セカンドキャリアは定年後では遅い?FJ代表・安藤哲也が語る父親のライフシフト
2023/07/24
人生100年時代。定年退職を迎えた後も30~40年を生きることになる時代だ。しかし、8割以上が退職してから定年後のことを考えるという。そのタイミングで考えればよいのだろうか? 安藤哲也の父親行動論。
なぜ現役パパ世代に
ライフシフトが必要なのか?
Life Shift Japan(以下、LSJ)を立ち上げたのは2017年のこと。当時、私は54歳でした。ちょうどその頃「人生100年時代」が話題になり、同時にライフシフトの必要性がメディアで取り上げられるようになりました。人生100年時代になると、定年退職を迎えた後30~40年も生きることなります。しかし、あるアンケート調査では「定年後のことは退職してから考える」と8割が回答したという結果が出ていました。「それではライフシフトなんかできる訳がない。30代から考えるべきだ」と感じ、立ち上げたのがLSJです。
これまでに私は、イクメンに始まりイクボス、イクジイと、多様な年代の人達と接して来ましたが、その経験から、多くの男性が「パパであるのは子育て期の約20年しかない」ことに気付いていないことを知りました。子どもが自立したらパパとしての役目は概ねゴールを迎え、それ以降は夫婦二人で生きていくことになります。100年時代ですから、セカンドキャリア、サードキャリアだって普通にあることでしょう。
ライフシフトが簡単でないのは、多くの場合、いきなりポンとシフトするわけではないからです。現役パパは子育てに家事と忙しいですし、自身の親の介護が始まる可能性もあります。仕事の都合だってあるでしょう。それらが全て落ち着くタイミングはなかなか訪れません。だからこそ、少しづつ備えておくべきなのです。当コラムでは何度もお伝えしていますが、自治会などの地域活動や、PTAなどの子育て支援、趣味を楽しむ、でも良いのです。勉強して、知識を得て、ネットワーク作って……そうした活動が無形資産となり、定年後に生きてくるのです。
10代の頃を思い出し
やりたかったことを実現する
では、実際に何から始めれば良いのでしょうか? オススメしたいのは「10代の自分に還る!」というシンプルな方法。ピュアだったあの頃、夢中になっていたことを、今だから再開してみるのです。書道でも、バスケでも、推し活でも、なんでもOK。大人になるにつれていつの間にか忘れていた「好き」「楽しい」を取り戻しましょう。
例として、あるセミナーに参加してくれたある女性のお話をしましょう。小さい頃に牧場に連れて行ってもらって馬に乗って楽しかった、という記憶があり、彼女は大人になっても馬が大好きでした。セミナーで自己分析したところ、文章を書くことが得意だと気付いた。そこで競馬ライターに転職したそうです。好きなものと得意の組み合わせて仕事を得ることができたのですから、幸せでないはずがありません。
また、私の友人だと、40代になって息子が所属する野球チームのコーチや審判をやることに生き甲斐を見出した人もいます。私の場合はギター! 子育てを終えた今なら、10代の頃には買えなかった憧れのギターも買うこともできます。そして、同様に大好きだった読書を仕事にするべく、本屋を始めます。開店は7月上旬の予定。詳細は次号に譲りますが、子ども達が次世代の読者に育つ場所を作りたい……と願っています。これからは、これも私のライフワークの一つに加わりそうです。
みなさんもぜひ、現役パパである今から、人生100年時代を見据えて、ライフシフトに備えてください。そうすれば何歳になっても『笑っているパパ』でいられることでしょう。
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<まとめ>
●ライフシフトはすぐにはできない。子育て期から準備を進めることが大切
●10代の頃の「好き」と大人になって得た「得意」を組み合わせて熱中できることをみつけよう
PROFILE
安藤哲也
1962年生まれ。2男1女の父親。2006年、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)を立ち上げ代表を務める。NPO法人タイガーマスク基金代表。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員などその活動は多岐に渡る。新著は『「仕事も家庭も」世代の新・人生戦略「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社)。
文:川島礼二郎
FQ JAPAN VOL.67(2023年夏号)より転載