互いに認め合うのが大切! 子供に”家族のチームワーク”を伝える方法
2018/09/29
家族のチームワーク
があってこそ成り立つ
家族の糧を得るという仕事は、家族のチームワークがあってこそ成立することである。たとえば妻が専業主婦である家庭であったとしても、その妻が夫をしっかりマネジメントしてくれるからこそ夫は仕事に専念でき、しかも子供たちが素敵な笑顔で励ましてくれるからこそ明日も頑張ろうという意欲が湧いてくるのだ。夫1人の力で稼いでいるわけではないのだ。夫は家族に支えられてパフォーマンスを発揮しているのであり、家族の代表としてサラリーを受けとっているのである。
チームスポーツをした経験のある人ならわかるだろう。例えばサッカー。フォワードが得点をしたからといって、フォワードの力だけで試合に勝てるわけではないのと同じだ。ディフェンダーはもちろん、補欠選手やマネージャー、サポーターなどピッチ上にいないメンバーまでもが一丸となって初めてフォワードが得点し、試合に勝つことができるのである。
このままスポーツに例えるならば、次のようにも表現できる。ダブルインカムというのは、夫婦の両方がオフェンスもするしディフェンスもするという陣形のこと。シングルインカムというのは夫婦のどちらかがオフェンスで、どちらかがディフェンダーという役割分担を固定化した陣形のこと。
前者は、どちらか一方が機能不全におちいったとしても、もう片方がオフェンスもディフェンスもかろうじて続けることができる。しかし後者においてはどちらか一方が機能不全に陥った瞬間にゲームが成り立たなくなってしまうという違いがある。その意味において、ダブルインカムのほうがリスクに強い。
ダブルインカムの夫婦が
陥りやすい罠
しかしダブルインカムの陣形をとったときに怖いのは、夫婦が得点王争いを始めてしまうことである。
最終目標は試合に勝つことであって、夫婦間で得点を競うことではない。それなのに、「夫のほうが稼ぎが多いから、夫のほうが偉いとか家事分担は少なくていい」とか「稼ぎが一緒だったら家事も平等にしよう」などという発想になってしまったら、「誰のおかげでメシが食えていると思っているんだ」と言う昭和のオヤジとほとんど同じ思考回路である。結局「金を稼ぐ奴が偉い」という浅はかな価値観を子供に刷り込むことになってしまう。
大事なことは
他人を認め合う文化
要するに大事なのは、ダブルインカムかシングルインカムかではなく、家族を1つのチームとして、「得点」以外の隠れたファインプレーも認め合う文化が育てられるかどうかである。大雪の翌朝に、公道の雪かきをするひとたちを、本当のヒーローだと思う感性が育つかどうかである。
シングルインカムの家庭で、子供から「パパが働いているからお金がもらえるんでしょ」と言われたら、前述のような理由で「パパ1人が稼いだお金じゃなくて、家族みんなで稼いだお金だよ」と教えてあげてほしい。
ダブルインカムの家庭で、子供から「パパとママと、どっちがたくさん稼いでいるの?」と聞かれたら、「パパもママも1人では今のお給料を稼ぐことはできないよ。お互いに協力して、しかもキミが2人を応援してくれているからお給料をもらうことができるんだ。だからどっちが多く稼いでいるなんてことはないんだ。みんなで稼いだお金だよ」と教えてあげてほしい。
そうすれば、どんなコミュニティに入っていっても、常にチームプレーを理解し、みんなからも支えてもらえるひとに育つはずだ。
PROFILE
育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ TOSHIMASA OTA
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
FQ JAPAN VOL.30より転載