時事・コラム

少子化を食い止めろ! クマ型社会からサル型社会へ

日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介さんにお話を聞く新連載「里山資本主義的子育てのすすめ」。第2回目は、日本の子供の深刻な減少が続く中で、親世代と同数以上の子供の再生産に成功している自治体の共通点を探る。(後編)

>>前編:少子化問題を「居酒屋経営」に例えて考えてみた!

精神的負担を分かち合う地域は
子供が減らない

ただこれにも条件がある。「何杯飲んでも払いは割り勘」「何人産んでも負担は割り勘」という仕組みがあることだ。シラフの人間からしたら、「どうして4杯5杯もビールを飲んで酔っ払っている人と、1杯もお酒を飲まない自分が同じ支払いなのか。こんな人と一緒はおかしい」などと言いたくもなるが、現実の飲み会では、それでも参加者の頭数で割った同じ金額をちゃんと支払っている人が多い。そうした人がいるから、ビール中心の安居酒屋も成り立つのである。子供が増えている地域の特徴も実は同じなのだ。

たくさん産む人が一部に存在し、その一方で子育ての負担の〝割り勘〞を許容するという、2つの要素が両立して成り立っている地域で子供は増えている。

この40年間に教育の世界は劇的に変わった。毎年の出生数が40年前のほぼ半分となって、お互いを蹴落とし合うようなお受験教育の必要は急速に失われているのに、都会では塾通いやお稽古事が年々盛んとなり、「教育にはお金が掛かる」という風潮がますます強まっている。大学の学費も年々上昇し、現実問題として子供を持つほど親の金銭負担は増えていく社会が出現してしまった。

育児で重要なのは
お金で解決できない部分

そんな中、「子育ては親の個人責任」という考え方が強く、教育熱心で学歴志向の高い地域ほど子供の数は減っている。典型は首都圏や人間関係がドライな北海道、あるいは秋田県のような学力テストの平均点が高い田舎だ。逆に、子供を産んだ人に対して優しく、求められなくても気を使ってあげて助けてあげる気風のある地域ほど子供は減っていない。最典型は沖縄であり、次いで九州各地だ。

日本には住民の子育てに対して各種の金銭的支援を行っている自治体はたくさんあるが、お金を投じれば必ず子供が増えている訳ではない。育児にはお金で解決できることもあるが、お金で解決できない部分こそ大きいのである。

子供が熱を出してしまい、保育園も預かってくれない。そういうときに誰かが助け船を出してくれるコミュニティーほど、子供は減っていない。子供の看病のために止むを得ず会社を休んだ翌日、「大変だったね、私も苦労したのよ」と言われるか、「また休まれてこっちに迷惑が掛かったわ」と陰口を言われるかという違いも大きい。子育ての精神的負担を皆が理解し支えてくれるか、思いやりのある言葉を掛けてくれる人がいるかどうか。先述した〝割り勘〞というのはそういうことだ。子供を産んだ人に対するリスペクト、寛容、支える気持ちといった意識がある地域社会ほど子供は減らない。それが少子化を食い止めている自治体の共通点なのである。

 

 

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