土屋アンナさんが霊媒師に転職!? 人と人が絆を深めるために必要なものとは
2023/09/01
俳優、モデル、歌手として活躍する激ロックな土屋アンナさんが、大ヒット公開中のディズニー映画『ホーンテッドマンション』で、霊媒師ハリエットの声を演じた。土屋さんは本作で霊媒師という役柄をどう演じたのかお話を伺った。
憑依体質かも??
直感的に演じたらそれがハリエット
―― 映画『ホーンテッドマンション』の見どころを教えてください。
土屋アンナさん(以下、土屋)「みなさんのイメージを、いい意味で裏切る想像を遥かに超えた深い深い作品です」
―― 裏切ってくれる映画なんですね。それは期待が膨らみます。
土屋「ディズニーランドのアトラクションで会える水晶玉の中のマダム・レオタなど、個性豊かなゴーストたちが登場します。ゴーストそれぞれには、さまざまな隠された物語があります。私が演じたハリエットを含め、怪奇現象が起こる館に集まった人間たちは、ゴーストと同じように深い悲しみや不安、喪失感を抱えています。館の秘密を追っているうち、それぞれが自分自身と対峙していくことになります」
―― ゴーストたちは隠された物語を抱えているんですね。
土屋「ディズニーランドにある『ホーンテッドマンション』のアトラクションを、さらに深く味わえるので楽しみが増えます。ゴーストたちが住む霊界というのは、『ホーンテッドマンション』みたいに、いま私たちが生きている世界と繋がっているんじゃないかと思っていて。映画の中でもハリエットが『私たちは、亡くなった愛する人からいつも何かしらの形でメッセージが届けられている』と言っています。本当にその通りだと思います」
土屋アンナさんが吹き替えを担当したのが、霊媒師のハリエット(左から2番目)。
―― 霊媒師ハリエットを演じる時に苦労したところは?
土屋「苦労したというより、気を配って丁寧に演じなければいけないと思ったところは、悲しみを表現する静かな場面でした。どうしたらハリエットの愛情深さを声に乗せて伝えられるのか」
―― ハリエットは、パワフルな霊能力を持つ女性の血を引き、自分の意見を包み隠さず発言します。土屋さんとの共通点は?
土屋「ガラガラッとした声質が同じで、そこは演じやすかったですね。彼女の気持ちになって、それぞれのシチュエーションを直感的に演じたら、それがハリエットでした。彼女は、楽しかったら大きな声で笑うし、驚いたら叫ぶし、自分の感情をとても素直に大胆に表現する女性。それは私もまったく一緒です(笑)」
素敵な男性にポーン
子育てには他力本願が大事
―― 映画では、友達ができずに悩む9歳の男の子が登場します。普段、お子さんたちの悩みに対して、どんなふうに向き合っているのでしょうか?
土屋「息子たちには、自分が素敵だなと思う男性と会話をさせるようにしています。うちは、長男が18歳で次男は12歳ですから、これくらいの年齢になると、むしろ母親よりも家族じゃない男性の言葉のほうが響くことがあります。映画でも、友達ができずに悩む9歳のトラヴィスに、心霊写真家のベンがそっと寄り添いますよね」
―― あの場面は、ベンの優しさと愛情深さがあふれるシーンでした。
土屋「子どもたちには、家族だけでなくいろいろな人と関わってほしいと思っています。だから、もしも息子が悩んでいそうな時は、身近にいる男性スタッフなどに、『うちの息子が悩んでいるみたいだから、相談に乗ってくれる?』とポーンと預けます。母親にはわからない部分があるし、見せない部分もありますから」
―― 自分の手から離すんですね。子育てには他力本願も必要ですね。
土屋「他の人の力を借りることも大事です。母親って、つい視野が狭くなっちゃうんです、子どもが大事すぎて。『今日どこ行くの? 誰と会うの?』なんて、すべてを知ろうとしたりしてね(笑)。だからそれはせず、周りの人に託します。家族だと、子どもを変に管理しようとしたり、コントロールしようとしてしまう。子どもは窮屈だろうし、私自身も嫌だし、深入りしないよう適切な距離を保つようにしています」
―― 家族との適切な距離を保つには、ものすごい努力が必要になります。
土屋「自分も子どもと一緒になって悩むと、『ああすればよかった、こうすればよかった』と右往左往してしまうので、家では『まるで聞いていない人』を装っています(笑)」
登場人物たちが抱える深い悲しみ
家族には傷の舐め合いも必要
―― 舞台は999人のゴーストが住む館です。土屋さんのおうちも、4人のお子さんと6匹の猫が住むホーンテッドマンション並みの賑やかさがありそうです。普段、お忙しいなかで家族とどんなふうにコミュニケーションを取られているのですか?
