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子育てしやすい環境つくりが地方創成のカギ?父親自身のサステナブルのためのプチ移住

これまで“イクボス”をテーマに語ってきたファザーリング・ジャパン(FJ)の代表・安藤哲也さん。今回からは「父親行動論」として連載をスタートさせる。自身の“プチ移住”を通じて見えてきた地域の課題とは?

人生100年時代を考慮して
プチ移住してみました

イクボスをテーマにした連載を続けてきましたが、今回からリニューアル! 「父親行動論」として再出発します。もちろんイクボス育成は私のライフワークの1つですから今後も取り上げますが、より幅広いテーマでお話していきます。その初回は、私の「プチ移住」について。

私が今回プチ移住を始めた理由はいくつかあるのですが、そのキーワードは「サステナブル」。まずは自分自身のサステナビリティを考えました。私事で恐縮ですが、私は今年の10月に還暦を迎えます。昔なら定年ですが(笑)、今や人生100年時代。あと40年もあるわけです。父親育児をテーマに活動してきましたが、ここでもう一度、自分を進化させたい。今までと違う世界に出てみようと考えていました。

そんな時に出会ったのが『100DIVE』。産業衰退、農家減少、少子化に苦しむ地方にDIVE=飛び込んで、意志のある人を起点に地域の未来を考え、100のローカルビジネスを創り出すというプロジェクトです。大手コンサルと違い、『100DIVE』では、地域の未来を共に考え、共に働く。だから企業誘致や箱物作りではない、地方の土台作りができる。そこに魅力を感じました。

また、私自身は子育てが終わったので、家庭的にも問題はありません。ITの普及により、どこにいても仕事ができる環境も整ってきた。そうしたことから、『100DIVE』のアドバイザーとして5月1日から1ヶ月、まずはプチ移住を始めたのです。

子育て環境を改善することで
地域の土台を築く

従来型の地域創生には、基本的には東京の大手コンサルが入ります。地方議会に頼まれて、通りのよい計画書を作成して、主に企業誘致などを行ってきましたが、その多くが失敗に終わったのは、ご存知の通りです。企業が誘致されても、その土地に若者が増えて、子供が生まれて……とならなければ、労働力不足で事業継承は難しく、地域の持続可能性=サステナビリティは高まりません。

ここで先ほど挙げたキーワード「サステナブル」が出てきます。今回のプチ移住で、河北町を「サステナブル」にしたいと考えたのです。子育てとは、それ自体が次世代=未来を育てるサステナブルな行為。私の経験・知見を活かして、子育て環境を変えていくことにしました。

河北町に限らず、一般的に都会と比べると地方の男性は家事育児への参画が少ない。これは古い習慣を脱することができないというだけでなく、地方の環境も関係しています。地方では今も3世代同居が一般的で、パパの代わりをジジ&ババがしてしまう。もちろん、ありがたいことではありますが、それでは男性が育児から遠ざけられ、父親であることを楽しめません。

4月10日の日経新聞に『地方回帰 女性なお慎重』との記事が掲載されていました。コロナ禍で東京への転入は減少傾向にあるのに、女性だけは相変わらず東京に流入している、というのです。これは地方在住女性の生きづらさと関係しているはずです。若い女性が喜んで住み続ける地域にできれば、河北町は元気になるはず。父親が育児を担えば、女性も活躍しやすい環境が整います。東京はそれが普通になってきましたが、地方はまだまだ。実際、河北町内で暮らす人に話を聞くと、すべてではないですが女性は重要な仕事を任されていない様子が垣間みえました。ここを改善する種まきをしたいと考えました。

そこで早速、子供の日に『絵本ライブ』を実施しました。講演やイクボスセミナーも企画しています。河北町がどう変わっていくのか、皆さん、ぜひ注目してください。

河北町データ

人口 17,497人/6,273世帯(男:8,517人、女:8,980人)

※2022年4月30日現在

山形県のほぼ中央に位置する河北町は、月山や朝日岳、蔵王を望み、山形県の母なる川と呼ばれる最上川と、清流として知られる寒河江川に囲まれており、豊かな自然環境を誇る。町村として日本一の生産量を誇る『さくらんぼ』だけでなく『スリッパ』の生産量も全国一という、実は凄い町。面積は52.45㎢と東京都足立区と同程度だが、人口はわずか1万7,497人(2022年4月30日現在)。ここ50年間で1万人も減少してしまった。


河北町のソウルフード「冷たい肉そば」

 

PROFILE

安藤哲也

1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)。


文:川島礼二郎
写真提供:河北町

FQ JAPAN VOL.63(2022年夏号)より転載

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