子供に”らしさ”を押しつけるのはやめよう。LGBTQ当事者が語る「これからの子育て」
2019/12/10
「自分を偽って生きるのはもう嫌だ」とカミングアウト
公立小学校 非常勤講師
鈴木茂義先生
続いて登壇したのは、小学校の非常勤講師で、ゲイであることをカミングアウトしている鈴木茂義先生。専門は特別支援教育、教育相談。LGBTと教育について考える「虫めがねの会」主宰で、講演や執筆活動も精力的に行っている。
鈴木先生が初めて「自分がゲイであること」をカミングアウトしたのは、20歳の時。それに至った経緯は、自分のことを隠し続けているストレスに耐えられなくなったから。
「自分の周りにいる家族、尊敬する人、頼りにしている人たちにウソをつき続けなければいけないというのが何よりつらかった」。
正規の教師として14年間、子供たちに教える中で、自分を偽り続けることに耐えられなくなりカミングアウト。保護者の反応が一番怖かったが、ネガティブな反応はほとんどなく、こんな言葉をもらったという。
「鈴木先生はちゃんと子供と向き合ってくれている。だから、ゲイだろうと全然かまわない」
その後、保護者からのカミングアウトや性的マイノリティであることの相談も増えたそうだ。
また、自身が子供の頃と比べ、「時代は変わったなぁ」と感じたエピソードを披露してくれた。それは、算数の授業中に「先生には彼女はいるの?」としつこく聞いてきた5年生の男の子が、卒業間際に「先生にはパートナーはいるの?」という言い方に変わったこと。自らネットでいろいろ調べ、「先生の気持ちがよくわかったから」と。子供の柔軟性の高さに心底驚かされたそうだ。
「寄り添う」とは何か
鈴木先生は学校生活において、普段から心がけていることが3つあるという。
鈴木先生が心がけている3つのこと。「1.悪者を作らない」「2.寄り添う」「3.問題の解決よりも”伴走”を!」
その中で、2つ目にあげた「寄り添う」について、鈴木先生は以下のように語った。
「”寄り添う”とは、具体的にどういったことを指すのでしょうか? 僕が出した結論は『よく聞く・よく見る・よく話す』です。相手がどんなことで困っているのかよく聞いて、そして反応をよく見て、その上で解決策などを話すようにしています。
さらに意識しておきたいのが、相談を持ちかけてきた相手は『問題を解決する』ことを願っている場合もありますが、実はそれよりも『一緒に悩んでくれる人が欲しい』というケースもあります。これは保護者や子供たちと話す中で実感したことです」
相手のことをよく知って、一緒に考え、そして支えあう。これは学校だけではなく、子育てや職場関係など、あらゆるシチュエーションに応用できそうだ。
鈴木先生は講演の最後に、東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎先生の言葉を引用した。
「真の自立とは、依存先を増やすこと。児童生徒も、教員も、保護者も、障害の有無にかかわらず、LGBTQ当事者であろうと非当事者であろうと、依存先を増やすことはすべての人に通じる普遍的なことです」