用、ラジオ講座でじゅうぶんだ。大学に行きたければ行けばいいが、行かずに実社会に飛び出しても、まったく損しない時代である。本当に優秀な人材ほど、東京を飛び出して、海外や地方に修行に出かけている時代なのだ。

以上は54歳を迎え、東大法学部時代の友人たちがまったく偉くならずに続々と会社から退職させられているのを日々目撃している筆者の、心底からのご忠告である。

PROFILE

藻谷 浩介 MOTANI KOUSUKE


株式会社日本総合研究所主席研究員。「平成の合併」前の3232市町村全て、海外90カ国を私費で訪問した経験を持つ。地域エコノミストとして地域の特性を多面的に把握し、地域振興について全国で講演や面談を実施。自治体や企業にアドバイス、コンサルティングを行っている。主な著書に、『観光立国の正体』( 新潮新書)、『日本の大問題』( 中央公論社)『里山資本主義』(KADOKAWA)など著書多数。お子さんが小さな頃は、「死ぬほど遊んだ」という良き父でもある。


FQ JAPAN VOL.50より転載

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