子供の連れ去りが心配! 犯罪から守る3つのポイント
2017/06/30
子供に迫る危機を考えるシリーズ「家族を守るリスクマネジメント」。今回は"犯罪”について。車に乗せて自室に連れ込む事件が続発している。予防手段は子供への声かけと見守りだ。
心配な子供の連れ去り事件
1人になる場所を確認しておく
子供が巻き込まれる犯罪事件といえば、お父さんお母さんの頭に浮かぶのは連れ去り事件でしょう。広島市で起きた小1女児殺事件では、犯人は通学路から子供をアパートに連れ込んでいます。
奈良・小1女児殺害事件では、バイパス沿いで待っていて、お母さんが待っているからといってアパートへ連れて行ったそうです。バイパス沿いは人が近づきやすく見えやすい場所でしたが、監視者がいたかどうかは別の問題です。もし見ていた人がいたとしても、きっと知り合いだと考えたのでしょう。
こうした数々の連れ去り事件から言えることは、死角はどこにでもあるということです。“必ず友達と行動しよう”と教えること、「1人になる場所はどこなのか」「どこに遊びに行くのか」「誰の家に行くか」、子供に確認しておくことが重要だということです。
知らない人の車には乗らせない
知らない人の家には行かせない
近年、公道や公園が安全になったと言われていますが、そもそもは事件の報道が増えて、“外は危ないから”といって子供を連れて出さなくなった親も増えたから。とはいえ学校や塾の行き帰りは、外に出ざるを得ません。そこで今気をつけるべき犯罪は車に連れ込まれるケースです。車が停車していても違和感のない近所の場所も危ない場所になります。知らない人の車には乗らない、知らない人の家には行かないように言っておくべきです。
また、子供に関する犯罪で1番増えているのは児童虐待です。パブリックな部分の安全性が向上した一方、プライベートな部分の危険が上昇したと言えます。
犯罪・非行を起こさせない
「ルーティン・アクティビティ理論」
ルーティン・アクティビティ理論は、犯罪・非行が発生するメカニズムを説明したもの。日本では、日常活動理論とも言われています。犯罪・非行は、それを行おうとしている潜在的な犯罪者・標的になるモノ(人)があり、有能な監視者がいないときに起こるものです。犯罪者は被害者に接触しないと加害することはありません。
マーカス・フェルソン(アメリカの犯罪学者)が「アメリカの郊外地域で空き巣狙いが増えた。理由は夫婦の共働きが増えたから」と言って、いろいろな層から批判を浴びましたが、空き巣のケースでは、共働き夫婦が増えたことで住宅地に「監視者」となる夫婦が少なくなる一方、収入が増えるために「標的」となるお金がある人が増えた状況になったことから、こうした考察に。
つまり、子供が巻き込まれる犯罪を防ぐことを考えると、注意の目を増やす(自然監視性の強化)ことが重要です。防犯カメラなどもありますが、1番いいのは人がいることです。挨拶をすること、見守ることが犯罪や非行防止に繋がります。
ターゲット・ハードニング
「気を付けなさい」と言うことは、ターゲット・ハードニング(被害対象の強化、回避)の一環。ターゲット・ハードニングの方法としては、防犯ガラスや防犯ドア、ゲーテッド・コミュニティ(門を設けて住民以外の敷地への出入りを制限した住宅地)などもあります。
ホットスポットを作らない
地域安全マップなどを作成し、犯罪者が自分に対して近づきやすい場所、見えにくい場所を見つけようという活動も展開してきていますが、実際にはそういう場所ばかりです。身の回りには死角はたくさんあります。公園にもたくさんあるし、アパートなどの後ろにある避難階段もそう。重要なのは、子供自身でどこが危ないかを認知すること。死角があるからかくれんぼができるのですけどね(笑)。
監修
明治大学理工学部建築学科教授
山本俊哉
専門分野は都市計画、建築・都市安全学。一般社団法人子ども安全まちづくりパートナーズ代表理事など。著書に『子どもを事故と犯罪から守る環境と地域づくり』(中央法規出版)、『安全学入門』(研成社)、『防犯まちづくり 子ども・住まい・地域を守る』(ぎょうせい)などがある。
HP:yamamoto.lab
FQ JAPAN VOL.42(2017年春号)より転載