内臓脂肪が蓄積する原因・リスクと、すぐできる4つの対策|日本肥満学会名誉会員監修
2025/03/04

さまざまな健康リスクがある肥満や内蔵脂肪の蓄積。内臓脂肪が蓄積する大きな原因は? 内蔵脂肪の蓄積を放っておくとどうなる? どう対策したらいい? 日本肥満学会名誉会員の医師監修のもと、詳しく解説する。
1. 世界肥満デーを機に見直したい、パパ・ママの肥満のリスク
2. 内臓脂肪が蓄積する原因は?
3. 内臓脂肪をためる生活を続けるリスク
4. 内臓脂肪をためないポイント
5. ドラッグストアでも買える医薬品やサプリメントを利用する手も
世界肥満デーを機に見直したい
パパ・ママの肥満のリスク
3月4日は世界肥満デーだ。飽食の時代にあるいま、世界的に“肥満”や“過体重”は増加傾向にあるという。20~30代で過多な内臓脂肪を放置しておくと、40代以降に身体のあちこちに不具合が生じてきたり、メタボリックシンドローム※になる恐れがあり、子が育つまで健康に働けないリスクにもなりうる。
※メタボリックシンドローム:動脈硬化や心筋梗塞を起こしやすい病態。内臓脂肪蓄積と高血圧、高血糖、脂質異常の複数の代謝異常の集積が原因とされる。
内臓脂肪をためたままでいるとどうなるのか? そのリスクと内臓脂肪をためない方法について、日本肥満学会名誉会員で医師の宮崎滋先生監修のもと紹介する。また、ドラッグストアで手に入る医薬品やサプリメントもピックアップ。
内臓脂肪が蓄積する原因は?
まず、内蔵脂肪がたまってしまう原因は何だろうか? 昨今、糖質が多いことで、米やパン、麺類といった炭水化物が避けられがちだが、実はこの70年間で約5倍になるなど大きく増加している「動物性脂肪の摂取」が、日本人の内臓脂肪の蓄積につながっているようだ。
動物性脂肪の多い食品には、脂身の多い肉を使った料理、ベーコンやソーセージなどの加工肉、バターやチーズなどを使ったスイーツなどが挙げられる。
また、20~30代男性の内臓脂肪型肥満の増加傾向は、リモートワークやIT化による運動不足も原因と考えられている。
内臓脂肪をためる生活を続けるリスク
内臓脂肪が大量に蓄積されると、体内で複数の代謝阻害因子が分泌されることで、代謝がどんどん低下してしまうという。
さらに、血圧・血糖を下げるアディポネクチンや食欲を抑制するレプチンが減少してしまい、より高血圧、高血糖の状態になるリスクが高まる。こうして、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、その先に生じる心筋梗塞や脳梗塞、がん、認知症などのリスクにつながるのだ。
そしてそれらの病気が進行する最中にも、体調不良があちこちに生じて集中力や仕事のパフォーマンスが低下し、ビジネスにおける生産性が落ちてしまうこともあるという。
内臓脂肪をためないポイント
では、内臓脂肪を蓄積しないためにはどうすればいいのか? 好きな食べ物を完全に辞めるのは現実的ではない。宮崎先生は次のポイントを押さえることを勧める。
内臓脂肪をためないポイント①
摂取カロリーが消費エネルギーを上回らないようにする
基本は同じカロリーの中でも腹持ちがいいもの、同じ体積でもカロリーが低いものなどを選択するよう心掛け、摂取カロリーが消費エネルギーを上回らないようにする。
無理なく続けられるものからスタートし、慣れてきたらコントロール強度を上げていこう。できなかったときに必要以上に落ち込まないことも大切。「食べる」という人間の本能に過大な負荷をかけ続けるのはストレスとなるため、食べたいものを食べたいだけ食べるときがあってもOKだ。
内臓脂肪をためないポイント②
筋トレで基礎代謝UP
筋力トレーニングなどで筋肉量を増やし、基礎代謝を上げることが有効だ。筋肉が消費するカロリーは基礎代謝の中でも約22%と比率が高くなる。強すぎる負荷は怪我や関節障害のリスクがあるため無理は禁物だ。
内臓脂肪をためないポイント③
イライラ・不快なときの食事はNG
