産婦人科医療が目指す未来とは? 妊婦と医師を先端技術で繋ぐ取り組みがスタート
2020/05/08
産婦人科への最先端のICT導入が始まろうとしている。妊婦や胎児の状態を自宅で測ることができる機器や、その結果をインターネットで医師に送り、アドバイスを受けられる仕組みが出来上がりつつあるのだ。全国13の医療機関と共同で実証研究が始まる。
自宅で胎児の状態の測定が可能に
在宅・遠隔胎児モニタリングの実証研究に用いられるのはメロディ・インターナショナル株式会社が開発した「分娩監視装置iCTG」だ。実証研究は日本産婦人科医会と同社の共同で、2025年3月まで段階を経て進めていくことが想定されている。
iCTGは国内初のIoT型胎児モニターで、胎児の⼼拍数と妊婦のお腹の張りを、⾃宅でも測ることが出来る。従来は医療施設で、CTG(胎児心拍数陣痛図)によって胎児心拍と子宮収縮をモニタリングし、「赤ちゃんが元気かどうか」確認するという手法が一般的だった。こうした計測を、家でも妊婦自身や家族が行うことが可能となるのだ。
医療の地域偏在を克服へ!
iCTGは2018年5⽉にクラス2医療機器の認証を取得していて、医師による診断に使⽤することができる。iCTGによる計測結果は、周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」によって医療機関に送信することができ、医師からのアドバイスも受けられる。
こうした遠隔医療体制の開発が進む背景には、産婦人科医の地域偏在がある。産婦人科のない地域では、通院が妊婦にとって大きな負担となっている。iCTGとMelody iの実証実験が北海道の弟子屈町で始まったことはFQ JAPANの記事でも以前伝えた。
また、地域医療の崩壊を防ぐためにも地域を超えた連携が必要だ。さらに医療従事者の働き方改革も求められている。
もちろん産婦人科が身近な地域に住む妊婦にとっても、自宅で状態を測定でき、医師とのコミュニケーションを助けるこうしたシステムの構築は心強いだろう。折しも、一時的なものとはいえ初診からのオンライン診療が解禁されたタイミングでもある。医療の未来を告げるかもしれない動きを、関心をもって見守りたい。
DATA
文:平井達也