少年犯罪に対する大人の責任
2015/03/04
排除の理論が加害者を育てる
いわずもがな、今回のような被害者をつくらないためには、加害者をつくらないことが最大の予防策だ。加害者をつくらないためには、問題行動を起こした子供を社会から排除するのではなく、社会の大人がスクラムを組んで包み込むことのほうが有効だ。
社会の大人が諦めて、問題行動を起こす子供の手を離してしまったら、その子は社会の中に居場所を見つけられなくなる。反社会的な生き方をするしかなくなる。こうして、“社会が加害者を育てる”。国際社会から排除された国家の残党が非社会的暴挙を繰り広げるに至るのと全く同じプロセスだ。
今回の加害者は明らかに一線を越えてしまった。加害者を加害者にしてしまった社会としての大きな責任を一人ひとりが重く受け止めつつ、私たち大人は、彼を社会的統制の対象にせざるを得ない。しかし一線を越えてしまった加害者への対応と、予防の観点での施策は分けて考えなければいけない。
予防のために必要なのは、「排除の理論」ではなく「包摂の理論」である。
感情が揺さぶられるような事件である。感情的になるなというのは難しい。しかしそれでも、感情に振り回されず、理性的に思考する責任が、大人にはある。
また、少年犯罪件数自体は減少傾向にあることも付け加えておく。社会としてのセーフティネットは確実に進化している。油断はならないが、あまり悲観的になりすぎてもいけない。
最後に、「少年非行の防止に関する国際連合指針」通称「リャド・ガイドライン」の一読をお勧めする。
→英語原文
http://www.un.org/documents/ga/res/45/a45r112.htm
→日本語訳(平野裕二)
http://homepage2.nifty.com/childrights/international/juv_justice/riyadh_guidelines.htm
<おおたとしまさ氏の記事>
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おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
おおたとしまさの著書一覧
(2015.3.5up)