【ジョニー・デップ】”元祖イクメン”世界一カッコいいDAD
2013/08/30
枠にとらわれない役選びと個性溢れる演技力で、ハリウッド、いや世界で最も人気のある俳優・ジョニー・デップ。そんなトップ俳優の顔を持ちながら、どうしようもないほどの子煩悩として知られる。「あまり長い間、家族と離れたくないんだ」と語るジョニー・デップが父親としての自分、そして家族への愛を語ってくれた。
この文章は2006年12月発売「FQ JAPAN」創刊号で掲載された内容です。
妻・ヴァネッサがジョニーの人生を救った
ジョニー・デップは根っからクールな男だ。”ミスター・ドンキー・ペニス“なる偽名でホテルにチェックインしてしまうセレブなんて、ジョニーくらいのもの。ジョニーは真顔で言う。
「だって、モーニングコールで名前を呼ばれるのが楽しみだからさ」。実にごもっとも。
人生は40歳から始まるというけれど、ハリウッド・スターのジョニーの場合、人生は35歳のあの日に始まった。娘のリリー=ローズ・メロディ(以後リリー)が生まれた日だ。
「1999年の5月27日以前に僕がやっていたことなんて、ぜんぶ実体のないまぼろしみたいなものさ。娘が生まれて、僕の人生が始まったんだ」。
ほとんどささやきに近い声で、ジョニーは語る。ジョニーはフランスのポップ・シンガーで女優、そしてシャネルのイメージモデルもつとめたヴァネッサ・パラディと、たちまち恋に落ちた。当時ヴァネッサは26歳。二人が出会ったのは8年前、パリのとあるレストランだった。「ヴァネッサと出会って、35歳で自分の家庭を築けた」。
「ヴァネッサが僕の人生を救ってくれた。僕に本当の人生を与えてくれたんだ」。
ジョニーはうなずきながら、タバコを探して胸ポケットを軽く叩く。「ヴァネッサに出会えたことを、神に感謝しない日はないよ」。典型的なひと目ぼれだったんだ、とジョニー。
「初めて見たとき、ヴァネッサはレストランの向こう側にいた。ヴァネッサはこっちに背中を向けていて、僕は『あんなにおそろしくきれいな首筋は、見たことないぞ』って思ったんだ。で、ヴァネッサがふり返って……というわけ。もうメロメロだったよ」。
ホテルの部屋を破壊したり、パパラッチを殴ったりの日々は、もう遠い昔のこと。今は家庭という無上の喜びに満ちた毎日を過ごし、はからずも映画スターとなった43歳のジョニーは、7歳の長女、リリーとバービー人形で遊んだり、4歳になる長男、ジャック・ジョン・クリストファー・デップ とおもちゃのダンプカーで遊ぶのが好きな、献身的な父親に変わった。「子供たちのおかげで、若さを保てるんだ」。ジョニーは冗談めかして言う。
「独身時代で惜しいものは何もないよ。子供が生まれたら最後、ずっと睡眠不足になる。でもこの先寝る時間はいくらでもあるさ。睡眠と引き換えに得るものがあるなら、素晴らしいじゃないか。僕は父親として過ごす一分一秒が、すごくいとおしいんだ」。
ジョニーの浅黒い肌や、何か考え込んでいるような顔つきは、母方のチェロキー・インディアンの血を受け継いだものだ。映画1本につき数億円単位のギャラを稼ぐ、映画界を代表するスターだが、インタビュー当日はグランジ・ファッションで現れ、スターというよりホームレスのようだ。
取材日も黒のぴったりしたウールの帽子を黒髪の上からきっちりかぶり、厚底メガネを鼻に乗せ、ネルシャツと穴のあいたジーンズにグレーのベストで決めている。でもこんな格好をしても、ジョニーはめちゃくちゃにかっこいい。手首には、娘のリリーお手製の、カラフルなビーズのブレスレットをつけている。オスカーにもノミネートされたジョニーだが、いちばん気楽に話せるのは、映画でも他の話題でもなく、子供たちのことだ。
ジョニーはタバコを手探りし、結局ジーンズの後ろのポケットから小さなタバコの包みと紙を取り出し、慣れた手つきできっちり細長く紙タバコを巻く。そして笑いながら話しはじめる。
「おかしいんだよ。1歳くらいになった子供って、一緒に歩いてるとミニチュアの酔っぱらいみたいなんだ。しっかり手を握ってないと、物にぶつかったりする。酔っぱらいみたいに笑ったり、泣いたり、おもらししたり、吐いたりするんだよ」。