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「なんで女の子は神輿を担いだらいけないの?」男性学で考える’’お祭‘‘とジェンダー問題

伝統のある祭礼行事や地域のお祭り。文化を次世代に継承することは必要ではあるが、女性の参加が認められない差別的習慣が未だに存在している。私たちはどのように向き合えばよいのだろうか。社会学者の田中俊之氏に聞いた。

女性差別と認識しつつも
自分の代では変えられない

伝統的な祭礼行事や地域のお祭りなどでは、「お御輿、太鼓は男性しか叩けない」といったような、女性の参加が認められない習慣があるものが存在しています。その理由としてよく聞くのは、「仏事や神事として始まった歴史から、男性が世俗の欲を絶つ修行の場に女性がいると、妨げになる」といったものや、「昔は出産や月経に伴う出血が『ケガレ』として不浄視されていた」などの話です。

ただ正直、今の時代に、「これまでそうやって来たから」と説明されても疑問が残りますよね。「これは女性差別ではなく伝統だ」と言う方がいるかもしれませんが、残念ながら伝統の中に女性差別が含まれているわけですから、それでは許されません。そのことをみんなある程度認識していると思いますが、何十年、何百年も続いている行事を、自分の代で変えてしまう怖さがあって、言い出せないのではと思います。

これまでがどうではなく
これからどうするか

しかし、そうやって女性が「女子だから排除された」経験を小さな頃から持つことは、その後の人生に大きな意味を持ってしまいます。男性からしても、小さな頃からそういう差別的な意識や行動が根付くことは、デメリットでしかありません。それに男の子の中にもきっと、「お神輿を担ぎたくない」「太鼓なんか叩きたくない」という子がいますよね。

ですから読者のパパのみなさんにはぜひ、「これまでがどうだったか」ということよりも、「これからどうするか」を考えて行動していただきたいたいのです。「子どもたちがこの先、どういう社会を生きて欲しいのか」という視点から見ると、答えは明白ではないでしょうか。私は、性別の枠に囚われず、担ぎたい子がお神輿を担げる社会を生きて欲しいと願っています。

「パパはおかしいと思う」と
しっかり伝えることが大切

もしそういった習慣を目にした時や、「なんで女の子は神輿を担いだらいけないの?」といった疑問を子供が言ってきたら、「パパもそれはおかしいと思う。性別によってできないことがあるのはおかしいことなんだ。本当は女の子も神輿をかつげる社会であるべきだ」という話を、しっかりお子さんにしてあげて欲しいと思います。

「パパは分かってくれた」という想いは、心の救いになり、その後の価値基準に影響するはずです。

地域への帰属意識の希薄化で
衰退し平等化される未来も

もちろんこういった習慣は、世代交代とジェンダー意識の広がりから、少しずつ変化しています。加えて今は共働きが増え、昼間は居住地と違うエリアにいる人も多いので、地域への帰属意識は薄れていっていますよね。それに伴って、伝統行事や祭りに参加しない人口も増えていくのではないでしょうか。

と言っても、そういった文化を大切にする方もいますので、衰退しつつ、形を変えて生き残っていくのでは予想します。そして結果それが、男女関係なく参加できる形態につながっていくのではないでしょうか。伝統文化の衰退=ジェンダーフリーとは、ちょっと皮肉な未来なのかもしれません。

スポーツとジェンダー問題

大相撲の土俵に女性が上がれない、高校野球に女性が参加できないなど、スポーツにも女性差別的な習慣が残っているものがあります。そういったものを子供が目にしたら、「性別で差をつけるのはおかしい」と伝えた上で、「ボクシングで金メダルとった女性がいる」など、性別を越えて成功している事例を教えてあげてください。

【まとめ】
●「子どもたちがどういう社会を生きて欲しいのか」という視点から考えよう。
●差別的な文化や祭りを子供が目にしたら、「おかしいことだ」としっかり伝えよう。

PROFILE

田中俊之

社会学者。大妻女子大学 社会学専攻准教授。男性が男性だからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて、男女共同参画社会の推進に取り組む。著書に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。


文:笹間聖子

FQ JAPAN VOL.65(2022-23年冬号)より転載

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