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基礎知識

【子どものお金の基本】子どもが生まれてから社会人になるまでどれくらいかかる?

子どもが生まれてから社会人になるまで、子ども関連の費用はどのくらいかかるのだろうか。出産費用から保育料、教育費、教育ローンについて解説する。

どれくらいお金がかかる?
全国平均と準備方法

子どもが生まれてから社会人になるまで、さまざまなお金がかかる。それがいったいどのくらいなのか、どうやって用意したらよいのか、漠然と不安を抱えている人も多いのではないだろうか?

費用を計画的に準備していくための基礎知識として、まずは一般的な支出を把握しておきたい。たとえば、出産に対応する補助は増えているが、かかる費用は年々上昇していること。大学にかかるお金は高額でも、公的扶助を活用しコツコツと準備すれば比較的容易に準備できること……。それぞれのシーンごとに特徴を見ていこう。

出産費用

今年の4月から出産育児一時金が50万円に引き上がった。令和2年度の出産費用の全国平均は452,288円だが、地域によっては一時金だけでは足りず数万円~10万円程度の自己資金を用意する必要があるだろう。そして出産費用は年間1%ずつ上昇していると言われている。出産の時には公的負担だけに頼るのではなく、ある程度の自己資金の用意があった方が安心だ。

公的病院 都道府県別出産費用(令和2年度)

【POINT!】
全国平均は452,288円。年1%上昇傾向のため、出産一時金の他に、自己資金を用意しておけると安心。

保育料

認可保育園の平均が2歳児1人の認可保育園の平均保育料は3万7,755円、認可外の平均は2歳児で月額25,000〜45,000円程度だ。保育料は自治体が独自に設定しているため、住んでいる場所によって異なってくるほか、東京都や札幌市、福岡市では第2子以降の保育料の無償化を実施。どこに住むかを考える時に、保育料が周辺自治体と比べて安いのか高いのかを調べておこう。

【POINT!】
認可保育園の2歳児平均は3万7,755円。自治体によって金額は異なるため住まい周辺の金額を確認しておこう。

教育費

子どもが大学卒業までにかかるお金は約700万円〜2,000万円。公立か私立かによって学費は大きく異なるが、小学校から大学まで私立に通わせる場合は約2,000万円もの学費が必要だ。とても大きな金額に感じるが、児童手当や子供医療費助成など、子育てには公的な扶助も多数ある。子育てに対する公的扶助制度は自治体によって大きく異なる。まずはお住まいの自治体にはどんな制度があるのかを調べよう。

また、大学や高校など、子供が大きくなれば必要な教育費も高額になる。

大学にかかる入学金・授業料を合わせた4年間の合計は国公立で200万円~250万円、私立は350万円~550万円程度が相場。子どもが生まれた時から児童手当を全て貯蓄に回しても250万円程度は不足になる金額だ。そこで子供が生まれたらつみたてNISAなどを活用し「子供が18歳になるまでに250万円を貯める計画」を立てよう。金利2%で毎月1万円を18年間半年複利で積み立てると大体250万円を貯めることができる。子供の大学教育費のために「子供が生まれたら月1万円」を目安に貯蓄を始めよう。

大学卒業までにかかる支出


※1:3歳から保育所、幼稚園に通うと仮定した場合
※2:高校生はノーデータ。中学生の数字を当て込みして算出
出展:内閣府政策統括官(共生社会政策担当)「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」
(未就学児・保育所・幼稚園児・中学生)
独立行政法人 日本学生支援機構「平成30年度学生生活調査」(大学生)

国公立大学の授業料などの推移


出展:文部科学省「平成30年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」
文部科学省「国公私立大学の授業料などの推移」

【POINT!】
すべて私立なら最大2000万円。大きな金額のため積み立てNISAなどの投資も活用して準備しよう。

積み立て

毎月の積み立ては使い分けが重要だ。子供の学資のためなら学資保険、貯蓄性の高い保険として低解約返戻金終身保険、いつでもおろせる積立として積立定期預金、長期間かけて資産を増やすならNISA。用途に応じて複数の積立商品を使い分けるとよいだろう。

【POINT!】
子供の学資のためなら学資保険、いつでもおろせる積立として積立定期預金など目的・用途に分けて複数の積立商品を活用しよう。

教育ローン

学費は教育ローンや奨学金なども活用できる。しかしどちらも、子どもが社会人になってから返済していくのが基本スキームだ。借りすぎは、子供の将来の大きな負担になるため、借りる時は「卒業後に返済していけるのか」を考えるのも大人の重要な責任だろう。

【POINT!】
子どもが社会人になってから返済することになるので、負担を考えて借りる額を考えることが重要。

給付金

教育費には、給付金を上手に活用しよう。給付型奨学金は大学生や専門学生が返済不要の奨学金を受け取れるというもので、たとえば私立大学へ自宅外通学する場合は月額75,800円が給付される。しかし、受け取るための条件は非常に厳しく、普通の会社員の家庭では受け取れない(一般の奨学金は利息ありのものであれば、親の収入が一定の範囲内であれば誰でも借りることができる)。

また、高等学校等就学支援金では収入条件を満たせば、私立高校も無料に近い金額で通わせられるようになっている。親の収入によって受け取れる給付金は異なるので、どんな扶助が受けられるのか、まずは自治体へ確認しよう。

【POINT!】
返済不要の奨学金や就学支援金など扶助をうまく活用することも大事。ただし、条件が厳しいことが多いのでまずは自治体に確認を。

マネー教育

欧米ではマネー教育が古くから一般的に行われてきたが、日本ではまだまだ遅れているのが実情だ。

調査によると「金融知識に自信がある人の割合」はアメリカで76%、日本で12%。また金融テストでは、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスと比較して日本は最下位。日本のマネー教育は明らかに欧米に比べて遅れている。

イギリスは小学校高学年から高校生までの全ての学年ごとに金融について体系的に学べるカリキュラムが用意されている。またオーストラリアも金融リテラシーを身につけるカリキュラムを導入することが決定した。

老後の心配のない日本はこれまで金融教育は必ずしも必要ではなかった。しかし終身雇用が崩れ、公的年金が信用できない現代は自分の資産は自分で増やさなければならない。日本でもマネー教育の拡充は喫緊課題だと言えるだろう。

金融知識テスト正答率の国際比較


日米の共通テストは6問、欧州3ヶ国との共通テストは5問
出典:金融広報中央委員会

【POINT!】
日本の金融テストの正答率は欧州、アメリカと比較して最下位。公的年金に期待ができないいま、マネーリテラシーの獲得は必須項目。

教えてくれた人

手塚大輔さん


地方銀行に8年勤務し、住宅ローン・カードローン・フリーローンなど個人ローンの他、事業性融資・創業融資など幅広い業務を担当。ファイナンシャルプランナーの資格を有する、100件あまりのフリーローン、住宅ローン数十件、その他に投資信託・個人年金・国債販売も取り扱う。現在は、飲食店のオーナーを務める傍ら、金融ライターとして大手メディアに数多く寄稿。


文:手塚大輔

FQ JAPAN VOL.68(2023年秋号)より転載

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