少子化問題を「居酒屋経営」に例えて考えてみた!
2017/12/26
「女性は必ず二人の子供を産め」
そんな社会では若者は去ってしまう
では、「うちの店に入って来た人には全員、中ジョッキを2本注文いただきます」というルールを決めると、この店は流行るだろうか?いや、きっと飲まない可能性を考えて、客は入りたくなくなるだろう。同じように、「女性は必ず2人の子供を産め」という社会では、若者は最初から去って行ってしまう。
そもそも皆さんは、自分がそういう店の客であれば中ジョッキを何杯飲むだろうか?2杯か、1杯で十分か、最初からビールは飲まないか。講演で0〜2のどれかを挙手してもらうと、2杯の人も多いが1杯の人もいるし、必ず0杯の人もいて、平均は1.5杯未満に収まってしまう。そもそも体質は個人によって違い、飲める人もいれば飲めない人もおり、飲めるけれども飲まない人もいるのである。
日本で合計特殊出生率(一般的に1人の女性が生涯に平均的に産むと思われる子供の数のこと)が1.5を切っているのも、同じ理由だ。そもそも2人産める人もいれば産めない体質の人もいる。産めるが産まない人も、産みたいが産めない人もいるのだ。平均で2人を達成したければ、問題の設定自体が間違っていることに気付かねばならない。
女性皆が二人ずつ産むという考え方から脱却する
そこで設定を変え、0杯、1杯、2杯だけでなく、欲しい人は3杯、4杯、5杯の中で好きなところに手を挙げてもらう。そして、「何杯飲んでも割り勘で料金は同じにしますよ」とすると、先ほど0や1だった人は前回と同じ回答だが、それでも今度は、平均は2を超える。最大を2杯にしていたから平均が小さくなったのであって、最大5杯まで認めれば平均は急に大きくなるのである。
親世代の数と同等以上に子供が生まれている自治体の共通点がこれだ。たまたま多く産みたいし、それが可能な体質でもある人が、3人、4人、5人と子供を産むことで、初めて平均で2人という水準が達成されるのである。体の問題は一律ではなく多様だ。女性皆が2人ずつ産む社会など、子宮のない男性の描く妄想である。各人が己の体質に合わせた子供の数を自由に選ぶことができる社会であればこそ、子供の数の平均が2を超えるのだ。
PROFILE
藻谷 浩介 MOTANI KOUSUKE
株式会社日本総合研究所主席研究員。「平成の合併」前の3232市町村全て、海外83ヶ国を私費で訪問した経験を持つ。地域エコノミストとして地域の特性を多面的に把握し、地域振興について全国で講演や面談を実施。自治体や企業にアドバイス、コンサルティングを行っている。主な著書に、『観光立国の正体』(新潮新書)、『日本の大問題』(中央公論社)『里山資本主義』(KADOKAWA)など著書多数。お子さんが小さな頃は、「死ぬほど遊んでやった」という良き父でもある。
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FQ JAPAN VOL.44より転載