アメリカ大統領バラク・オバマ「父親不在はこの国の流行り病」
2013/08/31
アメリカにおける“父親不在”はこの国の流行り病だよ

マリアは妹のサラと母のミシェルとホワイトハウスを訪れたとき、伝説のリンカーンのベッドルームを発見した。「私はあの大きな机に座るわ!大きな考えが浮かぶかもしれないでしょ!」。さすがのバラクも、娘の口から出た、この思いもしなかった発言には驚いたという。
マリアにエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言にサインをした机で宿題をさせるかどうかには悩んだが、バラクもミシェルも2人の娘に家事を手伝わせることについてはあらかじめ決めていた。それはフルタイムのスタッフがいるホワイトハウスでも同じこと。妻ミッシェルはこう語る。
「私はスタッフの方に『身の回りの整理整頓に関しては、境界線を引かなければいけない』と伝えました。ベッドを整えたり掃除をしたりするくらい自分でできないとね」。
新しくオバマ家に仲間入りした子犬のフンの後始末をするのも、もちろん娘たちの仕事だ。「そのことについてはもう話してる。ホワイトハウスの芝生を汚してほしくないとね。彼女たちには自分の仕事はきちんとしてもらわないと」。ただし、この少女たちはお手伝いには慣れている。なぜならオバマ家では、以前から家事を手伝うことの対価としてお小遣いを与えていたからだ。
「マリアが自分に与えられた仕事をすれば、1週間に1ドル渡していたよ。私はいつも出張しているから、よく『10週分たまってる!』なんて言われるんだ。つまり彼女がお小遣いをもらえていなくても、自分の仕事は続けているということ。彼女が約束を実行しているのに対して、私は約束を守れていない。それに罪悪感を覚えたよ」。
ミシェルが語る父としての義務
「いてほしいときにいてくれること」
この2年間「98%の時間」を外ですごさなければならなかったバラクだが、父としての義務は、残りの2%のなかでほとんど果たせているとミシェルは言う。「彼の義務は、いてほしいときにいてくれること。保護者面談、ピアノの発表会、娘たちにとって大事なイベントに出席してくれることが大切なの。彼女たちの大事なイベントに彼が来なかったことなんてほとんどないのよ」。
バラクは選挙運動中、よく育児について話し、「アメリカにおける”父親不在”はこの国の流行り病」だと非難した。特にアフリカン・アメリカンの父親たちの間では、50%以上の黒人の子供たちはシングル・ペアレントの家庭で育っている。「相当の数の父親が家庭においてM・I・A(戦闘中行方不明)で、またはAWOL(無許可で離隊)状態だ。彼らは生活を失い、家庭をも失っている」。
昨年の父の日に彼はこうスピーチしている。「彼らは男ではなく少年のようにふるまい、責任を放棄している。そのため、我々の家族の基盤は弱くなっている。父親たちに気づいてもらいたい。責任は女性が妊娠したときに終わるわけではない、と。それだけでは父親にはなれない。子供をつくる能力があなたを男にするわけじゃない。どんな馬鹿でも子供はつくれる。だが、つくれば父親になれるというわけではない。子供を育てるという勇気をもつことがあなたを男にするのだ」。
同じ演説の中で、自分に父親がいないことが、どれだけハンディキャップになったかを語った。「家庭に父親がいないことで、自分のなかで犠牲になった部分があった。自分をガイドしてくれ、そしてリードしてくれる男性像が家にいないことで心に穴があくんだ。そして何年も前、そのサイクルを破るのは自分の責任なんだと気づくことで解決した。もし人生において、なんにでもなれるのなら、子供にとってよい父親になろうと思っている」。