厚労省の「イクメンプロジェクト」で育休を取得しやすい雰囲気づくりを
2020/09/21
厚生労働省より平成22年に発足した「イクメンプロジェクト」! 実際に育休取得したパパたちの体験談や、男性の仕事と育児の両立をサポートする企業を取り上げ紹介することで、男性の育休の広がりを促している。育休がもたらす好転とは?
法改正を皮切りに男性の
育児休暇を当たり前の世界に
平成22年、「改正育児・介護休業法」が施行されました。「改正育児・介護休業法」は、子育てや介護をになう男女が働き続けることができるよう、雇用環境を整えることを目的とした改正で、本法の施行にともない、男性の育児参加を促進する制度がいくつか導入されました。
たとえば、パパとママの双方が育児休業をとって育児をおこなう場合、育児休業期間を子供が1歳2ヶ月まで取得することができる「パパ・ママ育休プラス」制度、出産後8週以内にパパが育児休業をとった場合、その後もう一度休業期間が得られる「パパ休暇」制度などが挙げられます。
こうした制度の導入により、パパが育児休業を取得できる体制が整いましたが、「男性の育児休業」に対する認知や理解が進んだわけではありません。社会において、男性が育児休業を取得しやすい雰囲気をつくりだす必要がありました。
こうした課題を見据え、企画されたのが、「イクメン」を周知・広報するプロジェクトである「イクメンプロジェクト」です。「改正育児・介護休業法」の施行とほぼ同時期である、平成22年の6月に本プロジェクトは発足しました。
各企業への研修など
さまざまな方法でアプローチ
「イクメンプロジェクト」の発足にあたり、公式サイトを設置し、さまざまな好事例の紹介をはじめました。育児休業を取得して育児に参加したパパを「イクメンの星」としてフィーチャーし、彼らの具体的な体験談を掲載したり、男性社員が育児と仕事を両立できるようサポートする企業や管理職を「イクメン企業アワード」、「イクボスアワード」として取り上げたりしてきました。
また、国内の各企業や、これから結婚や育児を経験する若者への働きかけにも注力している点も、本プロジェクトの特徴です。プロジェクトの立ち上げ当初より、育児と育児休業をテーマとした研修資料をサイト内で公開するとともに、国内企業の人事担当者を対象に、男性の育児休業取得を視野に入れた社内環境整備についてレクチャーしています。
令和元年には、「イクメン2020(フレフレ)キャンペーン」なる全国的なキャンペーンを実施し、男性の育児参加のさらなる推奨を行いました。
「パパの育児休業」が浸透すれば
より良い未来が開ける
「イクメンプロジェクト」のもと、パパの育児休業取得を推奨することで、さまざまな状況が好転すると考えられます。まず、当然ながら、国内における育児休業取得率の向上が期待できます。
実際、「イクメンプロジェクト」がはじまった平成22年度の男性育児休業取得率は1.38%でしたが、その8年後となる平成30年には6.16%まで上昇しました。
また、育児休業の取得により、パパたちの「もっと育児に参加したい」という潜在的な希望が叶うばかりか、職場における業務内容や働き方も見直されるでしょう。つまり、男性の育児休業の取得は、ワーク・ライフ・バランスの実現にもつながるのです。加えて、男性の育児休業取得と、女性の継続就業や出産意欲は深く関わっているという見方があります。共働き世帯が珍しくない現代社会においては、パパとママが子育てや家事の負担を分かち合うことが求められています。
パパが育児休暇を取得し育児や家事をおこなうことで、ママの負担が減ります。おのずと、女性の出産意欲や継続就業の促進につながります。「パパの育児休業」が社会に浸透することで、より良い社会が実現するのです。
DATA
厚生労働省 雇用環境・均等局
職業生活両立課
文:緒方佳子
FQ JAPAN VOL.55(2020年夏号)より転載