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考える育児。大規模定住化が生んだ差別と尊敬の原因

父親は永遠にサポーターで終わるのか? 社会学的視点で子育てについて語る、宮台真司の「オトナ社会学」。連載第1回は『「家出」ができる子に育てよう。』法と言葉の奴隷とは何か。『ウンコのおじさん』の著者であり、首都大学東京の宮台真司教授に話を聞いた。【Part3】

大規模定住化が生んだ
差別と尊敬の原因

最新の学問的知見でいえば、人間が言葉を獲得したのが4万年前。当時、ネアンデルタールなど7~10種の人類がいましたが、すべてが歌を歌っていたと考えられます。ところがその中でサピエンス種だけが、ストリーミングがぶちぎれになってボキャブラリーが生まれて言葉が誕生したことが分かっています。

しかし、それ以降の言葉の使い方はずいぶん違う。1万年前の定住化が大きな転機となります。それ以前は「遊動」です。「遊牧」とは違います。遊牧は定住民が存在することを前提に交易の役割を果たします。遊動民は150人がマックスのユニットで行動しており、そこに法はありません。仲間意識と生存戦略だけで成り立っていて、ほかの人より高度ではなく、サルなどの霊長類と同じです。

ところが1万年前に法ができました。それは定住するようになって、いろいろなものをストックするようになったからです。「使っていなくても私のもの」という概念が承認されることになりました。



どこの定住社会も実は遊動民の末裔ですが、その定住者は必ず遊動民を差別するようになります。理由を挙げるとすれば、遊動民には所有の概念がないからです。でも、それが尊敬の原因でもあります。お祭りには彼らを呼んでファシリテーター、祭りの重要な執行役をゆだねるようになります。それはどこの社会もまったく同じです。

その時の言葉は、一口で言えば神話的(イソロジカル)、隠喩(メタファー)、換喩(メトノミー)といったものを前提にしており、ロゴス=ロジックではありませんでした。それが一般的には3000年前、BC5世紀くらいには文字言葉、いわゆる初期言語になります。

初期言語は1万年前くらいにも象形文字などがあり、すべて宗教的なものでした。これが3000年前に文明化=大規模定住化するようになり、神話的な、宗教的な使い方ではなく、統治のために書き言葉が使われるようになりました。

それ故に、文脈を共有していなくてもメッセージが伝わるようになりました。それで大規模統治が可能になり、大規模定住社会につながります。それ以降、どこの定住社会でも例外なく、神話的、メタファー、メトノミーな言葉が正しいのか、文脈に依存しない書き言葉が正しいのか、必ず価値の対立が起こります。

BC5世紀、旧約聖書が誕生したころはギリシャ的なものがメッセージで、一神教的なものがロゴスが正しいことを代表していた。ずっとこの対立が続いています。

そして現実社会は、全体としてロゴス、プログラムが支配する法の領域になっています。それだけならまだしも、法の外側、法外に存在するカオスを許さないようになっていく。つまり法の奴隷になっていったのです。言葉の使い方の変化と同じです。

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