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心身ともに健全に暮らせる持続可能な街とは? 優しさと気遣いを大切に。

SDGsの目標11「持続可能な街づくり」。持続な可能な街とはいったいどんな街のことなのだろうか? どのようなことを意識すればよいのだろうか? SDGs支援機構事務局長の深井宣光さんに解説してもらう。

ICTを利活用すると
どんな社会課題が解決する?

古来、私たちは集まって住み(集住)、集落を形成し、生活のインフラやコミュニケーション空間を形成してきました。SDGsの目標11「持続可能な街づくり」は今こそ達成すべき目標です。では持続可能な街とは? 私が考える街は、「誰もが心身ともに健全に暮らせる街」です。

今、生活インフラの老朽化が進んでいます。昨年10月、和歌山市の水道水を送る水管橋が崩落し、6万世帯が1週間の断水を強いられました。日本全国でインフラ問題を抱える中、2020年5月、国が地域や事業者と一体となって取り組む「スーパーシティ法案」が成立しました。目指すのは生活の質の向上や新たな価値創出による経済循環の促進です。

ICTを利活用することで、効果的かつ効率的な産業の創出・育成やエネルギー利用、治安維持、子供や高齢者の見守り、交通渋滞の解消、災害対策など、社会課題の解決を実現するものです。

コミュニティへの愛着形成が
持続可能な街づくりを作る

私が住む富山市は、2007年にコンパクトシティ戦略を打ち出し、持続可能なコンパクトシティの形成を推進し、中心市街地活性化や公共交通の活性化に取り組んでいます。例えば、ITを利用した移動支援サービス「Maas(マース)」。バスやタクシー、鉄道など複数の交通手段を組み合わせて最適な経路を示す地域密着型アプリです。また、子供たちにセンサー付きデバイスを持たせて、登下校の通学路の安全確保に役立てています。富山市には県外からの転入超過が7年続き、富山県自体も「幸福ランキング2022」で第4位にランキングされました。

では幸福とは? 国連の「世界幸福度報告書」で5年連続首位に輝くフィンランドの気鋭哲学者フランク・マルテラは、幸福の定義を「誰かのために何かをして、それが相手の助けになり、さらにコミュニティの利益になることで得られるもの、それが幸福である」と定義しました。

私は小1と中1の子供がおり、通学路に立つ旗ふり当番にも参加しています。「おはよう」「おかえり」と挨拶を交わし、子供たちの安全を見守り、ゴミが落ちていれば拾います。こういう活動を通じて、コミュニティの一員として所属感が増し、愛着が深まります。街も地球も、愛着があれば誰も汚したくありませんよね。

私は、朝の犬の散歩の時はあえば「脱デジタル」をしてエシカル時代のメリットを見直しています。何かあったら…とちょっと不安になりますが。スマートシティは、ICTを活用してした効率化ばかりに注目が集まりがちですが、昔のエシカルな時代には当たり前だった「人の優しさと気遣い」を今こそ大切にしていきましょう。

コンパクトシティが求められる
4つの理由

1 持続可能な都市経営(財政、経済)のため
公共投資、行政サービスの効率化と公共施設の維持管理を合理化。住宅、宅地の資産価値を維持し、 ビジネス環境の維持と向上。さらに健康増進による社会保障費の抑制へ。

2 高齢者の生活環境・子育て環境のため
子育て、教育、医療、福祉の利用環境を向上させ、 高齢者・女性の社会参画。高齢者の健康増進を図り、仕事と生活のバランスを改善し、コミュニティ力の維持の実現。

3 地球環境、自然環境のため
徒歩や自転車、都市内や郊外をつなぐ路面電車やバス網を整備し、CO2排出削減やエネルギーの効率的な利用を通じ、気候変動への緩和と適応の促進。

4 防災のため
災害危険性の低い安全な地域に重点的に居住し、集住による迅速かつ効率的な避難。「誰一人取り残さない」都市づくりへアプローチするSDGs的な都市づくり。

SDGsとは?

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際社会共通の目標。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された。地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓い、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されている。

【まとめ】
●持続可能な街つくりには愛着形成が必要
●テクノロジーを活用しながらエシカルな気持ちを思い出す

PROFILE

深井宣光


(一社)SDGs支援機構事務局長。SDGs専門メディア「SDGsジャーナル」を運営。専門知識ゼロでもわかるやさしい言葉で伝え続け、わかりやすいだけでなく行動を喚起する解説者として注目を集めている。講演/研修、TV出演、執筆、監修など多岐に渡って活動を展開。現在2児の父。著書にベストセラー書籍「小学生からのSDGs」。


文:脇谷美佳子

FQ JAPAN VOL.65(2022-23年冬号)より転載

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