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基礎知識

少子化対策を企業努力に委ねるな!

(4)「男性の育児・家事時間1日150分」について

結果的にそうなるのであればいいが、数字を追いかけるのは本末転倒。この数字に限らず、今回の数値目標すべてに共通することだが、数字を追いかけることは、偏差値のために勉強をするようなもの。

大切なのは「家族との時間は量より質」と思うこと。

子供と過ごしているときは仕事のことを忘れて100%子供に集中してあげると、子供も喜ぶ。父親との時間が子供の心に刻まれる。だらだらいっしょにいるよりもインパクトのある一瞬のほうが、子供の心に父親の存在感を刻みやすい。

忙しくて時間がないと、「早く仕事を終わらせなきゃ」と発想しがちだが、それこそ「仕事>家庭」の価値観の表れ。そこで「量より質」と考えることで、今ある家族との時間に意識を集中することをおすすめする。そうやって父親の無意識における家族との時間の領域を増やすのだ。

人間は無意識に操られる生き物だから、無意識の中における家族との時間の割合が増えると、実際に仕事よりも家族との時間を増やすように父親の無意識が父親自身を操りはじめる。少しずつだが、時間の使い方が変わってくる。自分でも気づかないうちに。
言い換えれば、「仕事を早く終わらせなきゃ」といって仕事に意識を向けてしまうことは逆効果ということ。

ここに、多くの人が陥ってしまっている落とし穴がある。

(5)「病児・病後保育利用者150万人」について

これはジレンマ。本来であれば、病児・病後保育サービスを利用しなくても、親がいつでも仕事を休める環境を整えるべきだと個人的には思う。そのために今回様々な施策や数値目標が打ち出されているわけ。
だって自分が子供のころ、とにかく病気のときは近くに親がいないと不安になって、辛さ倍増だったから……。あくまでも個人の感想。

ただ、一足飛びにそんな社会が実現するわけもないから、過渡期としてこのようなサービスの利用が増えるということはやむを得ない。ただ、150万人という数値目標を掲げるのは、社会の宣言としては微妙だなと感じる。「子供が病気のときには積極的に病児・病後保育を利用して、もっと働け」というメッセージにならないように気をつけなければいけない。

いずれもハードルは高いと感じるが実現不可能ではない。
実現のために必要なことは根本的には社会のムードだと私は思うが、あえて具体的な攻略ポイントを挙げるなら、3つ。

(1)会社の中での競争圧力の緩和(出世競争みたいな文化)
(2)育休中の給付金の増額
(3)企業への補助制度の充実。

とくに(3)についてはほとんど議論されていないのが気になる。

大切なので、何度でもくり返す。産休・育休・病児保育などは、企業による福利厚生的な性格のものではなく、国による社会保障の範疇であるという認識のもとで議論を深めていく必要がある。

※少子化社会対策大綱案の概要はこちら。
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/law/pdf/shoushika_taikou2_g.pdf

<おおたとしまさ氏の記事>

ようやく、ベビーカーたたまず乗車OKに。公共交通機関でルール化(2014.4.7UP)
https://fqmagazine.jp/8371/babycar-2/

我が子の入学式に参加するために勤務先の学校の入学式を欠席した高校教諭の件の本質(2014.5.5UP)
https://fqmagazine.jp/10482/oota2/

「根拠のない自信」こそ、育てよう(2014.6.2UP)
https://fqmagazine.jp/11729/oota3/

育休取得より大事なこと(2014.7.7UP)
https://fqmagazine.jp/13514/oota4/

「対等」よりも「主従」で子育て夫婦円満(2014.8.5UP)
https://fqmagazine.jp/14527/oota5/

なぜ、男の思考はいくつになっても“小4”なのか(2014.9.2UP)
https://fqmagazine.jp/16599/oota6/

「仕事にも役立つから育児を」という「悪魔の誘惑」(2014.10.7up)
https://fqmagazine.jp/18959/oota7/

パパ友の輪はなぜ広がりにくいのか(2014.11.4up)
https://fqmagazine.jp/20760/oota08/

帰省のトラブルにご用心!(2014.12.2up)
https://fqmagazine.jp/22617/oota09/

2015年は、目指せ!「ツノ系草食男子」(2015.1.6up)
https://fqmagazine.jp/25058/oota10/

妻に卑下される夫の価値。(2015.2.3up)
https://fqmagazine.jp/26865/oota11/

少年犯罪に対する大人の責任(2015.3.5up)
https://fqmagazine.jp/28474/oota12/

0407_01育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
おおたとしまさの著書一覧

(2015.4.7up)

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