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見守りカメラはいつまでつける? 親子の共依存の危険性を精神科医・香山リカが解説

見守りカメラを外すタイミングが分かりません!というお悩みをお持ちのパパ。当初はベビーモニターとして使っていたが、子供が大きくなってきたので外すことを考えているそう。でも、ママは反対! どうするのがよいのか、精神科医の香山先生に聞いた。

<事例>
36歳男性 娘(3歳)・妻(32歳)との3人暮らし

見守りカメラを外すタイミングが分かりません!
我が家では、リビングと寝室に見守りカメラを設置しています。当初はベビーモニターとして使っていたのですが、子供が大きくなり、私は「そろそろ外してもいいかな?」と思っているのですが、妻に反対されています。妻は「これまでずっと見守れる環境だった。もしもの時に不安」と主張します。見守りカメラを設置し続けることで、子供や親自身に悪影響はないのでしょうか?

テクノロジーの発達に
人間が追い付けていない

娘さんが赤ちゃんだった頃は、見守りカメラの存在に助けられたことでしょう。ただ、子供が成長すると、その意味が変わって行きます。3歳児が5歳、10歳へと育ってもカメラを設置を続ける目的は、本当に「見守り」なのでしょうか?

「見守りカメラ」を「テクノロジー」と置き換えて考えてみましょう。テクノロジーの進歩、特にインターネットの急速な普及により、あらゆるモノがネットワークに接続される時代が到来しました。私達の暮らしは飛躍的に便利になった一方で、人間の主体性=人間らしさや、個人のプライバシーといった近代以降の人類が大切にしてきた価値感が、軽んじられる傾向にあるのです。

その象徴的な例が、ゲノム編集技術です。ゲノム編集技術により、遺伝的に発症が予想される病気を胎児のうちに治療できる・出産直後に治療できる、といったことが可能になります。既に食分野では、肉厚な真鯛や高GABAトマトといった、人間に有用と思われる品種が開発されています。このゲノム編集が、別の目的で人間に適用されたとしたら、どうでしょう?

遺伝子を改変することで、我が子を高身長で筋肉質なアスリートに意図的に編集することが(技術的には)可能な時代が到来しているのです。いわゆるデザイナーズベイビーです。しかし、これから誕生する子供をそこまで編集する権利が、親にあるのでしょうか?

それを許してしまえば、富裕層家庭に生まれた子供は優秀になり、貧困層の子供は欠点を抱えたままとなります。そうした社会を私達は許してしまうのでしょうか?

IT機器は上手く活用し
心の繋がりを大切にする

話を見守りカメラに戻しましょう。子供を見守る、という本来の目的を達したら、子供のプライバシーを尊重して、外してあげてはいかがでしょうか? 確かに、私が教えている大学生に聞いてみると、「彼氏(彼女)ができたら最初に、お互いのスマホに位置情報アプリを入れる」なんていう子も普通にいます。しかし、親子の場合は、子供への過干渉や過度な依存を引き起こす可能性があります。勤務時間中でも気になり、ついつい見守りカメラをチェックしてしまう、なんていう方は要注意です。

子育てのゴールは、親がいなくても子供が生きていけるようになることです。それは自分の時間・空間のなかで、どう生きるか意思決定できるようになる(自立)こと。その過程においては、必ずしも親が望まないものが子供にとって大切、ということもあります。

例えば、かつての小学生たちはこぞって秘密基地を作りました。そこでは、親から止められているお菓子を食べたり、雑誌を見たりして怒られたものです。しかし、これも立派な自立の過程であり、親とは違う価値観を持つ自分を作る練習をしていたと言えます。その経験がなければ、いつまでも親と一体化した子供であり続けてしまい、自己決定能力が阻害される可能性もあるのです。

また、診療にいらっしゃる患者さんにも、20~30歳代になって急に「親に支配されていた」「毒親だった!」と訴える方が少なくありません。虐待を受けていたわけではなく、むしろ良く面倒を見てもらっていたようです。親も本人もずっとそれで良いと思っていたのに、ある瞬間、それが変わってしまうこともあるのです。

こうした親子の共依存を避けるためにも、親子の心はしっかりと繋ぎつつ、ほどよい距離感を保っていくのが良いのではないでしょうか?

【まとめ】
●見守りと監視は紙一重、親子の共依存を引き起こす危険アリ!
●子供の自立のためには、干渉しない勇気を持つことが大切

PROFILE

香山リカ

東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、様々なメディアで発信を続ける。『ノンママという生き方 子のない女はダメですか?』(幻冬舎)、『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)など著書多数。


文:川島礼二郎

FQ JAPAN VOL.65(2022-23年冬号)より転載

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