ストレスが大きく、イライラや不快な心理状態のときに脂肪たっぷりのラーメンをヤケ食いして、至福の気持ちになった経験はないだろうか。感情のマイナスとプラスの振れ幅が大きいと、ドーパミンが大量に分泌され、ドカ食いにつながることが研究でわかっているという。
イライラしているときや不快な気分の時に食事や間食をするのは避けよう。
内臓脂肪をためないポイント④
朝たっぷり・夜は軽めに
食べる時間にも要注意。朝はたっぷり食べ、夜は軽めに、が理想。
体内時計を司り、脂肪の合成を促す「BMAL1(ビーマルワン)」という“時計遺伝子”は、22時から深夜2時にかけてそのはたらきが最も高まる。夜に摂取したエネルギーが脂肪に変わりやすく、脂肪細胞が脂肪をため込みやすくなるため、夜の食べすぎ、高カロリー摂取は、やはり避けたい。
ドラッグストアでも買える医薬品やサプリメントを利用する手も
最近ではドラッグストアでも内臓脂肪対策の製品を手に入れることができる。そこで、編集部では“ぽっちゃりパパ”たちの間で話題になっている製品をリサーチし、ピックアップした。
大正製薬『アライ』
昨年発売し話題を呼んだ、ドラッグストアで買える内臓脂肪減少薬。購入には「成人(18才以上)で、腹囲(へその高さ)男性85cm以上・女性90cm以上あり、生活習慣改善の取り組み(食事・運動)を行っていること等」の条件がある。
食べ物などで取り入れられた脂肪は、リパーゼという消化酵素によって分解・乳化され、小腸から吸収できる形態になるのだが、『アライ』の主成分「オルリスタット」と脂肪を一緒に摂ると、オルリスタットが膵臓から分泌される消化酵素をブロックし、脂肪の分解・吸収が抑制されるという仕組みだ。
結果として食事に含まれる脂肪の約25%が吸収されず、便として体外に排出され、きちんと継続すると体重が減少するというエビデンスが出ている。排便時に排泄された油が便器の水面に浮く! という視覚的なインパクトから、高脂肪な食生活を見直すきっかけにもなるそうだ。
このオルリスタットを服用すると、人によっては「油漏れ」が生じると噂になっているが、油を吸着する作用のあるキトサンをあわせて食事と摂取すると、油便になりづらくなるという。キトサンを含むサプリメントなどの飲み合わせを薬剤師に相談してみるのも良さそうだ。
ファンケル『プレミアムカロリミット』
食事の糖と脂肪の吸収を抑える機能性表示食品。食事の糖の吸収と食後の血糖値の上昇を抑える桑の葉イミノシュガー・キトサン・茶花サポニンを含む。脂肪の代謝を助け消費しやすくするエビデンスのあるブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン、腹部の脂肪を減らす機能が報告されているローズヒップ由来ティリロサイドも配合。1日1回の服用でOKなので、毎日手軽に続けられる。
日本コカ・コーラ『からだすこやか茶W+』
「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」「内臓脂肪を減らすのを助ける」の3つの機能が追加されたトリプルトクホの無糖茶製品。食事に含まれる脂肪と糖にはたらき、さらに内臓脂肪にもはたらく植物由来の難消化性デキストリンを配合した特定保健用食品。
油ものや甘いものがやめられないパパ・ママの食事のお供におすすめだ。
仕事や育児に忙しい毎日、美味しいものでストレスを発散するというパパ・ママも多いことだろう。しかし、少しでも意識を変えることで、健康寿命を延ばすことができるかもしれない。いつまでも元気で頼れるパパ・ママでいるためにも、今一度、内臓脂肪と向き合ってみてはいかがだろうか。
PROFILE
宮崎 滋先生
日本肥満学会 名誉会員、結核予防会 総合健診推進センター所長。日本内科学会認定医・指導医、 日本糖尿病学会指導医・専門医、日本肥満学会指導医・専門医。1971 年 東京科学大学(旧 東京 医科歯科大学)卒業、第一内科勤務。都立墨東病院科、東京逓信病院、内科部長、副院長を歴任。東京医科歯科大学で臨床教授を務め、後進の教育にも注力。専門は糖尿病、肥満症、内分泌学 で、食事療法や運動療法などを軸にした治療法を展開。
文/FQ JAPAN編集部