注目キーワード

時事・コラム

日本人は子供の未来を考えていない!? たった3%の男性育休取得率にみる深刻な問題

日本の男性育休取得率はたった3%。他の先進国から大きく遅れるその訳は、日本人が抱える根本的な問題にあるという。より良い社会を子供たちへ引き継ぐために親としてすべきことは? 首都大学東京の宮台真司教授が解く。

権力的に義務化し、育休を推進
求められる日本人の民度

小泉進次郎議員が育休を取得したことで男性も育休を取りやすい土壌が醸成されたと思いきや、日本の男性育休取得率はたった3%現状を恥じる人がいないのが問題です。真の意味で日本が先進国になるには、他の先進国との比較で言えば、男性育休取得率が今の20倍になる必要があります。でも下からの意識改革でそれを実現できる可能性はない。

なぜ男性育休取得率が悲劇的に低いのか。結論は日本人の劣等性です。周りをキョロメで忖度し、所属集団での座席を守ろうと適当な言葉を口にする傾向です。だから「日本人は一夜にして天皇主義者から民主主義者になれる」。それを三島由紀夫は自決直前「からっぽな日本」と表現しました。そこには個人の自立した価値観がありません。

では所属する企業が変わる可能性があるか。ない。経済指標で分かります。先進国で日本だけが25年間も実質賃金が下がり続けています。2018年には1人当たりGDPが韓国とイタリアに抜かれ、1ヶ月前には韓国に平均賃金も抜かれました。政府が喧伝する株価は日銀とGPIFによる買い入れを期待する外人投資家によるもので経済実態を反映せず、失業率低下も非正規雇用者増加で盛られます。

惨状の理由は既得権益への固執。日本は産業構造改革が進みません。典型が原発爆発後のエナジーシフト。先進国が軒並み自然エナジーに舵を切り、単体では不安定な電源をトータルで安定させるスマートグリードやスマートメーターが巨大な市場を形成しているのに、日本企業は参入できない。輸出を企図した8機の原発は全てキャンセル。日本人が、沈みかけた船での座席争いを続け、船を建造し直さないからです。



なぜ座席争いを続けるのか。子孫に良きプラットフォームを手渡そうとする公的倫理がないからです。社会心理学者・山岸俊男氏の統計では日本人は世界で最も自己中心的。集団主義に見えるのは自分の座席を守るために所属集団に媚びを売るからです。それでも昔の日本人は会社以外に地域集団と家族集団に所属してブレーキが掛かった。今は会社で上を忖度するヒラメにブレーキをかける地域も家族も空洞化しました。

かつての地域共同体は記憶された良きもの=伝統を重んじ、家族共同体も地域に埋め込まれていました。個人が価値観を欠く「からっぽ」でも、地域共同体に埋め込まれている限りではマトモでした。でも地域共同体に続いて家族共同体が空洞化し、終身雇用の疑似共同体だった企業も30年前から空洞化した。それで個人が丸裸になると倫理不在の劣等性を全開させる。それが沈みかけた船での座席争いの背景です。

日本にあるのは
キョロメとヒラメだけ

「からっぽ」でも地域に埋め込まれればマトモな営みをするのが「恥の文化」ですが、地域の空洞化で恥も消えます。唯一の手掛かりは学校ですが、そこでは勝ち組になることが奨励され、周りはどうあれ自分の価値観を貫く倫理が教えられない。そもそも損得勘定に目ざとく将来にわたって身分を保証された地方公務員になりたい人が教員になりがちで、教師にも期待できない。国レベルの処方箋はありません。

北欧の男性育休取得率は9割を超え、アメリカもドイツも5割。10余年遡ればアメリカもドイツも2割台でした。会社や個人へのペナルティを課す施策をとった結果です。企業はコスト至上主義だから、上から権力的にやらないと育休取得率を顕著に上げられない。だからそうした政策に合意できる民度(知的水準ではなく価値観の成熟度)が必要です。日本人にはない。あるのはキョロメとヒラメだけ。

いずれせよ日本はダメになります。だから日本がマクロレベル=国レベルでダメになっても、ミクロレベル=個人レベルで行動原理に影響を受けずに価値観を貫徹できる倫理的人間を育てるのが大切です。そのためには「自分は倫理的か」「自分の家族は倫理的か」「子供たちが倫理的な学びの場を持つか」に関心を持って欲しい。自分の足元を見ないで政治に文句をつける「タダ乗り人間」は要りません。

12

関連記事

育児アイテム名鑑

アクセスランキング

  1. 日本人がセックスレスになりやすい理由は? 1年で約140回のギリシャ夫婦との違い...
  2. コンパクトなベビーカー『Thule Shine(スーリーシャイン)』デザインも魅力!...
  3. 旅ライターが選ぶ冬の子連れスポット6選!施設選びのポイントと注意点を紹介...
  4. たった2分でミルクが飲み頃温度に! 画期的なボトル『Rapid Cool』が登場!
  5. 少子化・核家族化の現代こそ「集団での体験」が必要?子どもの地頭を鍛える4つの方法...
  6. ストッケの注目新生児アイテム、ベビーカー『YOYO³』とハイ チェア『トリップ トラップ』...
  7. 「傾聴の姿勢で家族とチームを支える」横浜DeNAベイスターズ・戸柱捕手の子育て論...
  8. 赤ちゃんを24時間見守る! AIスマートベビーモニター「CuboAi Plus」
  9. 男だって泣きたい…離婚後に待ち受ける試練とは?
  10. 男が「父親」に覚醒するための10の処方箋

雑誌&フリーマガジン

雑誌
「FQ JAPAN」

VOL.73 | ¥550
2024/12/9発売

フリーマガジン
「FQ JAPAN BABY&KIDS」

VOL.70 | ¥0
2024/12/9発行

特別号
「FQKids」

VOL.20 | ¥715
2024/11/9発売

お詫びと訂正

  第17回 ペアレンティングアワード