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学校で子供が孤立しないための「周りに染まらない」生き方とは?

学校で子供に必要なのは
「なりすまし」

人が道徳的だから道徳的に振る舞う社会ではなく、人が不道徳的でも道徳的に振る舞わせる社会。それが性悪説的システムです。いやなら、道徳的な心を持つ人間を増やして性善説的システムを守る必要があります。どうすべきか。本連載はそれを示す試みです。



性善説的システムを守るには、知恵と助け合いが必要です。社会という荒野の中で人が引きずられて劣化しないよう、連帯して次世代を性善説的な存在に育てるのです。

重要なのは、学校教育が子供を劣化させること。義務教育に代わる大規模なシステムを構想できない今は、学校で受ける悪影響から子供を守らなければなりません。

学校で、正しいことは正しい、間違いは間違い、と本当の事を言えば、いじめられて殺されかねない。周りに適当に合わせて〝なりすます〞必要があります。でも人間は弱い。それだけでは自分も劣化します。

だから、心を許せる信頼できる人と仲間になり、本当に思うことを打ち明け合う必要があります。境界線の外では性悪説、内では性善説で、やっていけるようにするのです。

境界線の外の人でも見込みがあれば仲間に加える〝包摂のダイナミズム〞も必要です。でも誰もがそんな力を持つ訳がない。だからこそ「周りに合わせたフリをしつつ、周りに染まらない生き方」を子供に教えるのです。

誤解を避けると、みんなが性悪説的存在だから自分も性悪説的になる他ない、のではない。みんなが性善説的な存在だという前提で、社会の制度を作っても、個人的に生きても、とんでもないことが起こる。だからどうするかという話。

過去20年で、将来結婚したいと思う若者は9割台前半から8割台後半に「微減」した一方、一人でも生きられると思う若者は2倍以上に増えました。それを前提に、今後は結婚を前提としない社会を設計すべきだと主張する人がいますが、間違いです。どんな価値観を持つのかは、当人の主体性の問題ではないからです。社会が劣化して人間関係に
実りがなくなれば、それに適応して一人で生きていくしかないと決意する人間が増えて当然。

でも人は頼りにならないというのは性悪説的構えです。そうした構えの多数化を、民主主義者気取りで制度的に追認
すれば、民主主義を支える性善説的存在をもっと失います。「一人で生きていくしかない」という性悪説的構えを弱める政策が必要です。

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PROFILE

宮台真司

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)など著作多数。


FQ JAPAN VOL.49より転載



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