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小学校受験で注目される「行動観察」とは?遊びを学びに変える、父親になろう

情報が溢れ、調べればすぐに答えが出てしまう時代だからこそ、「問いを立てること」や「試行錯誤すること」そのものが難しくなっている。キャンプや公園遊びなどの体験を通して、父親が教えられることとは?

<目次>
1.小学校受験で注目される「行動観察」は、プロジェクトマネジメント
2.これからのキャンプ、意識を変えて取り組んでみよう!
3.虫取りは、小さなマーケティング戦略
4.父親の問いが、子どもの思考力を育てる

 
暑さが和らぎ、ようやく外での体験を楽しめる季節がやってきた。キャンプや公園遊びは、ただ楽しむだけではあまりにもったいない。親の関わり方次第で、社会に出てからも必要とされる「一生ものの力」を育てる機会になるのだ。

先の読めないVUCAの時代と言われる現代、体験から学ぶ探究的な学びが注目されている。しかし、受け身で育った子は「問いを立て、調べ、考え、解決策を探る」ことが苦手だ。情報が溢れ、調べればすぐに答えが出てしまう時代だからこそ、「問いを立てること」や「試行錯誤すること」そのものが難しくなっている。

キャンプや公園遊びは、体験を通して感じ、考え、試行錯誤しながら行動する良い機会だ。だが、「連れて行けば子どもが何かを学ぶだろう」という期待は幻想だ。親が持ち物をすべて準備し、現地での段取りを整えて、子どもはただ座ってバーベキューの肉を食べるだけ。そんな「お客さん体験」からは、学びは生まれない。

小学校受験で注目される「行動観察」は、プロジェクトマネジメント

近年、小学校受験で重要視されているのが、物事の取り組み方や他者との関わりを評価する「行動観察」と呼ばれる課題だ。

例えば、
・紙だけでタワーを作る
・ボール運びリレーを行う
・新聞紙で新しい遊びを考える
・グループで工作をしたり絵を描いたりする

など。
与えられた課題の中で、子どもがどのような行動をとるのか、を評価する。

行動観察で問われているのは、単に「指示通りに動けるか」ではない。むしろ、「全体の目的を理解し、自分が今何をすべきかを考え、周囲と協力しながら行動を変えていけるか」だ。これは、プロジェクトマネジメントに求められる力である。つまり、5歳児にしてPDCAを回す“プロジェクトマネジメント力”が見られているのである。

正解のない自然体験は、子どもが試行錯誤をしたり、気持ちを切り替えたり、粘り強く物事に取り組んだりする機会を与えてくれる。親の意識次第で、子どもの生きる力が培われるまたとない経験となる。

これからのキャンプ、意識を変えて取り組んでみよう!

例えば、火起こし。子どもはすぐに火がつくと思っているが、最初からうまくいくことはまずない。火がなかなかつかない状況で、細い枝から太い枝に順に組んでみたり、火が付きやすい枯れ葉をいれてみたり、いろいろな工夫があるはずだ。やっと着いたと思ったら、また火が消えるかもしれない。種火を逃さないためにやさしく空気を送るなども大事だ。

火が燃えるためには酸素が必要。扇いだり、息を吹きかけたりする工夫が生まれる。

ここで親がすぐにやり方を示すのではなく、「どうすれば火がつくと思う?」と問いを投げかけてみてほしい。考え、試し、失敗し、また考える。それこそが“学び”の正体であり、社会人になってからも必要なPDCAを回す思考が始まる。

虫取りは、小さなマーケティング戦略

虫取りもまた、単なる遊びに見えて、実は高度な戦略性を含んでいる。「いつ行くか」「どこで探すか」「どんな種類の虫か」「好きな食べ物は何か」「どこに網を構えるか」。これらを事前に考え、観察し、試すプロセスは、まるで小さなデータマーケティングだ。

例えばセミなら羽化の時間帯や場所、カブトムシなら樹液の出る木や夜間の行動パターンを把握する必要がある。観察から得た情報を蓄積し、条件を整理し、次の行動に反映する。このサイクルは、ビジネスにおける市場分析や戦略立案と全く同じ構造だ。

親が全て調べてお膳立てをしていないだろうか?子どもが興味を持ったことに対して、一緒に問いを立て、調べ、実践し、次に活かす。この経験こそが、社会に出たときに、数字やデータを読み解き、戦略を立てる能力として活きてくるのだ。

父親の問いが、子どもの思考力を育てる

もちろん学ばせようとして、“つまらない時間”になってしまっては本末転倒だ。

ただ、
「どうすれば運びやすいと思う?」
「困っている子がいたら、どう声をかける?」
「さっきの火、どうして消えたんだろうね?」

こうした問いが、思考のエンジンをかけることをぜひ知ってほしい。試験のための知識ではなく、生きるための知恵を育てるきっかけになる。


普段から家事や育児の多くを母親が担い、日々の宿題や学習も“お任せ”という家庭は少なくないだろう。しかし、キャンプや自然体験などまとまった時間をとれる活動の場面で、父親が本気で子どもに向きあい、共に学ぶ姿は、子どもにとってはもちろん家族にとって成長の記憶になる。そして、母親にとっても、父親の“本気の関わり”は大きな安心感と信頼につながるだろう。

次の週末、公園で、キャンプ場で、子どもがうまくいかないことにぶつかっていたらチャンスだ。「どうやる?一緒に考えよう」と言ってほしい。

遊びと学びを組み合わせた時間は、家族にとってかけがえない時間になるはずだ。

PROFILE

株式会社コノユメ 代表取締役

大原 英子氏


東京大学卒業後、大手通信会社勤務。その後、自身の母親が30年続けている受験絵画教室のメソッドを活かし、2011年小学校受験専門幼児教室設立。
その後、2022年5月に株式会社コノユメを設立し、家庭学習をサポートするオンラインSCHOOLを開校。慶應義塾幼稚舎、慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部、雙葉小学校、白百合学園小学校、東京農業大学稲花小学校、など難関校へ多数の合格者を輩出している。

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