環境配慮は健康にもつながる?睡眠の質を上げるサステナブルな寝具の選び方
2023/05/24
人にとって必要な睡眠時間は成長とともに変化し、大人は7〜9時間。人生の3分の1を寝室で過ごしているということになる。寝室をサステナブルな空間にすることが自身の健康と地球の環境の両方にとって大切だと、イギリスの持続可能な製品ブランド「Beyond Bamboo」の立役者エミリー・ドウ氏が説明する。
寝室の快適さは
何で決まるのか?
それは、ベッドやリネンなどの寝具、その他装飾品などの備品のチョイスだ。では、どのような選び方をすれば、自分の健康のためにも地球の環境のためにも最適なのだろうか?
マットレス
最近では、持続可能なオーガニックのマットレスを製造している会社が海外を中心にたくさん出てきた。 ただ、マットレスが劣化した際にどう処理すれば良いのかという疑問は多くの人が持っている。再利用やリサイクルができるのか…?
イギリスで寝具を専門にリサイクルする業者「The Furniture Recycling Group」によると、イギリスでは毎年750万個のマットレスが廃棄されているという。新しいマットレスの購入には大体数万円の費用がかかるため、古いマットレスの処分にそれ以上のお金は払えないと感じるところではあるようだ。
イギリスで睡眠の質改善のために活動する組織「Sleep Council」は、7年ごとにマットレスを交換することを推奨している。それ以上使うと、2万時間以上使用することになり、 合計2555泊に相当する。成人が毎晩平均2〜300mlの汗を排出し、毎年4〜500gの死んだ皮膚細胞を排出していることを考えると、2555泊分の量は恐ろしく感じるだろう。ただ、良質なマットレスだと、柔らかくなってたるんだり、サポート力が低下したりすることなく最大10年間使用できるものもある。良いマットレスを購入して定期的に掃除すれば、10年は使用できるのだ。マットレスを必要最低限の頻度で交換することは、粗大ごみの削減に繋がる。
それでもいずれは買い替えが必要になるわけだが、どのように処分するのがベストだろうか。マットレスの処分について調べてみると、マットレスを無料で処分する方法はそう簡単には見つからないかもしれない。また、ほとんどの場合リサイクルか再使用できるにも関わらず、多くが埋め立て地行きだ。自分自身でマットレスの寿命や手入れ方法、責任ある処分の仕方について、事前に情報収集することも重要だ。
処分の仕方は様々だが、中には費用が高くついたり、環境に悪影響を及ぼしたり、違法な処分の仕方もあったりするので注意が必要。必ず詳しく調べて、倫理的で環境に配慮した処分方法を選択するようにしたい。
マットレスを処分する一つの良いやり方として、新しいマットレスを購入する店に、古いマットレスをリサイクルしてくれるかどうか聞いてみることだ。マットレスのリサイクル方法、もしくは回収した後どう処理するのかも聞いてみよう。他の方法としては、地元の自治体が運営する粗大ゴミの回収サービス、もしくはマットレスのリサイクルショップを自分で探してみよう。ここでもマットレスを回収した後にどう処理するのかを聞いて、信頼できる業者でのみ処理してもらうようにしよう。
マットレスは少なくとも一部はリサイクルが可能で、すべてリサイクル可能な場合もある。リサイクルの過程では、マットレスはリサイクル可能な部品に分解され、バネは溶かして新しい金属製品として使われる。布などの素材はカーペットの一部として使用されたり、廃棄物として送られて発電のためのエネルギーに変換されたりすることで活用される。
寝室の家具
ベッドや物入れ、タンスなどの寝室の家具を買い替える際には、まずはリサイクルショップやフリーマーケットなどで探してみるのも良いだろう。
また、家具を新しくする際に考えたいのが、古い家具のアップサイクルだ。アップサイクルとは、本来のものに新しいデザインやアイデアを加えて、別の新しい製品として生まれ変わらせること。それが難しい場合は、チャリティーショップで古い家具の引き取りをお願いするか、その家具を購入した店にリサイクルや寄付ができないか相談してみよう。サーキュラーエコノミーの視点を取り入れ、廃棄物を削減するための1つの方法だ。
寝具と室内装飾品
交換が一番簡単でサステナブルな寝室アイテムは、布団やブランケット、シーツなどの寝具だ。前と同じルールで、必要な時にのみ購入することが前提だ。ただ、寝具などのアイテムは他の家具と比べても割りかし頻繁に買い換えが必要になってくるだろう。
そんな時にはぜひ古いアイテムは再利用するようにしたい。例えば、古い布団はダストシートとして、犬の毛を防ぐためにソファの上にかぶせたり、ブランケットは掃除用の雑巾にカットしたり。リサイクルショップで引き取り・買い取りしてもらうのも一つの手だ。あるいは、動物保護センターでは、寝心地の良い柔らかいものを必要としており、古い寝具を使用するケースもあるので再利用してもらえるか聞いてみても良いかもしれない。
寝具を新しくする場合は、中古品を買うのではなく新品を購入する場合が大抵だろう。新品を買うにしても、オーガニックのヘンプやリネン、コットン、ブナ(モダール)、ユーカリ(リヨセル/テンセル)などのサステナブルな素材で作られた寝具を探してみたい。こういった素材は、ケミカルフリーで安心かつ寝心地も快適、さらに抗菌性・吸湿性・耐久性に優れているため長持ちしてくれるなど、多くのメリットがあるのだ。
また、布団と枕の素材選びにも注意したい。例えば、実は羽毛枕や羽毛布団を作るために、動物がかなり残酷な目にあっているという事実を考えると、羽毛は避けたいところ。動物への残虐性がないかを確認した上で購入しよう。さらに、羽毛以外の素材の場合でもサステナブルでないプラスチックベースの素材で作られていることも多い。
また、ポリエステル繊維は、実は健康と環境に有害な素材であるにも関わらず、マイクロビーズと同様に“ビーガン”として宣伝されている場合があるので注意が必要だ。なるべく天然な素材でつくられている、サステナブルな寝具を取り扱っているショップを見つけてみよう。
すでに健康と環境の両方を考えている人ならば、今回のサステナブルな寝室をつくる方法は至ってシンプルだと感じたかもしれない。「普段と同じように買う」のではなく、少し立ち止まって、よりサステナブルな選択ができないか是非検討してみてほしい。
PROFILE
エミリー・ドウ(Emily Doe)
イギリスのサステナブルな製品やサービス、サプライヤーのグローバルコミュニティである Beyond Bambooのブランド貢献者。Beyond Bambooは、消費者向け・B2Bサプライヤー向けサイトの運営、ナレッジハブの提供、またトリプル ボトム ライン レポートに専念するチームメンバーにより、人々の生活や社会に貢献している。
HP:www.beyondbamboo.online
FQ JAPAN VOL.66(2023年春号)より転載