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サラヤが守る熱帯雨林の命と親子の絆。いま知っておきたい子どもの未来と環境のこと

赤道直下に位置するボルネオ島。オランウータンをはじめ貴重な野生動物が暮らす熱帯雨林は、私たちの快適な暮らしと引き換えに失われようとしている。森の命と未来を守るために何ができるのか。アクションを続けるサラヤと現地を訪れ、一緒に考えた。

メイン画像:子どもの頃に孤児として保護され、リバビリ施設で育ったオランウータン。施設から自由に行き来できる野生の森で伴侶を見つけ、母となった。

便利なパーム油の落とし穴
森と命、未来を守るには?


日の出とともにボートを出して、動物たちを探す。森からはボルネオゾウの群れの声が聞こえた。

果てしなく広がる熱帯雨林。ボートで川をゆくと立派な鼻を持つテングザルが飛び跳ね、森からはゾウたちの声が響く。赤道直下、マレーシア、インドネシア、ブルネイ領からなるボルネオ(カリマンタン)島はオランウータンをはじめ貴重な野生動物が暮らす“命のゆりかご”のような場所だ。


夜の森で出会ったメガネザル。世界で3番目に大きいボルネオ島は地球上の生物種のおよそ5%が生息する生物多様性の宝庫

「川沿いに整然と木が並ぶ森があるでしょう。あれはアブラヤシの農園です」。ヘリコプターに乗って上空から森を観察するツアーの最中、サラヤの環境調査研究員・中西宣夫さんが言う。一見すると森だと思っていた緑の多くがそうであることに気づき、言葉を失う。果てしなく広がっていたのは森を伐採して作られた農地だった


ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島だけに生息するオランウータン。急速な森林の消失により過去100年でおよそ80%が減少したと考えられている。

パーム油という言葉を知っているだろうか。アブラヤシの果肉を原料とするパーム油は世界で最も多く使われている植物油。食用油として、スナック菓子やインスタント麺の揚げ油、化粧品や洗剤など多くのものに使われている。もちろん赤ちゃん用品も例外ではない。パーム油の一大生産地であるボルネオ島では1990年代以降、急速にアブラヤシのプランテーション(大規模農園)が拡大し、過去半世紀の間に50%以上の森が失われた。ボルネオゾウなど多くの生き物が絶滅の危機に瀕すると同時にプランテーションで働く人々の過重労働や低賃金の問題なども深刻化してきた。


パーム油の原料となるアブラヤシの果肉。化粧品や洗剤に使われるのは核油という白い部分。


熱帯雨林を縫うよう流れるキナバタンガン川周辺は多くの動物たちが暮らすエリア。リーダーのオスだけが大きな鼻を持つテングザルの群れが朝の食事していた。彼らのテリトリーのすぐそばまでプランテーション開発が迫っている。

そんな現実を直視し、解決策を見出そうとしているのがFQ読者のパパ・ママにおなじみの〈アラウ.ベビー〉をはじめ〈ヤシノミシリーズ〉などを展開するサラヤだ。“手肌と地球にやさしい”洗剤としてサラヤを代表する「ヤシノミ洗剤」には原料のひとつにパーム油が使われている。排水による環境負荷が格段に低く、手肌への刺激も少ないと人気のロングセラー商品だが、2004年、サラヤはボルネオ島で起きている現実を知り、大きな決断をする。すぐに現地を視察し、森や動物を傷つけず、人権にも配慮した持続可能な形でパーム油を生産・利用する方法を探し始めたのだ。

そのひとつが環境や人権に配慮して生産されたという認証(RSPO認証)を取得した持続可能なパーム油を使うこと。もうひとつが自社製品の売り上げの一部を使って、森や野生動物の保全のための活動を行うことだ。


アブラヤシの収穫風景。近年は「RSPO」に賛同する農家や企業も増え、持続可能な栽培が広がっている

「現地の環境保全団体と協力して熱帯雨林の一部を買い戻し、農園によって分断された森をつなぐ『緑の回廊』づくりや、様々な理由で傷ついたり、親を失ったりしたボルネオゾウを救出し、保護する活動にも力を入れています。ボルネオ島の森が持つ魅力や価値を高め、それを知ってもらえたら、森を守ろうと思う人もきっと増えると思うので」と中西さん。「RSPO認証マークのついた製品を選ぶ、それだけでも未来に繋がる大きな力になる。この美しい自然を子どもたち、もっと後の世代に残したい。そんなシンプルな動機でもいいんです」と力を込める。


川を渡るボルネオゾウの群れ。本来の移動ルートにプランテーションができたため、森をさまよう群れも少なくない。後ろに写っている吊り橋は川を渡れないオランウータンの移動を助けるために現地の環境保全団体とサラヤが協力して設置したもの。

ツアーの途中、地元の動物園や保護施設で親を失ったオランウータンやボルネオゾウなど多くの動物の子どもに出会った。森林の破壊によってすみかを追われ、人間との衝突や軋轢によって親や家族を失うケースも少なくないという。保護施設で育ったり、そこで生まれたりした子はほとんどの場合、野生の世界に戻ることはできない。


森の減少により意図せず人間の集落へ入ってしまうボルネオゾウも少なくない。動物園で保護されたゾウの足には狩猟用の罠にかかった傷痕が残っていた。


ボルネオゾウはボルネオ島にしか生息しない固有の種。サラヤは様々な理由で傷ついたり親を失ったりしたゾウを救出・保護する活動を支援している。

プランテーション開発は森だけでなく、親子の暮らし、絆もまた分断してしまう私たちの快適で便利な暮らし、そして我が子のために使うアイテムの裏にそんな現実があることをそのままにしておいてよいのだろうか。大切なのは今、自分にできる行動を起こすこと。その小さな一歩から未来が変わっていくことを信じたい。

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