精神科医が伝授 発達障害から学ぶ子育てのセリフ集
2017/01/19
日本でも関心が高まっている、発達障害。今回は、ADHDや自閉症に詳しい精神科医・香山リカ先生に、発達障害とのコミュニケーションで意識すべきことから、子育てのヒントを教えてもらった。
実は見つけにくいのは
「大人の発達障害」
子供の発達障害は、改善プログラムがあるので、訓練によって克服できることもあります。一方、大人になってから見つかった場合の治療プログラムは確立されていません。しかも、発達障害の診が非常に難しい。落ち着きがない、段取りが下手、空気が読めないなどの典型的な症状は、程度の差こそあれ、誰にでもあることですよね。どんな診断を下すにせよ、人生に影響を与えることになるので、慎重にならざるをえません。稀ですが、障害者認定を受け、障害者雇用制度で働いたほうが力を発揮できるという場合は、率直に発達障害であることを伝えることもあります。
「気合いを入れろ」という
言い方は通じない
発達障害の方の特徴のひとつに、抽象的な指示の意味がわからない点があります。たとえば、「気合いを入れろ」とか「自分の胸に聞け」などと言われてもわからない。「急ぎじゃないから」と言われた仕事にいつまでも手をつけないこともあります。言葉の裏にある意味を察することが苦手なのです。何が良くて何がダメなのか具体的に話をする必要があります。
発達障害から学ぶ子育てのセリフ集
発達障害の方とコミュニケーションするときに意識してほしいことをまとめました。育児にも応用できるかもしれないので、ぜひ参考にしてみてください。
①自己肯定感を育む
絵が上手い、記憶力がいいなど、その子の優れた点を認めてあげよう。仮に夢中になることがガラクタ集めだとしても、否定はしないこと。
「そんなゴミ早く捨ててきなさい!」
「たくさん集められたんだね」
②自分と比較しない
自分の話を持ち出して、比較してはいけない。間違っても「自分の時代は残業200時間だった」というような話し方はダメ。
「あなたの年齢のとき、
私はもう時計を読めた」
「今日はここまでわかるようになったね」
③人格否定をしない
額面通りに言葉を受け取ってしまうので、相手の人格を否定するのはタブー。感情的な言い方にらないように気をつけて。
「そんなことでは友達が1人もいなくなるぞ」
「友達にはやさしくしようね」
④今のことに限定する
「いつもそう言ってるでしょう」「一体これで何回目?」などと、過去を掘りかえすと混乱する。今、目の前のことだけ伝えるのがベター。
「騒いじゃいけないって、
昨日も言ったでしょ!」
「ここは今、静かにするところだよ」
⑤具体的に伝える
何かを間違えたとき、頭ごなしに叱らないこと。何がどう悪かったのか具体的に伝えることが大事。これは褒めるときも同様。
「コラ!走らない!」
「走ると危ないから、歩いて行こうね」
香山リカ
東京医科大卒。精神科医。豊富な臨床経験を活かして、現代人の心の問題を中心に、新聞や雑誌など様々なメディアで発言を続けている。
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Text » TAKESHI TOYAMA
※FQ JAPAN VOL.41(2016-17年冬号)より転載