育休が人材採用に影響を及ぼす?新育休制度で進化するボルボ・カーズのいま
2022/11/17
2022年10月に男性の育休制度がスタートする日本。しかし、世界に目を向ければ、日本はかなり遅れを取っていることが分かる。この差を埋めるためにはどうしたらよいのか。一歩先をいくボルボ・カーズの新育休制度を見ていこう。
メイン画像:ボルボXC40の電気自動車モデル「XC40 Recharge」。最先端の自動車製造においてもソフトウェアの果たす役割は大きくなってきており、若手のソフトウェアの専門家を確保するためにも、育休制度の充実は欠かせない。
ボルボ・カーズが新育休制度
「ファミリー・ボンド」を導入
ボルボ・カーズでは、2021年4月より、全世界のすべての工場およびオフィスで働く4万人以上の従業員を対象に、新しい育休制度(ファミリー・ボンド)を導入しました。この制度はどのようなものでしょうか?
末田さん(以下、敬称略)「勤続1年以上の正社員に、合計24週間の育児休暇が与えられます。育児休暇取得中は基本給の80%を上限額を設けずに保障され、育休は子供が生まれてから3年間、6回まで分割して取得することも可能です。また、養子縁組や里親、代理出産を含む法的に登録されたすべての親、および同性カップルも対象になります。日本では、日本の育児休業法を利用したうえで、本制度も併用して利用することができます」。
従業員の反応はいかがでしょうか?
末田「日本では、導入後約1年が経った今、男性1名、女性1名の合計2名が休暇を取得しています。日本では社員の平均年齢が高いため、結果的に取得率が低いですが、社員の反応はとても良く、最近では共働きの家庭も多いので、男性が長期に渡って育児休業を取得できる本制度は画期的だという意見が多かったです。会社全体で、育休取得に対して理解が得られることで、社員が気兼ねなく取得できるようになると思っています」。
導入前には、新制度についての社内の理解を深めるためにオンラインで何度か説明会を行ったと聞きましたが、どのような質問がありましたか?
赤堀さん(以下、敬省略)「やはり、育休取得後に自分の居場所はあるのか、それまでのキャリアが無駄になるのではないかということでした。そこでボルボでは、明確に『育休取得前のポジションを保証する。もしそのポジションが無くなった場合は、同等のポジションを用意する』ということを約束しています」。
それは育休に対するハードルがかなり下がるように感じます。
末田「男性が育休を取りやすくすることで、女性のキャリアが開ける。多くの女性が社会で活躍の場を得られることで、企業もより優秀な人材を確保できると考えています。この新制度では、里親や同性カップルといった幅広い親が対象なので、多様性に富んだ魅力的な働き手の方々に来ていただけるのではないかと思います。
応募者の面接でも、以前は給与や役職についての質問が多かったですが、最近は、残業時間やテレワークの有無といった働き方や、育休制度などの福利厚生について聞かれることが増えました。世の中の男性の興味が家族や育児に向いていると気づいたと同時に、働く方々が企業側に求めるものが変わってきていると感じました。企業側もマインドを変えないと、優秀な人材はどんどん離れていく。ある種の危機感のようなものを覚えましたね」。
日本人男性の2021年の育休取得率は13.97%。かたや、ボルボ・カーズが本社を構えるスウェーデンの育休取得率は、2004年の時点で88.3%を超えています。この違いを埋めるためには何が必要とお考えですか?
赤堀「文化の違いが大きいとはいえ、この差を埋めるには、企業が率先して取り組むことの重要性を感じています。“自動車メーカーは良いクルマだけつくっていればいい”という時代ではないのかな、と思います。弊社の取り組みが、男性育休取得の機運を高める一助になればいいですね」。
【まとめ】
●働きやすい環境整備が優秀な人材確保につながる
PROFILE
ボルボ・カーズ 人事総務部
末田涼子さん
ボルボ・カーズ 広報
赤堀淳さん
FQ JAPAN VOL.64(2022年秋号)より転載