宮台真司氏の「モテ教育」!同級生が思わず好きになる子供を育てるには…?
2019/06/13
時代を経るにつれ、言語へ依存し、「法外のシンクロ」ができない大人が増えた。その原因は幼少期の教育にある。その時、必要になるのが「モテ教育」だ。首都大学東京の宮台真司教授の「オトナ社会学」第6回目[後編]。
人から愛される魅力的な人を
育てるのが一番
今は言外や法外が閉ざされつつあります。しかし人の心や身体性は言内や法内に留まらずに溢れ出ているものです。その意味で感受性が豊かな人ほど生きにくくなりつつあります。それは恋愛ワークショップをすれば分かります。女は男よりも劣化が遅いのですが、劣化していない女ほど過去や現在の恋愛に不全感を覚えています。だから劣化していない女ほど妥協しないのでステディを見つけにくくなっています。
過去30年を観察すると男は女より数年劣化が早い。「法の奴隷」「言葉の自動機械」「損得only人間」が女より多く、そのぶん「損得より正しさ」「損得より愛」から離れています。理由の一つは、社会が男に有利にできている分、女よりも勝ち負けゲームに促され、勝っていれば何でも許されるような育てられ方をすることです。社会で自己実現しにくい女が、母親になって子供をダシにした代理満足を求めることもあります。
でも現実を見る必要があります。年間の在宅死は15万人ですが、うち孤独死が公的には3万人で、一説には5万人を超えます。孤独死の8割が男で、女は翌日か翌々日に発見されるのですが、男は近所に腐臭がしてから発見されます。SNSで連絡が途絶えても来訪者がいなければ孤独死します。だから男の孤独死は20歳代から始まり、タワーマンションの金持ちでも孤独死します。勝ち組にしては惨めすぎる死に様です。
人から愛される魅力的な人であれば孤独死はあり得ません。男にはそういう人が少ないわけです。ならば男女を問わず「人から愛される魅力的な人を育てる」のが一番です。「言葉の自動機械」「法の奴隷」「損得only 人間」から最も遠いのが「人から愛される魅力的な人」です。もし自分が子供と同級生だったら、思わずスキになってしまうような人に育てるとよいでしょう。
モテ教育の神髄は
「どんな女でも寝とれるような男になれ」
日本以外の先進国における標的な教育では、勉強ができようができまいが、愛と正しさを貫けれる大人になれれば、人から尊敬される立派な人として人生を送れると教えます。ところが日本の親は、こんな成績だと負け組になるぞと教えます。勝ち組が社会の上位1割だとすると9割は負け組です。子供がそれを予感するから、『自分には価値ある』と答える高校生は米国57% 、中国42%なのに、日本は8%(日本青少年研究所)。
でも上位1割に入れたとしても多くが「勉強田吾作」になります。勉強のために遊びや恋愛を犠牲にしてきた人たちは、「いい就職」ができても、自分より遙かに仕事ができるのに自分よりも遊びも恋愛もできる人を見ると、嫉みで激しくディスるようになります。それが勉強田吾作です。勉強田吾作は「勝ち組」なのにモテませんが、だからこそ劣等感の埋め合わせのためにネトウヨが多く、多分一人寂しく死にます。
「モテ教育」の真髄を、誤解を恐れずに言えば、男子であれば「どんな女でも寝取れて愛される男になれ」、女子であれば「どんな男でも寝取れて愛される女になれ」です。「言葉の自動機械」「法の奴隷」で浅ましくポジション取りに勤しむ「損得only 人間」は、まともな相手にモテないし、親になっても子供に尊敬されません。「人から愛される魅力的な人を育てるのが一番」という意味をお分かりいただけたでしょうか。
PROFILE
宮台真司 SHINJI MIYADAI
1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など著作多数。
Text >> KOUSUKE OONEDA
FQ JAPAN VOL.51より転載