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「原点は赤ちゃん」汐見教授が語る、アクティブ・ラーニングの本質とは?

2020年より、小中高校の次期学習指導要領に導入される“アクティブ・ラーニング”。家庭でパパが実践できる方法はないのだろうか? 東京大学名誉教授に聞く、パパができるアクティブ・ラーニングの実践法。

記憶するだけの知識より
生きるための深い学びが必要

教育玩具の輸入・開発・販売と遊びの環境開発を行う株式会社ボーネルンドは、“アクティブ・ラーニング”が2020年以降、小中高校の次期学習指導要領に導入されることを受け、去る2月8日にプレスセミナーを実施した。
今回のテーマは「幼児教育や子どもの遊び環境視点から捉えたアクティブ・ラーニングの実態や重要性」。東京大学名誉教授・白梅学園大学学長の汐見稔幸先生、「認定こども園OURS」の米倉和昭園長が登壇し、遊びやアクティブ・ラーニングに関してそれぞれ講演を行った。

汐見先生は、「主体的、対話的で深い学びがアクティブ・ラーニングである」と定義。そして、「答えが決まっていないことが溢れてくる社会になると、国民のすべてが提案できる力、企画できる力をもたなくてはいけなくなります。そういう社会になると、学力の高度化が必要です」と、次期学習指導要領にアクティブ・ラーニングが導入される理由を説明した。また、「覚えているけれど融通が効かない知識ではなく、それぞれが深く結び付いているような知識、そういう学力や生きる力を身に付けるために、赤ちゃんの時から学びのスタイルを変えていかなくてはいけない。そうした力を身に付けることができるのが遊びです」と、「遊び」の意義を語った。

大人が敷いたレールの中で身体を動かしても、
本当の意味では子供は育たない

さらに、山梨大学の中村和彦先生の研究で「最近の5歳児の運動能力は25年ほど前の3歳児とほぼ同じ」であるという調査結果や、鹿屋体育大学森司朗教授代表グループの研究として子供の運動能力の全国調査結果を紹介。その結果とは、

1. 園庭の面積が広いほど、子供の運動能力は高かった。
2. 運動指導を行っていない園のほうが、行っている園よりも点が有意に高かった。
3. 積極的に運動指導をしているほど、また一斉指導をしている度合いが高いほど、点は低かった。
4. 子供が園で運動するとき、子供が運動の種類やルールを決める程度が高いほど点が高かった。

というもの。これを受け、汐見先生は「大人が敷いたレールの中で身体を動かしても、本当の意味では育たない」と分析。そして、「子供の感情がポジティブに働き、それを受けて身体の各部が活性化し、心の求めに応じて身体が動くことが育ちにとってとても大事。変化、素材が豊かな場での、子供の自己選択による自由な遊びが大事」であると解説した。

PROFILE

汐見 稔幸

東京大学名誉教授・白梅学園大学学長。大阪府堺市生まれ。東京大学教育学部卒業後、1981年同大学院博士課程を修了、東大教育学部専任講師、助教授、教育学研究科教授を歴任。2007年3月に退職し、同年4月より白梅学園大学教授・副学長に就任。同年10月より学長。専門は教育学、教育人間学、育児学。著書に「0~3歳 能力を育てる 好奇心を引き出す」(主婦の友社)、「子どもの身体力の基本は遊びです―汐見先生の素敵な子育て」(旬報社)など。

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ボーネルンドで、代表取締役社長を務める中西弘子さん

「就学前の幼児教育の場では“幼児自ら行動する力”を育むことが前提にあるという意味で、アクティブ・ラーニングはすでに長い間日常的に実践されてきたと言える。そこに小中高校でアクティブ・ラーニングを成功させるためのヒントがある」という。ボーネルンドでは、子供が遊ぶ機会を増やすために、親子一緒に様々なあそびを体験できる室内あそび場「キドキド」(写真上)を2004年からスタート。現在全国20ヶ所、年間280万人以上の親子が訪れている。

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認定こども園OURS園長・米倉和昭氏

「認定こども園OURS」(写真上)は、千葉県で60年にわたって医療に携わり、電子カルテを日本で初めて導入するなど、医療界で先進的な取り組みを行ってきた亀田グループが、2016年4月に初めてオープンさせた認定こども園。365日開園し、夜間保育や休日保育など、不規則なシフトで働く方のニーズにも応える子育て支援事業を提供。子供の好奇心を尊重した体験を通じて、無限の可能性を育んでいる。

>> 次ページ 汐見先生が教える「家庭でできるアクティブ・ラーニング実践法」

 

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