時事・コラム

イクメンは死語!? イクメン“バッシング”の裏の心理

TV番組で、ある芸能人が「自分の子供を育ててイクメンって意味が分からない!」と発言したところ、SNS上で多くの賛同が集まった。本来肯定的に捉えられていたはずの"イクメン"は、今や悪者になってしまったのか?

2010年イクメン元年
当時は新鮮だった

イクメンという言葉が広く使われるようになって、未だ10年も経っていませんよね? 既存の父親像は、平日は仕事中心で夜遅くに帰宅、休日は居間に寝転がってTV三昧、育児・家事は全て妻任せ、というものでした。

そんな一般的な父親像とは全く違うイクメンの存在を当時大学の講義で紹介したところ、学生の反応は実にポジティブでした。女子学生は「将来の自分のパートナーはイクメンが良い!」、男子学生は「自分も将来イクメンになりたい!」と声をあげました。

男性が積極的に育児・ 家事に関わるのは本来当たり前のことですが、そうした父親像が全く浸透していなかった当時の日本社会には新鮮でした。そのためイクメンは一気に社会に浸透したのです。

当時の社会的な背景を見ると、都市部では核家族化が完全に定着して子育て負担は増えたままであり、可処分所得が低下し続けていますから産後女性の職場復帰率も上がっています。働く女性=ママが果たさねばならない事柄は圧倒的に増えていました。

そこで登場したイクメンは、きっと世の中のママにとっては救世主のように見えたことでしょう。

社会が変われぬまま
死語化したイクメン

それから年を経た現在、イクメンという言葉は社会に定着して、それと共に育児・家事を当たり前に行うイクメンが確かに増えました。イクメンという言葉の登場により、男性が出産・育児のために休暇を取ったり、定時に帰宅して家事をしたり、ということが行われやすくなった。そう考えるとイクメンという言葉の果たした意義は大きかったと思います。

一方で、イクメンそのものが定着したことで、「いつまで言っているんですか?」という雰囲気が漂ようになったのも事実。それが「自分の子供育てるだけなのにイクメンって……」という芸能人の発言に現れているのではないでしょうか? 今さら”ヒルズ族”とか”チョイ悪親父”って言われても、ちょっと困ってしまいますよね? それと似たような”賞味期限切れ”が、イクメンにも起こっているのでしょう。

また近年はイクメンを後押しする存在として、イクボス(イクメンをサポートする上司)を増やす活動が盛んになっています。働き方改革という大きな社会的な流れの中で、プレミアムフライデーという制度も始まりました。

ところが、イクメンの対極にあるようなフラリーマンという新しい言葉が生まれてしまうほど、育児・家事と縁の無い男性がまだまだいます。世の中の女性は、そして貴方のパートナーは、きっとイクメンを求めているはず。声高に自分をイクメンであると主張する必要はありませんが、パートナーに寄り添い、職場の理解を得ながら、当たり前にイクメンであり続ける男性が増えると良いですね。

イクメン“バッシング”の裏にある
夫婦の意識の差

①夫婦間で家事負担の意識差がある

大和ハウスが実施した、共働きの夫婦に向けた家事負担割合に関するアンケート結果によると、妻の認識では「夫 1割:妻9割」(37.3%)がトップなのに、夫の回答トップは「夫 3 割:妻 7 割」(27.0%)。妻が思っているより「自分はやってる!」と考える夫が多いのだそうです。妻に対して“家事を手伝う”という発言はNG。この言葉の裏には、「家事の主体は妻」という視点が表れています。意識の差はふとした発言や行動に出てくるものです。

②正解を出そうとせず話を聞く

子供が寝静まった後などに「最近、仕事が忙しいから家事ができなくて……」なんて奥様から言われることがありますよね? そんな時、奥様は解決策を求めているワケではありません。あなたに大変な状況を知ってもらいたいのです。間違っても「なら転職すれば?」なんて解決策を提案しないこと。落ち着いて話を聞いてあげるだけで充分。奥様は会話を楽しみながら、自分で気持ちの整理を付けて行きますから。

③世代間にも格差があることを知る

社会の雰囲気だけでなく、社会制度の面でもイクメンをサポートする動きが本格化していますが、職場の全員がイクメンに対して理解があると考えるのは間違いです。理解がある上司(イクボス)だって、頭のなかでは「自分の若い頃は……」と考えていて不思議はありません。忖度し過ぎると疲れてしまいますが、世代間で考え方の違いがあることは理解しておくと無用なトラブルも起こり難くなりますよ。

 

PROFILE

香山リカ RIKA KAYAMA

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、 現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。著書に『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など。


Text >> REGGY KAWASHIMA

FQ JAPAN VOL.46より転載

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