子育て世代が知っておきたい! 子育中も老後も暮らしやすい住まいの作り方とは
2024/03/18
子育てをしやすい環境は理想だが、本当にそれだけで家族全員が暮らしやすい家にできるのだろうか。そんな子育て世帯が心がけておくべき住まいづくりのコツを、一般財団法人・住まいづくりナビセンター専務理事の河田崇さんに教えてもらった。
子育て世帯が選ぶべきは
長期優良住宅と断熱性能
小さい子どもがいる家庭では、家で過ごす時間も長く、快適に暮らすためには住環境は重要な項目だ。さらにコロナ禍を経て、テレワークが浸透するなど、家に求められる役割が変わりつつある。これからの住まいづくりは何から始めるべきか。公正・中立な立場で住まいづくりのサポートを行う、住まいづくりナビセンターの河田 崇さんは、まずしっかりした構造の建物を選ぶべきだと話す。
「マイホームというとデザインに目が行きがちですが、安心して暮らすためには、頑丈な住宅を選ぶように提案しています。一軒家であれば『長期優良住宅』がオススメです。これは長期間良好な状態で使用するための措置が講じられていると認定を受けた住宅を指します。耐震性や断熱性に優れた施工が施されるので、安全で快適な暮らしが実現できます」。特に、断熱性能に優れた住居は、省エネに繋がるため家計と環境にやさしく、温度差によって引き起こされる心臓疾患「ヒートショック」を防ぐ健康面からも、ぜひ導入してほしいとのことだ。
子どもと老後の安全性こそ
長く快適に暮らすカギ
では、子育てのしやすい住まいとは具体的にどのようなものなのだろうか。河田さんは家のなかの危険を減らすことが重要だと話す。
「どんなに子どもから目を離さないようにしていても、万が一の危険は常にあります。そうしたリスクに備えておくことで、子育て中も安心して暮らすことができるでしょう。例えば、バルコニー、ベランダでは落下防止の手すりとエアコンの室外機は足掛かりにならないように距離を取る。浴槽での溺死事故の対策として、浴室ドアには子どもの進入を防止するカギを高い位置に設置する。感電事故や火災事故を想定してシャッター付きのコンセントとチャイルドロック付きのコンロを選ぶ。これらの工夫は東京都が進めている「東京こどもすくすく住宅認定制度」のガイドラインが参考になりますので、住まいづくりの際に活用してみてください」。
また、ますます長寿化が進む現代では、将来のパパ・ママ自身のことにも目を向けて欲しいと河田さんは続ける。
「老後も住み続けることを想像して、階段や玄関、お風呂に手すりをつけたり、トイレを広くするなどバリアフリー性も検討しておいたほうがいいでしょう。これらは実は子育てのしやすさにも繋がります。例えば、抱っこをしながら階段を下りる時や玄関で靴を脱ぐときは、手すりがあると親子とも安心ですし、広いトイレは、介助補助だけでなく子供のトイレトレーニングがしやすいといったメリットがあります。子どもを見守りやすくなるよう仕切りが少なく、段差のないリビングの間取りも、車いすや杖が必要になったときもストレスなく生活できるでしょう」。
長いパートナーとなる住まいだからこそ、長期的に快適に暮らせる環境つくりを心がけたい。しかし、全ての条件を満たすことは難しいはず。そんななか理想に近い住まいづくりを実現するためのポイントを紹介する。
チェックポイント01
人生設計と合わせて考える
いつまで働くか、老後も住み続けるのかなど人生設計と合わせて考えることで、家に求める姿が明確になっていく。また、できる限り実物を見ながら話し合うことが重要。モデルルームに足を運んだり、写真を見ながらイメージを共有することで、夫婦間の齟齬を防ぐことができる。
チェックポイント02
夫婦で優先順位を話し合う
駅からの近さや家の広さ、立地、予算など家族にとっての優先順位を話合いましょう。在宅勤務が多いのであればアクセスの良さよりも公園や学校が近い場所を探すなど、仕事と子育てのどちらに比重を置くのかを考えて取捨選択を行い、理想に近づけていくのがいいでしょう。
チェックポイント03
施工業者・売主と良好な関係を築く
快適に長く住むためにはメンテナンスが必要です。将来的に子どもに相続したり、売りに出すのであれば、より維持管理は重要になってきます。子どもがいれば多少の傷や汚れは付き物。アフターフォローをしてくれるハウスメーカー、工務店、売主等とは丁寧にお付き合いしていきましょう。
教えてくれた人
一般財団法人住まいづくりナビセンター
専務理事
河田 崇さん
1965年、大阪市生まれ。元 独立行政法人 住宅金融支援機構 部長。住宅金融支援機構では、工務店向けの省エネ基準解説書や木造住宅工事仕様書の作成などに従事。マンション管理士、建築基準適合判定資格者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を持つ。
FQ JAPAN VOL.69(2023-24年冬号)より転載