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【仕事×育児×介護】子育て世代が考えるべきワークライフバランスって?

働き方を変えるヒント2
イクボス

育児参加に理解のある“ボス”が増えれば、職場にいろんなメリットが生まれる。これからのWLBを考える上で、きっと役立つ「新概念」について、安藤・川島両氏にきく。

イクボスとは?

従業員や部下の育児参加、ひいては多様な働き方やWLBに理解のある事業主や上司のこと。部下の育休取得や子供の急病などによる早退・休暇取得を積極的に促進させたり、そのための業務改善や関連制度の導入に積極的に取り組む。

イクボスの存在は
必要不可欠

政府が掲げる『女性活躍推進』のためにも、これからは『イクボス』の存在が必要不可欠。その役目とは、育児をしている社員を応援するだけではありません。女性にも入社の頃から、それぞれの能力に着目し、男性と同等に重要な仕事を任せることが肝心。若いころに面白い仕事をやって成功体験やビジネスマンとしての達成感を得ていれば、出産や子育ては、人生におけるワンステージにすぎないと思えるわけです。

僕もかつて企業で働いているときに、そのことを目の当たりにしましたし、知人の女性でTV局のディレクターや新聞や雑誌の記者は、たいていみんな育休後に職場復帰、活躍してキャリアを伸ばしています。だから上司や経営者は『女性活用』に対する考え方を変えたほうがいい。

また多くのボスは育児を終えていますが、彼らには老親の“介護”の問題がすぐそこに控えている。場合によっては、若年性認知症で妻も介護が必要になるかもしれない。だとしたら、家庭を持ちながらキャリアアップを望む若い人たちのニーズをくみ取り、男女ともに育休を取れる職場環境を整えておけば、ボスたちも来るべき時に介護と仕事の両立ができるわけですよね」(安藤)。

新たな“ヒーロー”を
増やす意識を

「WLBや女性活躍の推進というのは、精神論や啓発論だけではなかなか進まないものです。仕事上での損得勘定に持っていかないと動かない経営者や上司が多いので。例えば、消費の約8割は女性が決定権を持っているわけだから、『売上げアップのためには女性の目線を入れたほうがいいですよ』とか、『ワークシェアの仕組みというものは、企業のBCP(※不測の事態に事業を継続するための計画)としても機能するので、企業の体質強化につながりますね』という風にボスたちにアドバイスする。逆にネガティブアプローチとしては、『このままの経営を続けていたら、部下から訴訟されるかもしれません』とか、『ノイローゼによる労災が出たら、あなたはクビですよ』といった、“リスクヘッジのために必要だ”という伝え方ですね。だから、僕らもボス向けにセミナーを開催するならば、ただ単にWLB系のセミナーではなく『ビジネスの得になるんですよ、あなたの仕事や出世のプラスになりますよ』という話で、まずは興味を持ってもらう。それが今我々が取り組んでいる『イクボスプロジェクト』なんです。『イクボス』が少ない組織や企業は、グローバル競争で敗者に成り下がることは間違いないと思いますよ」(川島)。

職場が必ず変わる!

「いきなり『長時間労働をやめよう!』って言ったって、彼らは今まで自分たちがしてきたことを否定されている気分になっちゃう。でも、効率のいい働き方は、介護も含めいざというときに誰もが仕事と生活のハッピーバランスが取れる、という考え方が浸透していけば、みんなが安心して働けるはずです。サッカーでも野球でも、いかに味方をカバーするかが重要。同じように自分の役割を限定しないで、マルチスキルを磨き、必要に応じてカバーしあう組織作りをした方がいい。そういうチームは強いですよ。介護の人がいる、育児の人もいる、あるいは自ら病気や怪我をしてしまう人もいるかもしれない。イクメンだけをとると反感を抱く人もいるかもしれないけれど、“介護”というキーワードを加えて、自分のためだと自覚したらボスたちも変わると思います」(安藤)

頭にいれておきたい
いずれ直面する“介護”の問題

あなたは介護の問題について考えたことがあるだろうか。WLBというと、仕事と育児や家事の両立の問題を思い浮かべるかもしれない。しかしながら、読者諸兄には、その先にある両親の介護のことも頭に入れておいてほしい。

企業にとっては育休で休まれるより、アラフィフ世代のキーパーソンがいなくなる方が痛手、いう声もある。何の備えもないまま要職についた人間が抜けてしまい、深刻な事態に陥ってしまう組織も出てくるだろう。

もちろん、WLBに早くから取り組んでいる企業なら、介護問題に直面した社員が辞めなくて済む。ただし介護休暇の上限は95日。その後は自分で調整するしかない。すると「フルタイムで働けない」とか「出張に行けない」とかいろんな問題が出てくる。それでいたたまれなくなって、結局辞めてしまうパターンも多い。これは職場復帰したママたちと同じ構図だといえるのだ。


FQ JAPAN VOL.30より転載

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