少子化を食い止めろ! クマ型社会からサル型社会へ
2017/12/29
父親が育児に参加しないクマ
男女共同で子育てをする人間
それともう1つ。父親が一緒になって子育てをしやすい地域なのかどうかも、出生率に大きな影響を与える。「子育ては女の責任だ」と男性が決め込んでいる地域社会ほど、子供は増えない。なぜなら人間というのは、本来群れの中で老若男女が共同して子育てをする動物種であり、子育ての負担を母親だけに押し付けるというのはその本性に反しているからである。
ちなみに、自分の子供しか育てないのは鳥。母親しか子育て行動を取らないのはたとえばクマ。一方、動物園のサル山を見れば分かるとおり、サルは集団で暮らし、その中では母親のみならず群れの各自が子育てに関して役割を持っている。子ザルは母親にベッタリせず、親から離れて遊びに行っては、「ママ〜」と帰ってくる。子ザル同士で遊んだり、お姉さんザルが保育園のような感じで子ザルを集めて面倒を見ていたり、ボスザルのところにみんなでいたずらをしに行っては怒られたりしている。
ご存知の通り、サルのDNAは人間とほとんど同じだ。人間の子供は両性で集団の中で育てるというのが、DNA上の要請である。そもそも家族で家の中に引きこもって育てるように人間はできていない。「母親が子育てをすればいい」と言っている父親は、人間がクマであると勘違いをしていないか。
人間の子育ては、夫婦・社会全体で行っていくべきものなのだ。
※人口のデータは務省統計局「平成27年国勢調査結果」、出生数、出生率のデータは厚生労働省「2015 年人口動態統計」に基づき掲載
PROFILE
藻谷 浩介 MOTANI KOUSUKE
株式会社日本総合研究所主席研究員。「平成の合併」前の3232市町村全て、海外83ヶ国を私費で訪問した経験を持つ。地域エコノミストとして地域の特性を多面的に把握し、地域振興について全国で講演や面談を実施。自治体や企業にアドバイス、コンサルティングを行っている。主な著書に、『観光立国の正体』(新潮新書)、『日本の大問題』(中央公論社)『里山資本主義』(KADOKAWA)など著書多数。お子さんが小さな頃は、「死ぬほど遊んでやった」という良き父でもある。
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FQ JAPAN VOL.44より転載