企業の存続にも関わる?男性の育休取得と育児参画を推進する3つの条件とは
2022/05/26
改正育児・介護休業法がいよいよ2022年4月より施行される。男性がより育休・産休を取得しやすい会社→社会にするために何が必要なのか、ファザーリング・ジャパン(FJ)の代表・安藤哲也さんに話を聞いた。
男性の育休取得と育児参画
推進の条件は3つある
今年4月、いよいよ「改正育児・介護休業法」が施行されますね。今回は、その政策支援を受けて、男性がより育休・産休を取得しやすい会社→社会にするために何が必要なのか、説明していきましょう。
ファザーリング・ジャパン(以下、FJ)で行っているイクボスセミナーでは、「男性の育休取得と育児参画を推進する条件は3つある」とお伝えしています。それは、①本人の意識啓発、②上司の意識改革・マネジメント改善、③組織全体の取り組みです。
①は、本人の「パパスイッチ」を入れる、ということ。
本誌読者ならば大丈夫だと思いますが、これが大前提。本人がやる気にならなければ、何も始まりません。本誌だけでなく、書籍やセミナーなどから情報を得ることで、育休取得と育児参画により得られる楽しさ・メリットを理解できるはず。そうなればパパは自ずと、育児に前向きになるはずです。
②と③は、まさにイクボスセミナーで行っていること。まだまだ職場の理解不足が原因となり男性が育休取得しにくい、という事例は少なくありません。
企業の存続にも関わる
イクボスの大きな役割
パパスイッチがオンになっても男性が育休取得・育児参画しにくい場合、その原因は企業・社会の側にあるはずです。そこを変えるのがイクボスの役割です。
ボス世代に知って欲しいのは、育休取得を求める若い世代の声。パーソルキャリアが実施した調査(※)では、男性の8割が「育児休業を取得したい」と回答し、さらに20代前半までの若い世代の方が、それ以降の世代と比べて取得を希望する人が多いという結果でした。そして積水ハウスのような進んでいる企業では、既に男性の育休取得100%が達成されています。
※パーソルキャリア株式会社「男性育休に関する意識調査 第2弾」
すると……そうした願いが叶えられる会社に優秀な人材が集まります。職場環境を整えることができた企業は、これからさらに人手不足が進む日本において人材確保の面で有利となる一方、整えることができなかった企業は圧倒的不利に陥るのです。
男性育休は社会を変える
ボウリングの一番ピン
男性の育休取得・育児参画は、もはや個人や企業の問題を越えた、社会課題の1つとも考えられます。しかし、男性の育休取得と育児参画さえ進めば、それで全て解決なのでしょうか? そんなことはありません。
今や当たり前となった女性の産休・育休取得だけでなく、親の介護のための休暇が必要な人も、今後ますます増えていきます。職場のダイバーシティ推進や働き方改革も、企業にとって解決せねばならない課題です。
さらに広い視野に立てば、人生100年時代やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上、少子化対策などなど、これまで当コラムのテーマに取り上げてきた、社会として解決せねばならない課題は山ほどあります。それらを解決していくきっかけ=ボウリングの一番ピンが、男性の育休取得・育児参画。ここを倒すことが、多くの社会課題を解決するスタートとなるのです。
育休取得はチームで推進
後に続く人の味方になろう
これからの企業には、組織体制と意識の変革=労働環境の整備が求められます。子育て世代・介護世代に限らず、あらゆる世代の社員とその家族が幸せでいられる会社こそが、目指すべき姿です。そのためには、職場のチームワークの向上、生活情報の共有、チームメンバー全員が活躍する職場作りが欠かせません。
もちろん育休取得は当然の権利ではありますが、取得する側も、それに甘んじていてはいけません。職場の仲間に負担をかけないよう、可能な限り事前事後に配慮すること。それに、職場を支えてくれている人への感謝は欠かせません。
そして、同じような立場にある人がいたら、必ず味方になって欲しい。「これは貴方だけの問題ではありません。社会の問題なんですよ」……そんな言葉をかけることができる社員が職場に増えれば、きっと男性の育休取得率も向上するに違いありません。
こうして働きやすい職場→社会へと、改革が進んでいくことを願っています。
PROFILE
安藤哲也
1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)。
文:川島礼二郎
FQ JAPAN VOL.62(2022年春号)より転載