子供の教育は芸術だ! 「自由」を尊重するシュタイナー教育って?
2019/06/21
「人間は身体と心と精神の3つからできている」とシュタイナー教育では考え、実践的な教えを広めている。子供の意志を行動と結びつける「自由への教育」とは一体どんな教育法なのか。ユニークな考えや具体的な教育法を解説する。
<シュタイナー教育のキーワード>
●人間は7年周期で成長する
●人間は「身体」と「心」と「精神」の3要素からできている
●人間には「胆汁質」「多血質」「粘液質」「憂鬱質」の4つの気質がある
●静と動のメリハリを意識した「呼吸のリズム」を生活の中に取り入れる
シュタイナー教育の
基本とは?
「シュタイナー教育」はドイツを中心に活躍した思想家ルドルフ・シュタイナーが「自由ヴァルドルフ学校」を1919年に開校し、人智学の知見を活かした独特な教育法を実践したのが始まり。海外では、「シュタイナー教育」という名称よりも「ヴァルドルフ教育」という名称のほうが一般的だ。
「シュタイナー教育」は自分で考え、自分で感じ、自分の意志を行動と結びつけることを目指す「自由への教育」を標榜する。また、シュタイナーは教育そのものを芸術ととらえた。シュタイナーの園や学校では、「オイリュトミー」や「にじみ絵」といった独特の芸術活動を行う。
「肉体」を発展させる7歳までは、身体器官の感覚に働きかけることが重要だと考え、大人は「教える」のではなく、「手本を示す」。この時期に知識をつめこもうとすると、身体を育てるためのエネルギーが削がれてしまうため、本人が望まない限り、文字などを教え込むことはしない。代わりに、無造作な木片や古くなったナプキンを丸めて、目と鼻と口を描いた素朴な人形で遊ばせることを推奨する。完成された積み木セットや人形では、子供が自分で空想によって何かをつけ加えることができないからだ。
「シュタイナー教育」は人間には「憂鬱質」「粘液質」「多血質」「胆汁質」の4つの気質があると考える。「憂鬱質」が強いひとは、幼いころから自我に目覚めており、大人を困らせることが少ない。「粘液質」タイプのひとは、忍耐強く、冷静で穏やかで、まわりをなごませる力をもっている。「多血質」は、想像力が豊かで美的感覚が鋭いけれど、気分屋。「胆汁質」は、感情の起伏が激しく、好き嫌いがはっきりしている。それぞれ子供の個性だと認めることが大切だ。
<シュタイナー教育における子供の成長課程>
乳・幼児期(0~7歳)
身体を育てる時期。模倣によって手足の動かし方を学ぶ。この時期の大人の役割は手本を示すこと。
学童期(6~12歳)
心を育てる時期。親や教師を権威として感じて、それに従うことを望む。9歳くらいで「わたし」を感じる。
思春期・青春期(14~21歳)
思考を育てる時期。世界を客観的にとらえ、論理的に思考することが可能になる。権威に頼るのでなく自分で考えるようになる。
成人(21歳~)
「自我」がはっきりと独立して、ひとりの精神的な意味での「人間」に成長する。以後も7年周期で変化し続ける。
シュタイナー教育を経験した著名人
斎藤工(俳優)、トーマス・クリスティアン・スードフ(ノーベル生理学・医学賞受賞生化学者)、イェンス・ストルテンベルグ(元ノルウェー首相)、サンドラ・ブロック(女優)、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(ポルシェデザイン創業者)、アンドレアス・カウフマン(ライカ社社主)、ケネス・シュノールト(元アメリン・エキスプレスCEO)、ミヒャエル・エンデ(児童文学作家)など