父親向け育児休暇は短いから取りやすい!? 英国の育児支援事情とは
2011/04/27
世界の育児事情を紹介するこの企画。今回はFQ発祥の地・英国に注目。英国には、父親たちが育児に参加できるように「Paternity leave」という育児休暇制度がある。どのような制度があるのか、駐日英国大使館政治部のジョナサン・エィビスさんに話を伺った。
FQ発祥の地・英国の
父親たちの子育て事情
―――エィビスさんご自身も2人の子供を持つ父親ですが、英国の父親たちは、子育てに対してどのような考えを持っているのでしょうか?
最近の若い父親たちはもっと積極的に子育てに参加したい、子供と一緒に時間を過ごしたいという思いは強いようです。こうした時間は親子の絆を築く大切な過程ですし、人生の充足感を得ることでもあります。また、一緒に過ごすことによって子供たちにもその充足感を与えてあげたいと思っています。社会の変化ということもあり、私たちの父親の世代とはかなり変わってきましたね。
―――イギリスには「Paternity leave(パタニティ・リーブ)」という父親向けの育児休暇制度があると聞きましたが?
「Paternity leave」とは2003年にできた新しい法律で、子供が生まれる父親、もしくは養子を迎え入れる男性であれば、子供1人あたり連続して最長2週間までの休暇が取得できます。それだけでなく、その間雇用主から育児休暇手当てを週に最大108.85ポンドが支払われるのです。そして雇用主は、支払った手当ての大半を国民保険料より返還されるという仕組みです。
さらには以前からある制度として「Parental leave (ペアレンタル・リーブ)」があり、子供が5歳の誕生日までに、1人につき13週間の休暇が無給で取得できます。企業によっては、これら国の制度にプラスアルファの保障をしてくれる独自の制度があるようですので、ぜひ併用していただきたいものです。
―――これら育児休暇制度の問題点をあえて挙げるとすると?
いずれも給付金が決して多くはないということですかね。「Paternity leave」に関しては週あたり100ポンドあまり(約2万3000円)、「Parental leave」は無給ですから。ただ、そういった問題があったとしても、この制度は多くの英国の父親から歓迎されていることは間違いありません。普段はなかなか捻出することができない子供との貴重な時間を、国から保証されるんですから。
――「Paternity leave」以外の育児に関するケアは、どのようなものがありますか?
保育園などにまつわる状況は年々よくなってきています。数も大幅に増えてきていますし、私が小さい頃に通っていた頃の保育園よりも、子供たちへのケアという面でのクオリティも上がっていると聞いていますよ。企業によっては、託児所を設けているところもかなり増えているようです。
短いからこそ取りやすい
英国の父親向け育児休暇
―――日本にも父親の育児休暇制度はあるのですが、ほとんど利用されていないのが現状です。英国での状況はいかがでしょうか?
「Paternity leave」を利用しないにしても、英国の父親の94%が、通常の有給休暇を利用するなどして出産時には休暇を取っています。ただしその間仕事を休むわけですから、日本と同様、やっぱり同僚に気を遣いますよね。会社側からも仕事のパフォーマンスを下げないで欲しいというプレッシャーがあることも事実です。そういう意味でも、職場全体の理解やサポートは不可欠ですね。
―――最大2週間という短期間だからこそ、男性でも利用しやすいといえるのかもしれませんね。
確かに長い休暇よりも申請しやすいと思います。両親がいつもそこにいてくれるということは、子供たちにとって心の支えになるはずですから、積極的に利用することには大賛成ですね。
TEXT/MUNEKATASUMITO
PHOTO/MASAHITO MASUMOTO
FQ JAPAN VOL.2より転載