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賢いではなく変化できる能力が22世紀は求められる! ニューロダイバーシティが人類を進化させる

22世紀というと遠い未来のような気がするが、今年生まれた子供たちが80歳を迎える頃の話だ。その頃、今の地球はどうなっているのだろう。そして人類はどのような社会を持っているのか。脳の多様性、「ニューロダイバーシティ」の存在に着目した、谷崎テトラ氏のコラム。

グレタさんの登場は
人類進化の過程とみる

「100歳まで生きるとしたら2103年には私はまだ生きてる」。

そう語るのはグレタ・トゥーンベリ。9月23日にニューヨークで行われた国連の気候行動サミットでスピーチした、あの16歳のスウェーデン人少女だ。彼女は去年の8月に、学校を休んで議会前での気候変動に反対する座り込みをたった一人で始めた。今、若い世代を中心に世界中へと広がり始めている。

彼女は8歳の時、気候変動を知った。それは人間の生活様式がもたらしたもので、「本当に危機ならばなぜ同じ生活をしてられるのか」と大人に怒りをぶつける。

「2050年にまだ半分も生きてない。私は78歳の誕生日に2019年の「まだ行動を起こせる時間があった人」はどうしてたのか聞くでしょう。大人は子供にウソをつくなと教える。なのにあなたたちはなぜウソをつくのですか?

彼女はいわゆる発達障害だと言われている。11歳で病気と言われ、アスペルガー症候群、強迫神経症、選択的無言症と診断された。アスペルガーの子供は、白黒はっきりさせたがる。そして、ウソが嫌い。融通がきかない。

しかし誰もが持ち続けることのできない強い意志の力を持っている。そして彼女は、選択的無言症、つまり沈黙する子供であり、必要な時しか喋らない子供だったという。そして「いまがその時」という。

国立環境研究所の江守正多さんはグレタさんのような子供の存在を「ニューロダイバーシティ」という言葉で説明している。

「我々のように“ふつう”の脳の持ち主(ニューロ・ティピカル)は、地球の危機の話を聞いて、そのときはとても心配になったとしても、日常生活を送るうちに気をまぎらすことができる。おそらく人間の脳はそのように進化してきたのではないか。人がみな抽象的な危機を心配し続けていたら、社会が成り立たなくなるからだ。」

しかし、グレタさんは違う。彼女には地球の危機を心配し続けることができる「才能」があるのだという。彼女がふつうと違うのは、いわゆる「障がい」というよりも、「脳の多様性」だとみることができるというのだ。

賢い、強い人間ではなく
変化できる人間が生き残る

社会が変化している。ウソや欺瞞、ごまかしやズルさや、諦めを覚えることを「大人になる」と言われていた。

しかし社会環境の変化に合わせて「ニューロダイバーシティ」が生まれ、危機に際して警告を発し始めた。それは人類種の進化の過程で遺伝的な多様性として埋め込まれているのではないか?

種が進化をするときに子供の頃の性質を持ったまま成熟した大人の個体になることがある。それをネオテニー(幼形成熟)という。進化論においてネオテニーは進化の過程に重要な役割を果たすという説がある。なぜならネオテニーだと脳や体の発達が遅くなる代わり、適応に対する可塑性が高いからだ。

人間はチンパンジーの胎児の性質を持ったまま大人になった。ほぼ胎児の状態で生まれ、乳児期には手がかかり、弱い皮膚を持つがゆえに服や家を必要とし、道具や火を使い、グループで協働する、高度に社会的動物となったのだ。

「強い者・賢いものでもなく、生き残るのは、変化できる者である(ダーウィン)」

人間が変化しつづけることに、GRIT力が求められる。進化が内在化した時代において、社会はこうでなければならないという固定観念や、既得権益をぶっ壊す、空気を読まない「脳の多様性」こそが、進化の戦略なのかもしれない。

「好むと好まざると変化は起きている。」グレタさんはそう語る。

ライアル・ワトソンの「101匹目のサル」も、最初の変化は子供サルから始まり、やがて大人たちも変化を起こし、群れ全体が変化を遂げていった。環境活動家レイチェル・カーソンは、子供の頃の物の見方=センスオブワンダーこそが一番大切なものなのだと語った。いつだって子供はNEW BREEDの教師なのだ。

プロフィール

谷崎テトラ
TETRA TANIZAKI


1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。http://www.kanatamusic.com/tetra/


FQ Kids Learning vol.1より転載

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