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『スター・ウォーズ』に学ぶ父親の心得

あの悪の権化ダース・ベイダーと、現代の日本の父親たちの意外な共通点とは? 『スター・ウォーズ』に秘められたメッセージを、育児ジャーナリスト・おおたとしまさ氏が解く。

産後クライシスが
ダース・ベイダーを生んだ!?

愛する妻との間に子供を授かったところから、彼の人生は大きく狂い始めた。愛する家族を守るため、強大な力を持つ組織に仕え、自らも強大な力を得ようとした。ときに自らの道徳心や倫理観への葛藤を感じながらも、家族を守るためだと割り切り、組織のために働いた。

彼の思いとは裏腹に、妻からは「あなたのことがわからない」とまで言われてしまった。「家族のために身を粉にしているのに……」。怒りが沸騰し、妻の首を絞めてしまった。一命は取り留めたものの、妻は出産後力尽きる。愚かな父親が招いた、最悪の産後クライシスだ。

愚かな父親の名はアナキン・スカイウォーカー。卓越した能力をもち、未来を嘱望された若者だった。しかし、愛する者を失うことに対する過剰な恐怖心が弱点となった。また、卓越した能力ゆえに陥る自己顕示欲や負けず嫌いな性分もあだとなった。自らの内側に存在する恐怖を自らの力でねじ伏せようとして、自らを破壊してしまったのだ。

そしてアナキンは、ダークサイドに落ち、ダース・ベイダーと化す。まるで、「家族を守るため」に会社に人生を丸ごと預けてしまったがゆえに、家族から疎まれるようになってしまった現代の父親と同じではないか。

我が子に超えられる喜びは
我が子が生まれる喜び以上

しかし、息子のルークは違った。育ての親やベン・ケノービを殺した怪物ダース・ベイダーが、自分の父親であることを知っても、その事実から逃げず、葛藤し続ける強さを持っていた。シスの暗黒卿が提案する安易な解決策にも乗らず、最後まで正しい道を模索した。

ついにルークは父親を滅多打ちにする。「父さん、目を覚ましてくれ!」という想いを込めて、渾身の打撃をくり返す。その純粋さが、「怪物」を「父親」に戻した。アナキンはルークに救われた。父親の弱点を、息子が補ったのだ。

父親らしいことは何もしなかったアナキンだが、死の間際に父親としての最高の喜びを知ることになる。

宇宙一ともうたわれた偉大なる戦士である自分が、息子に打ちのめされたのだ。端から見れば屈辱である。しかし父親の心を取り戻したアナキンの立場からは、このことはまったく別の意味を成す。息子が自分を超えてくれたのだ。父親としてこれ以上の喜びはない。

人間は、いや、人間を含むすべての生命は、自分より優れた存在をこの世に残すことを宿命付けられている。原理的には、セックスするのも出産するのも子育てするのも仕事をするのも、すべてはそのためである。「子供のため」と思えばこそ、親には底知れぬ力が湧いてくることがある。それこそが宇宙を包み込む「フォース」の源泉ではないだろうか。

親は子を導こうとする。しかし実際には、子供の存在が親を、覚醒してくれるのかもしれない。

May the Force be with you.

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

映画を超えた史上空前のエンターテイメント『スター・ウォーズ』、その新たなる3部作の第一弾。『ジェダイの帰還』から約30年後を舞台に“全く新しい愛と戦いの物語”が描かれる。砂漠の惑星で暮らす孤独なヒロイン、レイの運命はある出会いによって一変することに。旧シリーズの不朽のキャラクターたちに加えて、重要なカギを握るドロイドBB-8、ストームトルーパーの脱走兵フィンなどが登場。世界中が注目する悪役は十字型のライトセーバーを操るカイロ・レン。

12月18日(金) 18時30分 全国一斉公開

スター・ウォーズ公式サイト
http://starwars.disney.co.jp/home.html

© 2015Lucasfilm Ltd. & ™. All Rights Reserved

0407_01育児・教育ジャーナリスト
おおたとしまさ(TOSHIMASA OTA)
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。
>> おおたとしまさの著書一覧

●おおたとしまさ氏の記事 一覧
https://fqmagazine.jp/tag/fathers-eye/

FQ JAPAN DIGEST VOL.35(2015-16年冬号)より転載

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