土屋「うちは賑やかですよー、本当にうるさい、うるさい。家族との時間なんて全然取れなくて、やっと休みが取れても、子どもそっちのけで家事に没頭します(笑)。全部、自分でやっちゃうところが悪い癖なんです」
―― 全部、自分で抱え込んでしまうタイプなんですね。
土屋「本当は手を止めて、子どもたちとコミュニケーションを取るべきだ、とはわかっている……。けど、性格的にできないんです。ラッキーなことに、うちは上の子たちが6歳と4歳の下の子たちの面倒を見てくれます」
―― では、休日は家事オンリーですか?
土屋「年に1回、夏は、必ず家族で海に行きます。コンビニも何もない離島のフツーの民宿に泊まって、普段当たり前だと思っていることがいかにありがたいことなのか思い出すんです。ご飯が出てくることに感謝、温かいシャワーが出てくることに感謝、親にも感謝、自分にも感謝、血は繋がっていなくても自分を大事にしてくれる人みんなに感謝。子どもたちには、感謝することの大切さを伝えています」
―― 土屋さんにとって、家族とはどんな存在でしょうか?
土屋「ただ『この人を守りたい』とお互い大切にし合うことが家族なのだと思う。スタッフも家族。友達も家族。悲しんでいたら、癒やしたいと思える大切な人すべてが家族。子どもたちにとって、土屋アンナは、母親というより、家で酒を飲んでうるさいロックおばさん(笑)」
―― 土屋さんは、生き方が超カッコいいロックな母親です。最後に読者へのメッセージをお願いします。
土屋「人はみな、それぞれのストーリーがあって、普段表面的に接しているだけではその人の持つバックグラウンドは見えてきません。だけど相手の過去を知り、受け入れ、思いやると、もっともっと人は人を大事にできます。悲しみを持っていない人はこの世にいません。いい意味で、家族には傷の舐め合いは必要なのだと思う。舐め合うことで、それがパートナーとの絆になり、子どもとの強い繋がりになります。『ホーンテッドマンション』は、登場人物たちが抱えるそれぞれの深いストーリーがあり、優しさにあふれている映画です」
DATA
映画『ホーンテッドマンション』
大ヒット公開中!
ニューヨーク出身の医者でシングルマザーのギャビーは、友達ができずに悩む9歳の息子トラヴィスと共に、ギャビーの母がかつて暮らしたことのあるニューオーリンズで新たな生活を始めようとする。ニューオーリンズの奥深くにある屋敷を破格の値段で手に入れた2人だったが、うまい話にはウラがあった――。
この一見豪華すぎるマイホームには、遊び心にあふれたやつから「死ぬほど」シリアスなやつまで、実に様々なゴーストたちが暮らしており、その数はなんと999人。
身の毛もよだつ不気味な怪奇現象に何度も遭遇した2人は、悪霊払いを専門にする神父のケントと契約を結ぶことにする。神父ケントは“グレイシー・マナー”という名の屋敷に棲み付く不必要な住人たちを排除するため、かなりクセが強い心霊エキスパートたちを招へいした。その面々は、ゴーストを信じない心霊写真家のベン、何かと物事を大げさにする霊媒師のハリエット、ニューオーリンズの悪霊の歴史に詳しいテュレーン大学教授で歴史学者のブルース・デイヴィスらだ。
果たして彼らはこの“呪われた館“の謎を解明することができるのか。そして、彼らは重大な問題を知らずにいたのだ。
この屋敷に入った者は必ずここのゴーストのひとりに永遠に憑りつかれる、ということを―。
【監督】ジャスティン・シミエン
【出演】ロザリオ・ドーソン/オーウェン・ウィルソン/ティファニー・ハディッシュ
ラキース・スタンフィールド/ダニー・デヴィート/ジャレッド・レト/ジェイミー・リー・カーティス
【日本語吹き替え】片岡愛之助/土屋アンナ/八代拓/温水洋一
【配給】ウォルト・ディズニー・ジャパン
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PROFILE
土屋アンナ
1984年生まれ、東京都出身。10代でモデル活動開始後、歌手、俳優など多方面で活躍。主な出演作は、映画『下妻物語』(2004)、『さくらん』(2008)、『Diner ダイナー』(2019)など。長男18歳、次男13歳、長女6歳、次女4歳、2男2女の母。
写真/松尾夏樹
文/脇谷美佳子
スタイリング/沢田結衣(UM)
ヘアメイク/佐伯エミー