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男性学の権威・田中氏が語る、「パパはつらいよ」

著書『男がつらいよ』(KADOKAWA刊)を刊行し、日本で5人ほどしかいない「男性学」の論者として注目を集めている田中俊之氏。知らぬ間に追いつめられている現代の父親像について語ってくれた。

2015.11.26up

会社と家庭男性への要望は正反対
平日は深夜まで仕事をして、ヘトヘトになっていても家事をこなす。週末は当たり前のように、妻子をショッピングやレジャーに連れださなければならない。睡眠時間や自分の時間は減ったけれど、毎日充実感があるし、「これが父親の幸せってやつか…」と無理矢理喜びを噛みしめる…それはそれで素晴らしい。でも、心の奥底に何かもやもやしたものを抱えてはいないだろうか?

男性にとって
生きづらい世の中が訪れている

武蔵大学の教員で、男性学の論者として注目を集めている田中俊之氏が次のように語る。
「多くの男性にとって生きづらい世の中が訪れています。しかも、本人にはその自覚症状がありません。知らぬ間に追い詰められている人も少なくないのです」。
田中氏が開催する市民講座の最前列に座り、熱心に耳を傾ける人たちには共通点があるそうだ。彼らは「家事をしてほしい」などの家庭からの要望と、「もっと仕事をしろ!」という会社からの要望の狭間で苦しんでいる。「出世」のために目一杯働きたい時期と、「子育て」は重なりやすい。子供が小さいときは、家を建てたり、車を買ったりと、お金の問題もある。

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残業を断れば出世街道から外れる
仕事だけをしていたら家族に愛想をつかされる

「働かなきゃ、稼がなきゃ、家事もやらなきゃ……と男性が背負うものが増えています」と田中さんは彼らの現状に同情する。残業を断れば出世街道から外れるし、仕事だけをしていたら家族に愛想をつかされる。両立を目指すために睡眠時間を削り、それでも時間が足りないので趣味を離れるという人も出てくるわけだ。
また田中氏いわく、子育てにどっぷりはまろうとしても、やり方がわからないし、聞く相手もいないという人もいる。さらに、成長した子供に相手にされず寂しい想いをしている父親もいるわけで、いつまで経っても悩みは尽きない。

「男らしさ」はすでに個人的な趣味であり、
他人に強要するものではない

男性を苦しめる原因の一つが『男らしさ』という幻想である。例えば、自動車免許を取るとき、「男はマニュアル」と決めつけていないだろうか。実際のところ、マニュアル車に乗る機会は皆無に等しい。これと同じように、現在の社会のなかにある「男のあるべき姿」という薄ぼんやりとした価値観は、時代遅れになっているものが多くないだろうか。「男たるもの弱音を吐いてはならない」とか、「一家の大黒柱は父親がなるべき」とか、もう手放してもよさそうな価値観を目一杯抱え込んで身動きできなくなっている男性は少なくない。マジメな男性ほどそうなりがちだ。「男らしさはすでに個人的な趣味として楽しむ程度のもので、基本的に自己満足だと思います。ですから、人に強要したり、足りないからといって非難したりするものではないと私は考えています」と田中さん。

「育児は○○であるべき」とルールも蔓延している
他人の価値観に影響されると息苦しくなるのは育児も同じだ。3歳児神話や、ベビーシッター利用の賛否など、育児にはいろいろな意見や考え方がある。その中で「育児は○○であるべき」とルールを作りすぎると、「ルール違反」が増え、辛くなってしまうのではないだろうか。

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自分の人生をあきらめなくてもいい
「男はこうあるべき」「育児はこうあるべき」という「べき論」から離れるだけで、生きづらさは緩和される。例えば、仕事や育児で悩みがあるなら、「男だから」とやせ我慢するよりは、妻とじっくりと話し合ったほうがいい。「大学生の付き合いならまだしも、長期的な関係を築く夫婦の場合は、『男らしさ』にこだわってカッコつける意味がありません」と田中氏は語る。

もっと父親は弱音を吐いていい
共働きで忙しいならベビーシッターや両親の力を借りてもいい。たまには地域の交流イベントに参加するのもいいだろう。親友を作るのは無理でも、月に1回会って話せるくらいのパパ友はすぐ作れる。
仕事と家庭で行き詰まりを感じたら趣味に逃げてもいい。会社でも家でもない“サードプレイス”が自分を救ってくれることもある。
田中氏は、最後に「もっと父親は弱音を吐いていいし、『自分の人生』をあきらめなくてもいいと思います」と悩めるパパにエールを送ってくれた。あなたは今、自分の人生を生きている感触はありますか?

田中俊之
1975年東京都生まれ。武蔵大学教員。専門は男性学・キャリア教育論。男性学とは「男性が男性だからこそ抱えてしまう問題」を扱う学問。単著に『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ』(KADOKAWA)、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト・プレス)がある。

Text » TAKESHI TOYAMA

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