危険をシャットアウトするな
経験を重ねてこそ我が子を守れる
2014/11/10
梅雨も過ぎれば、野外遊びが楽しい季節の到来。つまり、父親が活躍できるシーズンなのだ。 アウトドアにおける父親の在り方を"強き父親JAPAN代表"の鈴木光司さんが伝授!
梅雨も過ぎれば、野外遊びが楽しい季節の到来。つまり、父親が活躍できるシーズンなのだ。
アウトドアにおける父親の在り方を”強き父親JAPAN代表”の鈴木光司さんが伝授!
最近の父親は優しい。随分前から”友達親子”という言葉も耳にする。
確かに子供に対してフレンドリーなのは良い面もあるが、父親にはいざというときに背中で家族を引っ張る威厳が必要。
それが、アウトドアで遊ぶときならなおさら! 野外での家族遊びにおいて、あるべき父親像とは?
父親よ野人になれ! 家族を危険から
守るレーダーは経験から生まれる
そもそも自分はチマチマしたことが大嫌いでね。家族で旅行やアウトドアに出かけるときは、細かい予定はほとんど立てない。それで現地に着いたら、なるべく子供の遊びには干渉しないように、付かず離れずの距離から見守っていた。子供には逞しくなってほしいという気持ちと、いざというときは助けなくてはという気持ちの絶妙なせめぎ合いの中で生まれた距離感だね。
この距離感というのは、夫婦の関係によっても決まってくる。「パパは頼もしい」とママが感じていたら、多少子供をほったらかしでもママは何も言わない。ただ、妻から見て夫が頼りなければ、妻がしゃしゃり出て子供に「これやっちゃダメ」って、過保護になっちゃう。
実は、危険を察知するレーダーの種類が男と女では違う、というのが僕の持論。女性は危険へのレーダーが非常に発達しているため危機を敏感に察知し、すべてシャットアウトして安全を得ようとする。一方男性は、自らの経験値から危険を類推し、安全かどうか判断する。つまり目の前の危険に対しても、経験してみなくてはわからないという気持ちが働くんだ。
特に自分はそういう気持ちが強くてね。3年前の夏、僕が船長で仲間とヨットに乗って日本を航海してたとき、長崎で冷凍の豚角煮まんを買って、みんなで食べたことがあったんだ。そのなかに、冷蔵庫の外に4日間置きっぱなしにしてたものがあって。さすがに真夏だから「ちょっと危ないかな」と思ったんだけど、食べてみようと思ってね。仲間は「やめてください」って騒いでたな(笑)。で、一口食べたら「こりゃ腐ってる」と直感したんだけど、とりあえず全部食べてみた。自分の感覚が正しいかどうか、試したかったんだ。結果? 案の定、腹を壊したよ(笑)。でも、鹿児島の島で2回トイレに行ったら、もうケロリとしてたね。
こういった経験を重ねることで、さらに危ないゾーンの匂いがわかるようになる。すると、僕は危険の絶妙なラインを察知できるわけで、仮に遭難しても家族を生存に導ける確率は高い。やっぱり父親は自然の中では”野人”であるべきなんだ。危険を経験し、類推することで、子供を適度に放っておけるし、同時に安全も確保してあげられる。ただし、豚角煮まんのマネはしないように。タンパク質系の腐りは本当にヤバいからね(笑)。
<作家 鈴木光司の男塾>
第一回 モテる男は夫婦関係も円満モテない父親は山に行け!
第二回 子供の才能を伸ばすために、最初から諦めちゃいけないが、見極めは肝心
第三回 「イクメン」を自認するものは”テーマ”を持って子育てすべし
第四回 浮気はボス猿だけに与えられた特権……で、あなたは本当にボス猿?
第五回 「家族のために仕事を犠牲」はうっとうしい子育て中の父親こそガンガン上を目指せ!
第六回 溺愛されれば、子供はポジティブなオーラを放つそういう子がたくさんいればいじめは減る
第七回「愛のムチ」は「ただの無知」言葉を尽くせばしつけはできる
PROFILE
鈴木光司
1957年生まれ。作家。2人の娘を持つDAD。1990年「楽園」(新潮文庫)で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。その後「リング」「らせん」(ともに角川ホラー文庫)が大ヒット。育児の経験を活かし、「少子化への対応を推進する国民会議」「東京都青少年協議会」の委員も務める。
※FQ JAPAN vol.26(2013年春号)より転載
Photo >> HAYATO IMAI Text >> TOSHIMASA OTA
(2014.10.21up)