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基礎知識

家庭で始めるアクティブ・ラーニングとは?

子供の畑にワクワクの種(知的感動体験)を植え、出てきた芽を見守って育てるのが親の役目!育てるうえでのキーワードになるのが「アクティブ・ラーニング」だ。さあ、どんな種を子供の畑に蒔こうか?

どんな芽が出るか植えてみないとわからない

「あなたはお子さんの将来に何を期待をしますか?」

これは探究学舎代表の宝槻さんが講演などで必ずパパママに問いかける質問だ。ほとんどの親から「自分の好きなことを見つけ、それが社会課題を解決する力になってほしい」という答えが返ってくるという。

「子供は、自分の好きなことに関しては、主体的に問題を発見して、答えを知りたい! もっとやりたい! という意欲を持ちます。これぞアクティブ・ラーニングの本質(以下AL)。脳は驚きと感動に満ち、心はワクワク。親はこのワクワク体験をいかにたくさん作ってあげられるか。それが子供の“好き”を見つける重要なカギです」(宝槻さん)

子供にワクワク体験をたくさんさせる秘訣はあるのだろうか。

「大昔の農業は、持っている種を全部、畑に植えて、サツマイモが生えてきたらそれを育てる。子育ても全く同じです。何がその子の畑で育つのかは種を植えてみないとわかりません。しかも、芽が出る場所は、たいてい学校の外。お芝居を見たり、公園でサッカーしたり、外に出てワクワク探しをするんです。ポケモンGOのようにね(笑)。プログラミング教育は、たくさんの種のうちのたったの1つでしかありません。たくさんの体験の点が結ばれるのが、スティーブ・ジョブズのいう“コネクティング・ドッツの精神”※1です」

では、家庭ではどのようにALをしたらいいのだろうか。

「子供が夢中になっている瞬間を見守るだけです。僕自身、大好きなダンボール工作を『ご飯よ』と何度も呼ばれながらもやらせてもらいました」。

子供の興味や関心を引き出したら、次のステップが「対話的な学び」だ。答えを用意して提案したり、考えを押しつけるのは厳禁。子供のやる気を奪うからだ。

「子供のワクワクに、“すごいね!”と共感したら、次に“どうして?”と質問します。ALの基本は、コーチングの手法でもある傾聴・質問・承認※2です。適切な質問で相手の“発見”と“自覚”を呼び起こし、『本当はこういうことをしたかった!』という気づきを促します。自分の意見を押しつけないAL的手法は、夫婦の会話でも使えますよ(笑)。『好きなことにチャレンジさせる』→『見守る』→『対話する』。以上!」



そもそもアクティブ・ラーニングって?

なぜ学校教育の現場で「授業のAL化」を急ぐのだろう。

「歴史を振り返ると、学校教育が子供たちに求めてきたのは、正確でスピーディーに真面目に物事を処理する能力でした。“WHY?”は不要です。しかし、高度情報化・グローバル化された社会において、それらの能力はすべてAIに取って代わられます」。

では、人間にしかできない能力とは何だろう。

「マニュアル処理だけでは豊かな生産性は生み出せません。どうしたら人間の生活はもっと豊かになるのかという“WHY?”に、人間の思考力や想像力があります。この能力をトレーニングする教育方法がALなんです」。

ALの始まりは大学教育。日本企業は、90年代のバブル崩壊と、2008年のリーマンショックを経て、人を育てる余力を失い、生涯学び続け、主体的に考える力(ジェネリックスキル)※3の習得を学校教育に求めるようになったのが背景だ。

「ロボット社会がくるのであれば、人間はこれからクリエイティブな側面を持たなければなりません。文科省のALを通じて育成を目指す資質・能力で言うところの『知識・技能』と『思考力・判断力・表現力』、そして最も重要な3つめの『学びに向かう力・人間性』です」 。

学校でこれらの力の育成は、座学だけでは対応不可能だ。きわめて活動的で実践的な学習形態(AL)でこそ育成される。これが学校教育の現場でアクティブ化を急ぐ理由だ。

さらに、2021年度入試から大学入試センター試験が廃止され、評価は知識の量ではなくなる。テストでは、ALで促進される「思考力・判断力・表現力・主体性・多様性・協働性」が試されるようにある。

「魚類学者のさかなクンのお母さんが1つのロールモデルかもしれません。水族館で息子がタコにえらく関心を示すと、タコを買ってきて、1ヶ月ずっとタコ料理を作ってタコを一緒に研究する姿です。真似すべきポイントは、タコを買う行為(doing)ではなく、親としてどんな姿で子供に寄り添いたいかという生き様(being)です。タコなんかよりも親は英会話の勉強のほうが安心、タコ不安(笑)! でも、もしもさかなクンのお母さんがタコを取り上げて、彼の畑に無理やりぐりぐりっと英会話の種なんかを植えてしまっていたら、今のさかなクンはここにはいなかったでしょうね」。

※1 コネクティング・ドッツの精神
※2 コーチングの傾聴・質問・承認
※3 ジェネリックスキル(汎用性技能)

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